【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
3 / 122

03.娘なんて産んでないわ

しおりを挟む
 乳母は雇わない予定だった。だって、母乳で育てられると思ったから。貴族夫人は胸の形が崩れるのを気にして、母乳を与えないことが多い。私は体型より我が子を慈しむ方を取った。

「奥様、お願いです」

 促されても、この子に乳を与える気になれない。泣き続けるこの赤子に罪がないのは、理解できるの。でも……この子は私がお腹を痛めた子じゃないわ。違う。乳が張って痛いけれど、この母乳を飲むのは名前も付いていない我が子なの。

 泣きながら首を横に振った。

「嫌よ、この子じゃない。私の息子を返して」

 泣き続ける女児には、乳母が用意されることになった。それまでの短い期間であっても、私は我慢できない。女児が泣くたびに、我が子も泣いている気がして。ふらふらと立ち上がって探していまう。

「返して……息子を返して」

 泣きながらベッドに戻され、またふらりと廊下に出た。身体中の水分が流れ出るのではないかと思うほど、涙が出る。体調が戻っていないのに危険だと、執事アーロンは私に監視を付けた。室内で見守る侍女と、入り口で警護する騎士。どちらも交代制でずっと張り付いた。

「カリナ、私の息子は?」

「申し訳ございません、奥様。私は知らないのです」

 屋敷にいないことは察した。寝ても覚めても、我が子の泣き声が聞こえる。私はおかしくなったのでしょうね。くすくすと笑い、涙を流した。

 ろくに食事も取らず、ひたすら泣き続けた私はベッドから起き上がることも出来なくなっていた。最後に息子を見てから、もう2日目。生まれて4日目のあの子はどこにいるの? ぼんやりと天蓋を見つめ、入室した執事の声に耳を傾ける。

「失礼致します、奥様……先代様と大奥様がお見えです」

 お義父様とお義母様が? あのお二人ならきっと、息子を取り戻してくださる。私が産んだ、侯爵家の正当な跡取りだもの。期待に胸を高鳴らせ、カリナにお願いした。大量のクッションを後ろに入れて、ようやく身を起こす。

「あらあら。体調が優れないと聞いたわ。無理をしないで横になっていいのよ、ティーナ」

 愛称で呼ぶほど親しいお義母様の声に、涙が滲んだ。重い体を動かして、必死に縋る。

「私の、息子を……」

「ティーナは混乱しているようだ。生まれたのは娘だよ。よく頑張ったね」

「……え?」

 目を見開いてお二人を交互に見つめる。この顔は、知っているのね? ベルナルドから何を言われたの。王家との縁がどうのって、お義父様やお義母様も……それを望んでいる。そのために、生まれた未来の侯爵を犠牲にしてもいい、と。

「私が産んだのは息子ですっ! 娘なんて産んでないわ」

 ヒステリックな叫び声になった。悲鳴のように一気に言い切って、咳き込む。そんな私を痛わしそうに見つめる義父、手を伸ばして背中を摩る義母。なのに、突きつけられた現実は残酷だった。

「勘違いよ。この家に生まれたのは、未来の王妃になる娘です。いいですね? 息子が産まれたなどと二度と口にしてはなりません」
しおりを挟む
感想 359

あなたにおすすめの小説

【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。  そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ…… ※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。 ※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。 ※この作品は小説家になろうにも投稿しています。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。

ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。 事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

処理中です...