リベルニオン ー神剣解放―

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序章 ルフスの日常

Prologue:3 魔法礼装

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 棍棒を剣の刃で受け止める。しかし空中で踏ん張りを効かせることなどできずディアスは後方へと吹き飛ばされる。
 爆煙が晴れ、そこからサイクロプスが姿を現す。

 攻撃が当たった背には僅かな傷があるだけで致命傷ではない。どうやら魔法だけではなく魔力を込めた攻撃すらサイクロプスは無効化してしまうようだった。

「いッてて。なるほど、魔力自体を寄せ付けねぇってワケか……」

 草原を転がりつつ体勢を立て直す、制服についた土草を払っていると、そこに戦闘を観察していたレイルが駆け寄る。

「大丈夫!?」
「へっちゃらへっちゃら! んでレイル、何かわかったのか?」

「うん、一つ気になることがね」

 暴れまわるサイクロプスが首から掲げている黒い十字架の首飾り。レイルはそれに視線を向ける。

「あの首飾りから小さくて微弱だけれども、得体のしれない何かを感じるんだ」
「あれが仕掛けのタネってことか」

「恐らくは“”の一種かと」

 身に着けているだけで、装着者に魔法の加護を与える道具、魔法礼装。
 魔除けとして冒険者や傭兵団等が装備したりするが魔物が装備するという話はあまり聞いたことが無いディアスはにわかには信じられなかった。

「……魔力を無効化するなんてかなり貴重な魔法礼装だぞ、それをあんな魔物が?」

「俺も確信があるってワケじゃないんだけどね。
 でもそれ以外に思い当る点が無いんだ」

「オーライ、とりあえずあの首飾りを奪っちまえばいいんだな?」
「うん」

「任せとけ」

 ディアスが戦線に戻っていく。
 現在サイクロプスは棍棒を大きく振り回して隊員達を近づけさせまいとただがむしゃらに動いていた。ディアスの一撃でパニック状態になっているのだろうか。

「愉快に踊っちゃってェ……、みんなよく聞いてくれ」

 全員に聞こえる様に声を張って大声で言った次の瞬間。サイクロプスはディアスの声に反応するかのように動きを変えた。

 ディアス目掛けて突進を仕掛けてきたのだ。

「っ!?」

 一歩一歩地に足を踏み込む度に僅かに地面が振動する、ディアスは咄嗟に剣を構え回避行動を取る。
 サイクロプスは止まらず、走りながら方向転換をしディアスを着け狙う。
 歩幅の差でサイクロプスは容易にディアスに追いつくことができた。棍棒のリーチに入った所で大きく振りかぶって、思い切りディアスがいる空間に叩き付けた。

 固い音と共に砂埃が舞い、視界を奪う。

 それはサイクロプスも同様だ。

 一つ目の魔物はこの一撃でディアスを仕留めたと思い込み、ゆっくりと棍棒を引き抜こうとした。
 その時、棍棒の先を包む砂埃を突き破り何かが現れた――。

「手間が省けたわ、助かったぜ一つ目ェ!!」

 棍棒の上を走るディアスの姿。
 サイクロプスは急いで棍棒の上から彼を振り払おうとするが、既にディアスの射程圏内に入っていた。
 棍棒を強く蹴り、サイクロプスの頭部へと跳躍。黒い十字架を繋げている首飾りの紐目掛けて剣を振るった。

 ブチ――と音を立てて紐が切れ、首飾りが首から離れていく。

 するとサイクロプスを包んでいた魔法の加護の様なものが一瞬可視化され、音もなく消えていった。
 ディアスは直観で理解した。今、サイクロプスは丸腰だと。すかさず、剣を持っていない左手を上げて、隊員達にサインを送る。

「やれ!!」

 サイクロプスの肩を蹴り、その場から離脱。
 それと同時に隊員達は魔法を詠唱、目には見えない風の刃が緑色の皮膚を切り裂き赤い血渋きが草原を濡らした。

「着弾を確認、効果あり」
「畳みかけろっ!」

 魔法の加護を失ってしまえばもう、目の前にいるのはただの下級の魔物に過ぎない。
 そこからの展開は描写するまでも無く、隊員達の一方的な蹂躙。魔法の耐性を持たないサイクロプスは風魔法によって切刻まれ、地に伏した。

 生命力を失ったソレは全身を黒い粒子に姿を変えて、世界から散っていく。
 宙を漂う粒子は時間と共に消えていった。
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