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第2章 感謝とお礼
感謝とお礼(5)
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首筋がちりっと焼けつく。
私は、後ろに振り返ると少し離れたところに痩せこけた男が立ってこちらを見ていた。
見た目は三十過ぎに見えるが痩せこけてそう見れるだけで二十代くらいなのかもしれない。頬はこけ、目は窪んでいるのに服の隙間から見える筋肉はとても発達しており、通りすがりと言うに可笑しなところしかない。
男は、私のと目が合うとにっこりと微笑んで近寄ってくる。
マナの目にも怯えが走り、マダムを始め他のお客さん達も男の異様な気配に慄く。
私は、マナに座っているように言ってから男の方を向く。マダムが後ろから「エガオちゃん!」と呼ぶ声がした。
私は、男の前に立ってヘソの上で両手を組んで小さく頭を下げる。
「いらっしゃいませ」
私の声に男は、歩みを止める。
「当店をご利用でしょうか?」
私の言葉に男はにっと笑う。
不気味な笑み。こんな笑みなら浮かべたくないと思えるほど気持ち悪い。
「貴方・・・騎士ですか?」
彼の質問の意味が分からず私は眉を顰める。
「いえ、違いますが」
「鎧・・とてもお似合いですよ」
鎧が似合う・・何故だろう?今まで気にしたこともなかったがあまり嬉しくない。
「以前、王国の部隊に所属しておりましてその名残です。深い意味はございません」
「そうですか・・・」
彼は、舐めるように私の全身を見る。
「あまり強そうではないですね」
「そうですか」
「私の鎧はね、没収されてしまったんですよ。王国の奴等に、必要ないと言われて・・・」
つまり元騎士か王国の直属の兵士だったと言うことか・・。私の脳裏に昨今叫ばれてる人員削減が浮かぶ。
「突然、仕事が無くなって、妻と子にも逃げられました。お金も底を尽きました」
彼は、力なく笑う。
何故か私は、イラっとした。
「お金がないなら働いたらよろしいのでは?確かに停戦条約が結ばれて騎士や兵士の仕事は少なくなりましたがそれでも選ばなければ仕事はあります」
私のようにとは言わなかった。
私だって偶然に偶然が呼び合わなかったらここにはおらず、今も路地裏の壁に寄りかかって空を見ていただけかもしれない。
生気のなかった男の目が気味悪くギラつく。
そして唇を醜く歪ませて叫んだ。
「そんな見っともない真似が出来るかあ!」
男は、唾液を飛ばしながら叫ぶと隠し持っていた肉厚のナイフを取り出して私に向ける。
後ろから悲鳴が上がるのが聞こえる。
マダムは、口を両手で押さえ、4人組はお互いを守るように抱きあい、マナは身を震わせ、スーちゃんは赤い目で睨み、カゲロウはキッチン馬車の中で手を止める。
「俺は、誇りある王国騎士だぞ!何でそんなことをしないといけない!」
男は、狂ったように叫ぶ。
「金を寄越せ!あと飯も!逆らうなら・・!」
私は、目を半眼にする。
「誇りある騎士がこんなことして恥ずかしくないのですか?」
私は、挑発するように言う。
彼の意識を後ろでなく私に向ける為。
案の定、彼は私に怒りの目を向ける。
「うるさい!お前なんかに何が分かる!」
確かに分からない。私は騎士ではないし、誇りを持って戦っていたわけでもない。
しかし・・・。
「その程度で崩れる誇りなら塵と変わらない」
私は、冷徹に言い放つ。
「本当に誇りを持って生きてる人たちに失礼です」
私の言葉にマナの目が小さく震える。
カゲロウが小さく笑った気がした。
彼は、顔を赤黒く紅潮させ、声にならない声を上げ、ナイフを構える。
確かに元騎士らしく構えはちゃんとしている。
私は、大鉈の柄に手を伸ばして・・止めた。
カゲロウとマダムの怒った顔が頭に浮かんだ。
私が手を引っ込めたのを見て彼は嘲笑を浮かべる。
私が臆したのだと勘違いしたらしい。
彼は、ナイフの切先を私に向けて突進してくる。
鍛えられた動きだ。無駄がない。
でも、私にとってはあまりに無駄だ。
ナイフの切先が私の胴を捉えて突き出される。狙いは鎧の隙間。
私は、目を細めてナイフの切先を睨む。
そして次の瞬間、その切先に向けて私の蹴りが放たれる。金属音が鳴り響き、男の手から離れたナイフが宙に舞う。男は何が起きたか分からない。私は足を振り上げたまま爪先を男に向け、再び蹴りを放つ。
私の足は、ブレる事なく男の顔面を取られ、何かが潰れ、砕ける音が足に伝わる。
男は、そのまま膝から崩れ落ちて倒れる。
宙に舞い上がったナイフが落ちてくる。私はそのナイフに手を伸ばして取り、足を下ろす。
私は、後ろに振り返ると客達に向かって頭を下げる。
「お騒がせして申し訳ありませんでした」
客達がざわつき出す。
怖かったのかと思ったがざわつき方が少し違う気がする。
マナを見ると顔が何故か赤面している。
四人組も全員が顔を赤く染めて「大胆・・」「すごい・・」「セクシー」「マジヤバ」と呟いている。
スーちゃんは、呆れたように目を反らす。
カゲロウも困ったように顔を背けている。
んっ?なに?どう言うこと?
訳が分からずにいると大地が震えるような怒りの声が飛んでくる。
「エ~ガ~オ~ちゃん!」
マダムが拳を震わせて私に近寄ってくる。
また、"危ないことして"と怒られるのだと思い、覚悟した。
しかし、マダムが怒っていたのは全くの別の理由だった。
「女の子がスカートを履いて足を振り上げるんじゃありません!」
えっ?
私は、自分の足元を見る。
そこに見えるは薄桃色の可愛いスカート。
当然、足を振り上げて蹴りを放てば・・・。
私の頭は羞恥にぼんっと音を立てた弾けた。
私は、後ろに振り返ると少し離れたところに痩せこけた男が立ってこちらを見ていた。
見た目は三十過ぎに見えるが痩せこけてそう見れるだけで二十代くらいなのかもしれない。頬はこけ、目は窪んでいるのに服の隙間から見える筋肉はとても発達しており、通りすがりと言うに可笑しなところしかない。
男は、私のと目が合うとにっこりと微笑んで近寄ってくる。
マナの目にも怯えが走り、マダムを始め他のお客さん達も男の異様な気配に慄く。
私は、マナに座っているように言ってから男の方を向く。マダムが後ろから「エガオちゃん!」と呼ぶ声がした。
私は、男の前に立ってヘソの上で両手を組んで小さく頭を下げる。
「いらっしゃいませ」
私の声に男は、歩みを止める。
「当店をご利用でしょうか?」
私の言葉に男はにっと笑う。
不気味な笑み。こんな笑みなら浮かべたくないと思えるほど気持ち悪い。
「貴方・・・騎士ですか?」
彼の質問の意味が分からず私は眉を顰める。
「いえ、違いますが」
「鎧・・とてもお似合いですよ」
鎧が似合う・・何故だろう?今まで気にしたこともなかったがあまり嬉しくない。
「以前、王国の部隊に所属しておりましてその名残です。深い意味はございません」
「そうですか・・・」
彼は、舐めるように私の全身を見る。
「あまり強そうではないですね」
「そうですか」
「私の鎧はね、没収されてしまったんですよ。王国の奴等に、必要ないと言われて・・・」
つまり元騎士か王国の直属の兵士だったと言うことか・・。私の脳裏に昨今叫ばれてる人員削減が浮かぶ。
「突然、仕事が無くなって、妻と子にも逃げられました。お金も底を尽きました」
彼は、力なく笑う。
何故か私は、イラっとした。
「お金がないなら働いたらよろしいのでは?確かに停戦条約が結ばれて騎士や兵士の仕事は少なくなりましたがそれでも選ばなければ仕事はあります」
私のようにとは言わなかった。
私だって偶然に偶然が呼び合わなかったらここにはおらず、今も路地裏の壁に寄りかかって空を見ていただけかもしれない。
生気のなかった男の目が気味悪くギラつく。
そして唇を醜く歪ませて叫んだ。
「そんな見っともない真似が出来るかあ!」
男は、唾液を飛ばしながら叫ぶと隠し持っていた肉厚のナイフを取り出して私に向ける。
後ろから悲鳴が上がるのが聞こえる。
マダムは、口を両手で押さえ、4人組はお互いを守るように抱きあい、マナは身を震わせ、スーちゃんは赤い目で睨み、カゲロウはキッチン馬車の中で手を止める。
「俺は、誇りある王国騎士だぞ!何でそんなことをしないといけない!」
男は、狂ったように叫ぶ。
「金を寄越せ!あと飯も!逆らうなら・・!」
私は、目を半眼にする。
「誇りある騎士がこんなことして恥ずかしくないのですか?」
私は、挑発するように言う。
彼の意識を後ろでなく私に向ける為。
案の定、彼は私に怒りの目を向ける。
「うるさい!お前なんかに何が分かる!」
確かに分からない。私は騎士ではないし、誇りを持って戦っていたわけでもない。
しかし・・・。
「その程度で崩れる誇りなら塵と変わらない」
私は、冷徹に言い放つ。
「本当に誇りを持って生きてる人たちに失礼です」
私の言葉にマナの目が小さく震える。
カゲロウが小さく笑った気がした。
彼は、顔を赤黒く紅潮させ、声にならない声を上げ、ナイフを構える。
確かに元騎士らしく構えはちゃんとしている。
私は、大鉈の柄に手を伸ばして・・止めた。
カゲロウとマダムの怒った顔が頭に浮かんだ。
私が手を引っ込めたのを見て彼は嘲笑を浮かべる。
私が臆したのだと勘違いしたらしい。
彼は、ナイフの切先を私に向けて突進してくる。
鍛えられた動きだ。無駄がない。
でも、私にとってはあまりに無駄だ。
ナイフの切先が私の胴を捉えて突き出される。狙いは鎧の隙間。
私は、目を細めてナイフの切先を睨む。
そして次の瞬間、その切先に向けて私の蹴りが放たれる。金属音が鳴り響き、男の手から離れたナイフが宙に舞う。男は何が起きたか分からない。私は足を振り上げたまま爪先を男に向け、再び蹴りを放つ。
私の足は、ブレる事なく男の顔面を取られ、何かが潰れ、砕ける音が足に伝わる。
男は、そのまま膝から崩れ落ちて倒れる。
宙に舞い上がったナイフが落ちてくる。私はそのナイフに手を伸ばして取り、足を下ろす。
私は、後ろに振り返ると客達に向かって頭を下げる。
「お騒がせして申し訳ありませんでした」
客達がざわつき出す。
怖かったのかと思ったがざわつき方が少し違う気がする。
マナを見ると顔が何故か赤面している。
四人組も全員が顔を赤く染めて「大胆・・」「すごい・・」「セクシー」「マジヤバ」と呟いている。
スーちゃんは、呆れたように目を反らす。
カゲロウも困ったように顔を背けている。
んっ?なに?どう言うこと?
訳が分からずにいると大地が震えるような怒りの声が飛んでくる。
「エ~ガ~オ~ちゃん!」
マダムが拳を震わせて私に近寄ってくる。
また、"危ないことして"と怒られるのだと思い、覚悟した。
しかし、マダムが怒っていたのは全くの別の理由だった。
「女の子がスカートを履いて足を振り上げるんじゃありません!」
えっ?
私は、自分の足元を見る。
そこに見えるは薄桃色の可愛いスカート。
当然、足を振り上げて蹴りを放てば・・・。
私の頭は羞恥にぼんっと音を立てた弾けた。
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