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「彼を一目見た瞬間、私は全身から恋をしてしまったの」
一糸纏わぬ姿でアイは語る。
宗介は、目を反らすことなく、いや、反らすことが出来ずにアイを見る。
「それは高校3年生の時だった。受験勉強の息抜きに私は友達数人と今みたいにカラオケに行ったの。その時に友達の1人が友達も呼んでいい?と聞かれていいよ、と答えた。そして現れたのが彼だった」
アイの身体が小刻みに震える。しかし、それは服を着ていない寒さからではないことは明らかだった。
「友達と聞いたから女の子だとばかり思っていたからみんな驚いたわ。しかも中々にカッコいい子だったから皆、見惚れていた。私もその1人だった。唯一、みんなと違うのは彼を見た瞬間に一目惚れしてしまったの」
彼は、話しやすく、直ぐに周りと溶け込んだ。歌を歌い、飲み物を飲んで、楽しそうに話した。アイは、緊張して彼をまともに見ることができず、歌うのも忘れて俯いていたと言う。
それが逆に彼の注目を得てしまった。
翌日、彼はアイが授業を終えて寮に帰ろうとすると彼と偶然に出会ってしまったと言う。その話しを聞いた宗介は偶然ではなく、絶対にその男はアイが出てくるのを見張っていたのだと思ったが口には出さなかった。
彼は、アイを見てにこやかに話しかけながら近づいてきた。彼の話しによると前々からアイの事を知っていて、アイに近づきたくて友達にお願いしてカラオケに参加したのだと言う。
それが本当かどうかは知らない。本当はその女友達を狙っていたのかもしれないし、他の女の子を狙っていたのかれない。しかし、どちらにしてもその彼がアイを落としやすいと思い、狙いを定めたのは間違いないだろうと宗介は思ったが恋をした清らかな乙女はそうは思わず、そんなに自分の事を想ってくれているなんてと、ときめいてしまったらしい。
そして2人は会話の中でとんとん拍子で次の週末にデートをする約束をした。約束をしたと言うよりも一方的に彼に決められてしまった。
彼とのデートは、楽しかったと言う。
その当時の流行りの恋愛映画を見た後にファーストフードを昼食に食べた。それで終わりだと思ったが彼が連れていきたいところがあるからとさらに電車に乗って少し離れたところにある海浜公園に行って海を眺めた。
彼と缶ジュースを飲みながら広い海を眺めながらちょっと昔の自分を思い出しながら、まさか自分が男の子とデートするだなんて思わなかったな、と幸せを噛み締めていた。
夕暮れに近づき、アイはそろそろ帰らないと言った。流石に寮の門限を守らない訳にはいかない。そう言って立ちあがろうとするアイの手を彼は握りしめた。アイは驚く。そして次の瞬間、彼の顔がアイに近づき、その唇に自分の唇を重ねたのだ。
アイは、何が起きたのか分からず、思考が停止する。
「好きだ」
彼は、アイにそう告げるとさらにキスを重ね、さらには舌を入れ込んできた。その会話だけでその彼が手慣れていることが分かるが純情なアイにそんなことがわかる訳がない。アイは、初めての官能に蕩けそうになる。
しかし、そこまでだった。
彼は、周囲に誰もいない事を視線を動かしながら確認すると、アイの胸の中に手を入れた。恐らく胸を愛撫してアイの気持ちを高めてそのままどこかに連れ込み、性交を持っていこうと思ったのだろう。だが、アイの胸には彼が求めるものが存在しなかった。
彼の顔に動揺が走る。そして思わずアイを突き飛ばす。
突然、彼に突き飛ばされてもアイは驚く。そして肌けた胸元を見て「あっ」と思わず呟いてしまった。その時までアイも忘れていたのだ。喜びと楽しさのあまり。自分が普通の女の子でなかったことに。
彼は、汚物でも見るような目でアイを見る。
「騙したな・・・」
彼は、歯を噛み締め、憎悪と嫌悪の声を絞り出す。
「この変態野郎・・・!」
宗介に説明する為とはいえ、その言葉を口に出したアイの目から涙が溢れる。
宗介は、自分がその場にいたら確実にその彼を殴り殺していただろうと思った。
彼は、怒りと侮蔑の目をアイにぶつけたまま去っていったと言う。
アイは、心の痛みと絶望に打ちひしがれ、どうやって帰ったのかも覚えていなかった。
翌日、彼に会うかもしれないと恐怖しながらも休む訳にいかないので重い足取りで学校に行くと、彼の友達である女友達がアイの前にやってきて「ボコッといたからね」と言った。それに賛同するように一緒にカラオケに行った友達もやってきて頷く。
彼女たちの話しによるとアイを置いて帰った後に、彼が女友達に文句を言ってきたらしい。しかし、女友達からすればアイを紹介したつもりなんかないし、話しを聞いていくうちにアイに対する行為に怒りを通り越したものを覚えたらしく、彼に謝りたいと嘘を言って呼び出し、友人達に事情を説明し、彼をボコボコにしたらしい。
そのボコボコがどのような方法であったのかは知らない。しかし、彼がアイの前に2度と姿を見せなくなったのを見るとよっぽど恐ろしい目に合わされたのだろう。
「アイが気にする必要なんてないんだからね!」
女友達は、そう言ってアイを励ました。
この高校は、優秀なだけでなく様々な訳ありを持った生徒の通う場だ。彼だって事情は知らないが何かしらの訳があって通っているはずだ。それなのにアイを馬鹿にしたような態度をとった事を彼女達は許せなかった。
アイは、これから授業が始まると言うのに大声で泣いてしまった。そんなアイを友達たちは慰めた。その後、嘱託医でもある精神科医がどこで噂を聞いたのか心配そうに話しを聞きに来たが友達たちに慰められたアイは「大丈夫です」と笑顔て答えることが出来た。
しかし、それでもアイは誰にも言わずに心の中で誓った。
もう恋なんてしない、と。
それなのに、そう誓ったはずなのに。
彼女は、また恋をしてしまったのだ。
「貴方のことが・・・好きになってしまったの」
一糸纏わぬ姿でアイは語る。
宗介は、目を反らすことなく、いや、反らすことが出来ずにアイを見る。
「それは高校3年生の時だった。受験勉強の息抜きに私は友達数人と今みたいにカラオケに行ったの。その時に友達の1人が友達も呼んでいい?と聞かれていいよ、と答えた。そして現れたのが彼だった」
アイの身体が小刻みに震える。しかし、それは服を着ていない寒さからではないことは明らかだった。
「友達と聞いたから女の子だとばかり思っていたからみんな驚いたわ。しかも中々にカッコいい子だったから皆、見惚れていた。私もその1人だった。唯一、みんなと違うのは彼を見た瞬間に一目惚れしてしまったの」
彼は、話しやすく、直ぐに周りと溶け込んだ。歌を歌い、飲み物を飲んで、楽しそうに話した。アイは、緊張して彼をまともに見ることができず、歌うのも忘れて俯いていたと言う。
それが逆に彼の注目を得てしまった。
翌日、彼はアイが授業を終えて寮に帰ろうとすると彼と偶然に出会ってしまったと言う。その話しを聞いた宗介は偶然ではなく、絶対にその男はアイが出てくるのを見張っていたのだと思ったが口には出さなかった。
彼は、アイを見てにこやかに話しかけながら近づいてきた。彼の話しによると前々からアイの事を知っていて、アイに近づきたくて友達にお願いしてカラオケに参加したのだと言う。
それが本当かどうかは知らない。本当はその女友達を狙っていたのかもしれないし、他の女の子を狙っていたのかれない。しかし、どちらにしてもその彼がアイを落としやすいと思い、狙いを定めたのは間違いないだろうと宗介は思ったが恋をした清らかな乙女はそうは思わず、そんなに自分の事を想ってくれているなんてと、ときめいてしまったらしい。
そして2人は会話の中でとんとん拍子で次の週末にデートをする約束をした。約束をしたと言うよりも一方的に彼に決められてしまった。
彼とのデートは、楽しかったと言う。
その当時の流行りの恋愛映画を見た後にファーストフードを昼食に食べた。それで終わりだと思ったが彼が連れていきたいところがあるからとさらに電車に乗って少し離れたところにある海浜公園に行って海を眺めた。
彼と缶ジュースを飲みながら広い海を眺めながらちょっと昔の自分を思い出しながら、まさか自分が男の子とデートするだなんて思わなかったな、と幸せを噛み締めていた。
夕暮れに近づき、アイはそろそろ帰らないと言った。流石に寮の門限を守らない訳にはいかない。そう言って立ちあがろうとするアイの手を彼は握りしめた。アイは驚く。そして次の瞬間、彼の顔がアイに近づき、その唇に自分の唇を重ねたのだ。
アイは、何が起きたのか分からず、思考が停止する。
「好きだ」
彼は、アイにそう告げるとさらにキスを重ね、さらには舌を入れ込んできた。その会話だけでその彼が手慣れていることが分かるが純情なアイにそんなことがわかる訳がない。アイは、初めての官能に蕩けそうになる。
しかし、そこまでだった。
彼は、周囲に誰もいない事を視線を動かしながら確認すると、アイの胸の中に手を入れた。恐らく胸を愛撫してアイの気持ちを高めてそのままどこかに連れ込み、性交を持っていこうと思ったのだろう。だが、アイの胸には彼が求めるものが存在しなかった。
彼の顔に動揺が走る。そして思わずアイを突き飛ばす。
突然、彼に突き飛ばされてもアイは驚く。そして肌けた胸元を見て「あっ」と思わず呟いてしまった。その時までアイも忘れていたのだ。喜びと楽しさのあまり。自分が普通の女の子でなかったことに。
彼は、汚物でも見るような目でアイを見る。
「騙したな・・・」
彼は、歯を噛み締め、憎悪と嫌悪の声を絞り出す。
「この変態野郎・・・!」
宗介に説明する為とはいえ、その言葉を口に出したアイの目から涙が溢れる。
宗介は、自分がその場にいたら確実にその彼を殴り殺していただろうと思った。
彼は、怒りと侮蔑の目をアイにぶつけたまま去っていったと言う。
アイは、心の痛みと絶望に打ちひしがれ、どうやって帰ったのかも覚えていなかった。
翌日、彼に会うかもしれないと恐怖しながらも休む訳にいかないので重い足取りで学校に行くと、彼の友達である女友達がアイの前にやってきて「ボコッといたからね」と言った。それに賛同するように一緒にカラオケに行った友達もやってきて頷く。
彼女たちの話しによるとアイを置いて帰った後に、彼が女友達に文句を言ってきたらしい。しかし、女友達からすればアイを紹介したつもりなんかないし、話しを聞いていくうちにアイに対する行為に怒りを通り越したものを覚えたらしく、彼に謝りたいと嘘を言って呼び出し、友人達に事情を説明し、彼をボコボコにしたらしい。
そのボコボコがどのような方法であったのかは知らない。しかし、彼がアイの前に2度と姿を見せなくなったのを見るとよっぽど恐ろしい目に合わされたのだろう。
「アイが気にする必要なんてないんだからね!」
女友達は、そう言ってアイを励ました。
この高校は、優秀なだけでなく様々な訳ありを持った生徒の通う場だ。彼だって事情は知らないが何かしらの訳があって通っているはずだ。それなのにアイを馬鹿にしたような態度をとった事を彼女達は許せなかった。
アイは、これから授業が始まると言うのに大声で泣いてしまった。そんなアイを友達たちは慰めた。その後、嘱託医でもある精神科医がどこで噂を聞いたのか心配そうに話しを聞きに来たが友達たちに慰められたアイは「大丈夫です」と笑顔て答えることが出来た。
しかし、それでもアイは誰にも言わずに心の中で誓った。
もう恋なんてしない、と。
それなのに、そう誓ったはずなのに。
彼女は、また恋をしてしまったのだ。
「貴方のことが・・・好きになってしまったの」
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