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次の日の授業は全く身が入らなかった。
教科書を読んでも、ノートを取っても、問題を解いても気がつけばアイのことだけを考えていた。
アイが明日からいない、そう考えるだけで胸が抉れそうだった。
(俺は、本当にどうしてしまったんだろう?)
自問自答しても答えなんてでやしない。
宗介は、書店に並んだ小説をパラパラと捲るように1日の時間を費やした。気がついたら放課後になり、気がついたらその足が2年生の教室へと向かって歩きだしていた。
宗介は、アイが実習に入っている教室の扉の前に立った。教室にはまだ幾人かの生徒たちが机を囲んで話していたがアイの姿はそこにはなかった。
もう職員室に戻ったのだろうか?
宗介は、教室を離れて職員室に向かおうとして・・・足を止める。
思わず笑いが込み上げてくる。
俺は、本当に何をしているのだろう?
学校の帰り道にたまたま野良猫に餌を上げるだけの関係の、それこそ学校に実習に来ている間だけの刹那の関係に一体何を執着しているのか?
彼女が可愛いから?
頭が良くて話しやすいから?
自分のものにしたいから?
どれも下賤すぎて自分らしくない。
(ただの性欲だ)
俺は、きっと今までの女達のように彼女の心を自分の虜にして征服したいだけなのだ。
なんて下らない。
なんて浅ましい。
なんて嫌らしい。
そんな疚しい気持ちで彼女に近づくな!
宗介は、自分の下腹部を拳で思い切り叩いた。
自分の身体に放たれた加減のない衝撃と痛みに腹の奥が疼き、目が潤む。
しかし、そのお陰で少し頭が冷えた。
部活に行こう。
自分の身体をイジメにいじめ抜いて身体の奥に溜まった下らない欲を全て消費しよう。
宗介は、踵を返して体育館へと向かおうとした。
その目にシーの姿が入り込む。
宗介は、歩みを止める。
彼女は、宗介に気づいていない。
ゆっくりとした足取りで廊下を歩き、階段を登っていく。
その姿は毅然として美しく、他者から慕われる魅力のようなものが溢れていた。バスケを辞めたと言うのにそのオーラだけは変わらない。事実、彼女を視界に収めた学生達は一様に振り返って彼女を見る。彼女に憧れ、恋焦がれる。かつての宗介もその例外から漏れることはなかった。
人生で初めて告白し、人生で初めて玉砕し、人生で初めて復讐しようと考えた・・・。
しかし、今の宗介は違う。
シーを見て一番最初に抱いた感情は・・無だった。
彼女を見ても何も感じない。
そう言えばアイに近づこうとしたのって彼女とのことがきっかけだったな、とようやく思い出す・・その程度であった。まだ、1ヶ月しか経っていないが彼女とのエピソードは霞むくらいの過去になっていた。
しかし、それでも彼女のことが気になったのは感情ではなく、驚くほどに平静な観察眼によるものだった。
彼女の顔は、とても張り詰めていた。
夏のインターハイのベスト4が決まる試合の5分前のように危機迫る、決意に漲る表情をしていた。その顔もまた美しさを引き出す要因となっていたが、宗介が考えたのは別のことだった。
彼女は、何かに挑もうとしているのだ。
今、この瞬間にしか出来ない戦場に身を乗り出そうとしているのだ。
宗介の胸に言葉には出来ない予感のようなものが降りてきて、気がついたらシーの後を追っていた。
そしてその予感は見事に当たった。
シーは、屋上へと向かった。
そこで待っていたのは、アイであった。
教科書を読んでも、ノートを取っても、問題を解いても気がつけばアイのことだけを考えていた。
アイが明日からいない、そう考えるだけで胸が抉れそうだった。
(俺は、本当にどうしてしまったんだろう?)
自問自答しても答えなんてでやしない。
宗介は、書店に並んだ小説をパラパラと捲るように1日の時間を費やした。気がついたら放課後になり、気がついたらその足が2年生の教室へと向かって歩きだしていた。
宗介は、アイが実習に入っている教室の扉の前に立った。教室にはまだ幾人かの生徒たちが机を囲んで話していたがアイの姿はそこにはなかった。
もう職員室に戻ったのだろうか?
宗介は、教室を離れて職員室に向かおうとして・・・足を止める。
思わず笑いが込み上げてくる。
俺は、本当に何をしているのだろう?
学校の帰り道にたまたま野良猫に餌を上げるだけの関係の、それこそ学校に実習に来ている間だけの刹那の関係に一体何を執着しているのか?
彼女が可愛いから?
頭が良くて話しやすいから?
自分のものにしたいから?
どれも下賤すぎて自分らしくない。
(ただの性欲だ)
俺は、きっと今までの女達のように彼女の心を自分の虜にして征服したいだけなのだ。
なんて下らない。
なんて浅ましい。
なんて嫌らしい。
そんな疚しい気持ちで彼女に近づくな!
宗介は、自分の下腹部を拳で思い切り叩いた。
自分の身体に放たれた加減のない衝撃と痛みに腹の奥が疼き、目が潤む。
しかし、そのお陰で少し頭が冷えた。
部活に行こう。
自分の身体をイジメにいじめ抜いて身体の奥に溜まった下らない欲を全て消費しよう。
宗介は、踵を返して体育館へと向かおうとした。
その目にシーの姿が入り込む。
宗介は、歩みを止める。
彼女は、宗介に気づいていない。
ゆっくりとした足取りで廊下を歩き、階段を登っていく。
その姿は毅然として美しく、他者から慕われる魅力のようなものが溢れていた。バスケを辞めたと言うのにそのオーラだけは変わらない。事実、彼女を視界に収めた学生達は一様に振り返って彼女を見る。彼女に憧れ、恋焦がれる。かつての宗介もその例外から漏れることはなかった。
人生で初めて告白し、人生で初めて玉砕し、人生で初めて復讐しようと考えた・・・。
しかし、今の宗介は違う。
シーを見て一番最初に抱いた感情は・・無だった。
彼女を見ても何も感じない。
そう言えばアイに近づこうとしたのって彼女とのことがきっかけだったな、とようやく思い出す・・その程度であった。まだ、1ヶ月しか経っていないが彼女とのエピソードは霞むくらいの過去になっていた。
しかし、それでも彼女のことが気になったのは感情ではなく、驚くほどに平静な観察眼によるものだった。
彼女の顔は、とても張り詰めていた。
夏のインターハイのベスト4が決まる試合の5分前のように危機迫る、決意に漲る表情をしていた。その顔もまた美しさを引き出す要因となっていたが、宗介が考えたのは別のことだった。
彼女は、何かに挑もうとしているのだ。
今、この瞬間にしか出来ない戦場に身を乗り出そうとしているのだ。
宗介の胸に言葉には出来ない予感のようなものが降りてきて、気がついたらシーの後を追っていた。
そしてその予感は見事に当たった。
シーは、屋上へと向かった。
そこで待っていたのは、アイであった。
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