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9章 祝福

モウバルト、予想外の方向へ

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「っていうか、みんなホントにあれで良かったの? みんなで戦って勝ったんだし、何かお願い事あったなら言ってくれても良かったんだけど…………」


「私達は現状に不満はないし、今でも十分楽しいから問題ないわ」


「そうだよ、お兄ちゃん」


「…………不満、ないよ…………?」


 ミーシャ、ミア、エレナを中心にみんな満足してる、と各々の言葉で言って頷く。レクスはそんなみんなの言葉にそっか…………と安堵の息を吐く。


「ところで、みんな、この後どうする? もう少し潜ってみる?」


 レクスはみんなにそう尋ねる。レクスとしては、そろそろここで切り上げてもいいと思っている。今日は結構魔物も倒したと思うし、これ以上やるとステータスを取るのも大変になりそうだからだ。まあ、フィアにも報告することがあるというのが一番の要因だが。


「私はそろそろ切り上げて帰りたいわ。ここ、じめじめしてて暑いし、シャワーとか浴びたい」


 フィオナは手であおぐような仕草をしつつ、そう言った。


「私もそろそろいいかな。疲れたし」


 カレンも笑いながらそう言った。みんな帰るのに賛成のようだ。


「じゃあじゃあ、このあとどこかよさそうな店に寄って少し軽く一杯なんてどうかな~?」


「レイン、言動がオッサンくさい……………けど、労うには丁度いいかもね」


 レクスが苦笑しつつ、そんなことを言った。みんなも乗り気なのか、嬉しそうだった。


「じゃあ、フィアさんに報告しに行った後に、飲みに行くってことで」


 そうと決まれば、後はこのダンジョンを出るだけだ。──────と。


「──────ねえ」


「ひぃ!?」


 今まで空気だったモウバルトに話しかけるレクス。モウバルトは先程までの威勢はどこへいったのか、ずっとこんな調子である。この調子だとこっちとしてもやりづらい…………まあ、半ばレインの脅し? のせいだし、仕方ないといえば仕方ないのだが。


「ここから一気にダンジョンの外に出られる方法ってあるの?」


「そ、それなら、ここからもう少し奥に進んでいただくと、転移魔法陣があります。転移魔法陣から、一気に地上に出られますので。うっ、嘘じゃないですからっ、信じてください」


 …………とりあえず、転移魔法陣を目指すべきだろう。モウバルトの心の傷? は頑張って自力で直してもらうことにしよう。スキルも魔法もそこまで万能ではないので。


「あ、あと、。ありがとね」


 レクスは手に持った魔法袋マジックバックから青色のキューブ状の物を取り出してそう言った。


「い、いえ、滅相もございません! 渡したときにも言いましたけどっ、それは三回までしか使えませんからね! 知らなかったとか言って、殴り込みはやめてくださいね!」


(……………うん、もう駄目かもしれない、この人)


 レクスは悟ってしまった。だが、諦めも肝心と言うが、諦めないことも必要なのだ。諦めないで頑張って欲しい。


「それじゃ、僕たちはこれで」


 レクス達はモウバルトの横を通り過ぎ、そのまま奥へと入っていく。モウバルトはそんなレクス達を見送りつつ………………


(……………平和が欲しいのである)


 かくして、モウバルトは旅に出よう、と決めた。平和なダンジョンを探しに旅へ。それは、一種の理想郷への憧れかもしれなかった。
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