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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

開戦……………

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「足下を掬われる? それはあなたの方よ、リミル。そっくりそのままお返しするよ」


「……………口だけは随分達者だね~、ミドク」


「そうね、あなたよりは大分達者よ? 口だけじゃなくてね……………?」


 リミルは静かに怒りに身を震わせていた。ミドクの言動に苛立ちを覚えたようだ。


「……………もうそろそろ無駄話も終わりにしようか~。いつまでも、こんなところでとどまってる訳にはいかないし……………ね!」


 リミルは待機させていた魔法を発動させる。それと同時にヴァンナの身をオルクリムの方へと預けた。戦闘する上で、非常に邪魔になるからだ。


 魔法陣が空中に出現し、杭のような形をしたものが雨の如く上から降り注ぐ。


「─────『守る』!」


 レクスは『守る』を発動。みんなを囲うように障壁を展開する。かなりの量の杭のようなものを受け止めたが、障壁が綻ぶことはなかった。徐々に力を取り戻しつつあると認識していいのだろうか。


「まさか、人間族ヒューマンごときに防がれるとは………………なら、これはどうかな?」


「させないっ!」


 ワチは、魔法式を記述したダガーをリミルに向かって飛ばす。


「こんなの余裕──────」


 リミルはそう言って、障壁を展開しようとしたが───────直前で避けた。あのダガーはただの魔法式が刻んであるダガーではない、という直感にも似た判断で避けたのだ。そしてそれは、間違っていなかった。


 ワチの投げたダガーが噴水を通り越して地面に突き刺さると、魔法陣が突如展開され、バリィッ! とそこそこ威力のある電流にも似た魔法が発動した。


「…………………なかなか食えないね~、ワチぃ~」


 今の魔法式は、一朝一夕で刻める代物ではない。そして、あの攻撃をまともに受け止めていたら、たとえ障壁を展開していても、食らっていただろう。あれは、そういう魔法だ。


「───────『不可視の監獄インビジブルプリズン』!」


 フウシのスキル─────『不可視の監獄インビジブルプリズン』。フウシは、リミル背後に回り、不意打ち的に仕掛けた。即時発動型スキル。相手を十秒間、自分の指定エリア内に閉じ込めるスキルだ。これで、リミルは逃げ場を失った。


「──────『超重力ハイグラビティ』」


 とどめとばかりにエレナが重力魔法を発動。リミルの上下左右四方向に魔法陣を展開し、重力でリミルを押さえ込もうと──────



「─────『術破壊スキルブレイク』!」


 その前に、リミルがフウシのスキルを無効化して不可視の監獄インビジブルプリズンから脱出。重力魔法を浴びる前に、出ることができた。フウシはスキルが破られたことに驚きを隠せない。リミルの術破壊スキルブレイクは、単純なスキルを破壊することができる。複雑すぎるスキルや強すぎるスキルは破壊できない。ゆえに、悟られないようにする必要があった。


「いやぁ~、危ないなぁ。あの重力魔法を食らってたら、余裕であの世行きだよ~」


 言葉とは裏腹にリミルの表情には、余裕すら感じられた。


「次はこっちの番だね~…………。───────『アウグメナ、グロウニスゴーハンベイカン袋のネズミよ、躍り狂え』!!」


「──────!? ハイエルフ語じゃない!?」


 リミルはあらかじめ設置してあった魔法陣を起動。ミドク達を中心に魔法陣が展開され、周りを魔力障壁によって囲まれてしまった。


「これが本来の範囲指定型閉鎖空間系魔法の使い方だよ~? フウシぃ~。君の場合はスキルだけどぉ~」


 リミルが面白そうにそう言うと同時に──────魔法障壁の内部に更に魔法陣が展開され、そこから出てきたのは。


「こ、これは……………魔物………!?」


「正確には死んだ魔物を強制的に使役してるんだけどね~。さあーて……………無事に生き残れるかなぁ~?」


 リミルは不気味な笑いと共にそう言うのだった。
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