上 下
339 / 454
8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

危機というものは大体、同時にやってくる…………のかもしれない

しおりを挟む
「じゃあ、後程メールで話し合いましょ!」


 そう言うと、春咩達は焼肉屋を後にする。レクス達のステータスには新しく《メール》という機能が追加され、相手を指定してメールを送ったり、全体にメールを送ったりできるのだそう。


「魔力通信機の方が便利だと思うんだけどなぁ…………」


 特定の魔力波動を探知し、話したい相手とすぐにつながる。まあ、メールでも悪くはない。魔力通信機は作れるには作れるが、もう少し親しくなってからでも遅くはないだろう。


「私達も、会計を済ましてここを出るぞ。あまり遅くなるのもよくない」


 セレスはそう提案した。確かに長居はあまりよくないだろう。だが…………


「セレスさん、歩ける?」


「だ、大丈夫だっ………これくらいっ」


 セレスの腹は膨れたままだった。どう見ても大丈夫ではない。苦しそうである。


「もう、お姉さま。だらしないですよ。いつまでそうしているんですか。レクス、ここを出るよ」


 反対にフィアはもう大丈夫そうだった。ここは姉妹で差が出るらしい。


「う、うん……………」


 セレスの方を見ながら、大丈夫かな……………? と不安に思いながらセレスの方を見る。


「セ、セレスさんっ、大丈夫ですか……………?」


 シュエイルも気遣わしげにセレスに声をかける。少し頬を赤くしながら、腰に手を添えて肩を貸してやる。とはいえ、シュエイルもそれほど背が高いわけではないので、正直支えになっているかすら怪しいが。


「ああ…………すまない、シュエイル」


 とりあえずレクス達は、焼肉屋を後にしたのだった。



◇◆◇◆◇


「リミル。突入は明日の夜だが、準備はできてるな?」


「そりゃあ、勿論だよ~、オルクリム」


 相変わらずマイペースな口調でそう言うリミル。城への侵入経路を確認し、後は明日成功させるだけ。そうすることで、自分はこの国の王になれる。


「この腐った国を変えなければ……………」


 オルクリムの目には一種の覚悟が垣間見えた。


「オルクリム~、今から力入れてても、疲れるだけだよ? 私達は、攻める側なんだから~。もっと力抜いて。じゃなきゃ、成功するものも成功しなくなっちゃうよ~?」


 リミルがそう言った。確かに、今から力んでいても仕方あるまい。だが、なんかそわそわして落ち着かないのだ。


「……………じゃあ、もう一回作戦の確認でもしとく?」


 リミルはそう提案した。落ち着かないのなら、逆に何かすることで気を紛らわせるのだ。何かしていれば、余計なことを考えずに済む。


「ああ、そうだな。それがいい」


 オルクリムはそう言いながら頷いた。というわけで、作戦会議開始。


「じゃあ、まず~、私が率いる裏工作部隊がここの勝手口から侵入して~、陽動として、オルクリム率いる特攻部隊が真正面から突っ込むっ。こんな感じかな~…………」


「やはり…………なんというか、雑な地図を描いた私が言えた口でもないが、少々作戦が大雑把過ぎないか?」


 オルクリムは顎に手を当てて苦笑しながらそう口にする。これで本当に作戦はうまくいくのだろうか。確認すればするほど、不安になるものだ。


「大丈夫だって。一応、事前に薬はまいておくんだし~。私達裏工作部隊は、基本城内から人が出られないようにちょっと細工をするだけだからね」


 リミルはオルクリムを安心させるが如くいたずらっ子ぽい笑みを浮かべるのだった。
しおりを挟む
感想 490

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。