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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

帰り道

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「うーん……………」


 レクスは暫しの間、考える。そして、少し考えた上でサッと、イルミに見えないくらいの素早い動きでミドクの元へ行き、耳元で囁く。


『明日でいいですか? 今日はイルミもいますので』


 レクスはミドクに小声でそう呟いた。イルミに聞こえないように。イルミを危険なことに巻き込まない方がいいと考慮した上での事だ。


 それを察したのか、ミドクは微笑みながら。


「……………分かった。今日の所は、これで失礼するよ。またいずれ、頼みに来るからね。諦めないよ」


 ミドクが話を合わせてくれた。いかにも断られたかのようにセリフを吐くミドク。そんなミドクにレクスは内心感謝した。


「すいません、ではまた後─────じゃなかった。またいずれ」


 レクスはそう言うと、イルミの手を引いてミドク達の元を後にする。イルミは、ミドクとレクスのやり取りにどこかおかしいような……………と首を傾げたのだった。



◇◆◇◆◇


「それで、あれって結局断ったの?」


「うん。今の僕のステータスじゃ厳しいからね。それにほら、イルミだってまだ魔法覚えたばかりでしょ? そんな状態で行ったんじゃ、危険だからね」


 レクスはイルミにそう言った。本当はレクスのステータスはウグイブの砦に行くには十分だったが、イルミを危険な目には合わせられないのでごまかした。それに、イルミに自分のステータスの詳細を見せていないから、ごまかせるはずだ。


「ふーん……………まあいいや。それにしても今日は疲れたね。レクス、この後食事でもどう? ちょうど腹も減ってきたし。私、いいお店知ってるよ」


 イルミの目は疑わしいものを見るものだったが、まあいいか、と別の話題に切り換える。


「その前に、どこかでシャワー浴びたいな。僕達、汚濁竜ダストドラゴンの唾液とかで臭くなってるし。ちょうどレ…………レクス区の冒険者ギルドにシャワー浴びるところあるし、三階にはいろんな食事場もあるから、行こうよ」


 レクスは自分の区の名前を出す時、少々恥ずかしかったのか、言うのを一瞬だけためらった。未だに慣れない。自分の名前が区になるなんて体験をしたのはレクスだけ……………なのかもしれない。


「自分の区言うの、やっぱり恥ずかしいよね。私はそんな経験したことないから分からないけど」


 イルミは苦笑しながらそう言った。


「ほんと……………そのうち慣れればいいけどね。まだ慣れないや」


 レクスは、ははは…………と諦めたような表情でそう言った。


汚濁竜ダストドラゴンのステータスかぁ……………ロクなもんがあればいいけど…………」


 レクスはとるのを保留している汚濁竜ダストドラゴンのステータスを目の前に表示しながら、そんなことを呟く。自分にしか見えない設定にしてあるので、イルミに見える心配はない。


「レクス、どうしたの? ぼーっとしてるけど」


「ん? いや、ちょっと考え事をね。なんでもないことだから気にしないで」


「そっか」


 イルミは疑わしく思いながらも、頷いておく。


「イルミ、悪いけど、背中に乗ってくれない? ちょっと急がないと日が暮れちゃうからね」


「うんっ」


 イルミは軽い返事で頷くと、レクスの背中に乗った。


「イルミ、途中の魔物の始末、宜しくね。これも訓練の一貫だよ」


「え、いや、ちょっと……………」


 イルミの返事を聞くこともなく、レクスはものすごいスピードで走り始めた。


「あーーーー! もう、やればいいんでしょ、やればぁ!」


 イルミは半ばやけになりながらも、周囲の魔物の始末に躍起になるのだった。
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