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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

祭り中の会議

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「──────では、これより、会議を始めようと思う。早速ではあるが、今年もあれを決めたいと思うのだが…………」


 席に座るみんなの前に立ってそう言うミハイル。統括騎士団団長である。ヴァンナは、娘の御披露目があるということで、この場にはいない。


「っていうか、って何?」


「ん? ああ、そういえばレクスは初参加だったな。これは毎年恒例なんだ。そう身構えなくてもいい。領主に就きたてのころだったから、領主の仕事に慣れてもらうために呼ばれなかったのだろう」


 オルクリムの説明にああ、なるほど…………納得したように頷くレクス。


「それにしても、自分の名前が区の名前になるとはな……………恥ずかしかっただろう?」


「はい、そうですね…………今では大分慣れましたが…………やっぱり区が自分の名前っていうのは少し恥ずかしいです」


 レクスは照れたように苦笑しながらそう言った。すっかり定着したレクス区だが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。


「──────それで、ケンウン祭に関する祭りの警備についてなのだが、今回は少しきな臭い噂が流れている。なので、今回に限ってはこちら側で決めさせてもらった。既に君達の手元に資料は配ってあるので、参照にしてほしい」


 今回はあっちで決めたらしい。いつもは立候補制で決めたりしているのだろうか?


「それにしても…………きな臭い噂ってなんだろ…………?」


 レクスは自分がどこを警備するのか資料で確認しつつ、呟いた。きな臭い噂など、ここ最近聞いたことがないからだ。セレスからも報告がないから、てっきり何もないものだと思っていた。


「きな臭い噂っていうのは、あれだ。ほら、独裁派の動きのことさ」


「独裁派? なんですか、それ?」


「知らないのか?」


 オルクリムは驚いたようにそう言った。どうやら結構有名な派閥らしい。


「独裁派っていうのは、この国を圧政で支配しようとする派閥のことさ。階級をより厳格に決めて、奴隷制度まで復活させようとしているらしい」


(そういえば、奴隷って厳密には違反なんだよね…………。結構隠れてやってる所とかあるけど)


 やはり、奴隷というのはそう簡単にはいなくならないらしい。一度出来てしまったものを、まっさらにするのは容易なことではないのだ。


「あ、僕、東門の近くで警備だ」


「私は西門だ。正反対だな。一緒になれなくて残念だ」


 オルクリムはそう言って苦笑した。


「─────とりあえず、話は以上だ。ケンウン祭の最中に一般人に被害を出さないように、しっかりと警備をしてくれ」


 ミハイルはそう言うと、会議室を後にした。それから、少しして。レクスはハッとしたような表情に。何かに気づいたらしい。


「東門の警備ってことは……………エレナ達と一緒に祭りに回れないことじゃ…………」


 レクスは呆然としながらそう呟いたのだった。



◇◆◇◆◇


「………レクス、来れないって…………。………東門の、警備があるって………」


 エレナは通信機を片手に、明らかに落胆したような表情でそう言った。自分の浴衣姿を見て欲しかったのだろうか。そんなエレナに、ミーシャは。



「なら、今から東門まで行くわよ!」


「………えっ、でも……お仕事の、邪魔に………」


「悩んでないで、行くったら行くわよ!!」


 ミーシャはエレナの腕を引っ張り、東門方向へと進んでいく。そんなミーシャ達の様子をカレン達は微笑えましそうに見ながら、ミーシャ達の後に続くのだった。
 
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