297 / 454
8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~
祭り中の会議
しおりを挟む
「──────では、これより、会議を始めようと思う。早速ではあるが、今年もあれを決めたいと思うのだが…………」
席に座るみんなの前に立ってそう言うミハイル。統括騎士団団長である。ヴァンナは、娘の御披露目があるということで、この場にはいない。
「っていうか、あれって何?」
「ん? ああ、そういえばレクスは初参加だったな。これは毎年恒例なんだ。そう身構えなくてもいい。領主に就きたてのころだったから、領主の仕事に慣れてもらうために呼ばれなかったのだろう」
オルクリムの説明にああ、なるほど…………納得したように頷くレクス。
「それにしても、自分の名前が区の名前になるとはな……………恥ずかしかっただろう?」
「はい、そうですね…………今では大分慣れましたが…………やっぱり区が自分の名前っていうのは少し恥ずかしいです」
レクスは照れたように苦笑しながらそう言った。すっかり定着したレクス区だが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「──────それで、ケンウン祭に関する祭りの警備についてなのだが、今回は少しきな臭い噂が流れている。なので、今回に限ってはこちら側で決めさせてもらった。既に君達の手元に資料は配ってあるので、参照にしてほしい」
今回はあっちで決めたらしい。いつもは立候補制で決めたりしているのだろうか?
「それにしても…………きな臭い噂ってなんだろ…………?」
レクスは自分がどこを警備するのか資料で確認しつつ、呟いた。きな臭い噂など、ここ最近聞いたことがないからだ。セレスからも報告がないから、てっきり何もないものだと思っていた。
「きな臭い噂っていうのは、あれだ。ほら、独裁派の動きのことさ」
「独裁派? なんですか、それ?」
「知らないのか?」
オルクリムは驚いたようにそう言った。どうやら結構有名な派閥らしい。
「独裁派っていうのは、この国を圧政で支配しようとする派閥のことさ。階級をより厳格に決めて、奴隷制度まで復活させようとしているらしい」
(そういえば、奴隷って厳密には違反なんだよね…………。結構隠れてやってる所とかあるけど)
やはり、奴隷というのはそう簡単にはいなくならないらしい。一度出来てしまったものを、まっさらにするのは容易なことではないのだ。
「あ、僕、東門の近くで警備だ」
「私は西門だ。正反対だな。一緒になれなくて残念だ」
オルクリムはそう言って苦笑した。
「─────とりあえず、話は以上だ。ケンウン祭の最中に一般人に被害を出さないように、しっかりと警備をしてくれ」
ミハイルはそう言うと、会議室を後にした。それから、少しして。レクスはハッとしたような表情に。何かに気づいたらしい。
「東門の警備ってことは……………エレナ達と一緒に祭りに回れないことじゃ…………」
レクスは呆然としながらそう呟いたのだった。
◇◆◇◆◇
「………レクス、来れないって…………。………東門の、警備があるって………」
エレナは通信機を片手に、明らかに落胆したような表情でそう言った。自分の浴衣姿を見て欲しかったのだろうか。そんなエレナに、ミーシャは。
「なら、今から東門まで行くわよ!」
「………えっ、でも……お仕事の、邪魔に………」
「悩んでないで、行くったら行くわよ!!」
ミーシャはエレナの腕を引っ張り、東門方向へと進んでいく。そんなミーシャ達の様子をカレン達は微笑えましそうに見ながら、ミーシャ達の後に続くのだった。
席に座るみんなの前に立ってそう言うミハイル。統括騎士団団長である。ヴァンナは、娘の御披露目があるということで、この場にはいない。
「っていうか、あれって何?」
「ん? ああ、そういえばレクスは初参加だったな。これは毎年恒例なんだ。そう身構えなくてもいい。領主に就きたてのころだったから、領主の仕事に慣れてもらうために呼ばれなかったのだろう」
オルクリムの説明にああ、なるほど…………納得したように頷くレクス。
「それにしても、自分の名前が区の名前になるとはな……………恥ずかしかっただろう?」
「はい、そうですね…………今では大分慣れましたが…………やっぱり区が自分の名前っていうのは少し恥ずかしいです」
レクスは照れたように苦笑しながらそう言った。すっかり定着したレクス区だが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「──────それで、ケンウン祭に関する祭りの警備についてなのだが、今回は少しきな臭い噂が流れている。なので、今回に限ってはこちら側で決めさせてもらった。既に君達の手元に資料は配ってあるので、参照にしてほしい」
今回はあっちで決めたらしい。いつもは立候補制で決めたりしているのだろうか?
「それにしても…………きな臭い噂ってなんだろ…………?」
レクスは自分がどこを警備するのか資料で確認しつつ、呟いた。きな臭い噂など、ここ最近聞いたことがないからだ。セレスからも報告がないから、てっきり何もないものだと思っていた。
「きな臭い噂っていうのは、あれだ。ほら、独裁派の動きのことさ」
「独裁派? なんですか、それ?」
「知らないのか?」
オルクリムは驚いたようにそう言った。どうやら結構有名な派閥らしい。
「独裁派っていうのは、この国を圧政で支配しようとする派閥のことさ。階級をより厳格に決めて、奴隷制度まで復活させようとしているらしい」
(そういえば、奴隷って厳密には違反なんだよね…………。結構隠れてやってる所とかあるけど)
やはり、奴隷というのはそう簡単にはいなくならないらしい。一度出来てしまったものを、まっさらにするのは容易なことではないのだ。
「あ、僕、東門の近くで警備だ」
「私は西門だ。正反対だな。一緒になれなくて残念だ」
オルクリムはそう言って苦笑した。
「─────とりあえず、話は以上だ。ケンウン祭の最中に一般人に被害を出さないように、しっかりと警備をしてくれ」
ミハイルはそう言うと、会議室を後にした。それから、少しして。レクスはハッとしたような表情に。何かに気づいたらしい。
「東門の警備ってことは……………エレナ達と一緒に祭りに回れないことじゃ…………」
レクスは呆然としながらそう呟いたのだった。
◇◆◇◆◇
「………レクス、来れないって…………。………東門の、警備があるって………」
エレナは通信機を片手に、明らかに落胆したような表情でそう言った。自分の浴衣姿を見て欲しかったのだろうか。そんなエレナに、ミーシャは。
「なら、今から東門まで行くわよ!」
「………えっ、でも……お仕事の、邪魔に………」
「悩んでないで、行くったら行くわよ!!」
ミーシャはエレナの腕を引っ張り、東門方向へと進んでいく。そんなミーシャ達の様子をカレン達は微笑えましそうに見ながら、ミーシャ達の後に続くのだった。
0
お気に入りに追加
8,243
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。