上 下
287 / 454
8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

魔遊戯後

しおりを挟む
「ほんと、エレナのあれ、大騒ぎになったよねー…………」


 ミアはあはは、と笑いながらそう言った。


 実はドラゴンを倒した後─────ちょっとした、というか大分大騒ぎになったのだ。


『お、おおぉぉぉぉぉ!! あのドラゴンを一撃で………すげえ!』


『もう駄目かと思ってたのに…………一撃で』


 あのドラゴン、実は偽物とかではなく、本物だったのだ。あの白いドラゴンは、魔遊戯所の上をぶち抜いて侵入してきたのだ。しかし、エレナは魔遊戯に夢中だったため気づかずに、ドラゴンもゲーム上での敵だと勘違いし、そのまま倒してしまったのだ。


『…………よし、これでクリア………』


 当のエレナはそんなことは意に介さず、正方形のオブジェクトを破壊し、一息ついていた。あのドラゴンよりもロイヤル・ロッドの方が気になるのだ、エレナとしては。


『……………これがロイヤル・ロッド…………』


 ロイヤル・ロッドは、ゲームをクリアしたと同時にクリアした者の手元に渡る仕組みになっている。エレナの手には、欲しかったロイヤル・ロッドが握られていた。


 エレナは、ロイヤル・ロッドを眺めながらその場から立ち去ろうとする。


『嬢ちゃん、すげえよ、あんた!』


『ドラゴンを一発で倒しちまうな……………嬢ちゃん、とんでもねえな!!』


 エレナは、ゲームをクリアしたことへの称賛だと思っているようで、ど、どうも……………と恥ずかしそうにそう言うと嬉しそうな表情でレクスの元へと戻ってきた。


『…………取ったよ……………』


『あ、うん…………す、すごいね、エレナ』


 レクスは、ドラゴンが本物だったことに気づいてないんだろうな……………なんてことを思いつつ、苦笑しながら頭を撫でてエレナを褒める。


『………私は子供じゃない……………』


 むぅー…………と頬を膨らませながらもえへへ……………と喜ぶエレナ。その姿は見ていて微笑ましいが……………。


『……………とりあえず、ここから一旦離れた方がよさそうね』


『そうみたいね…………注目集めちゃってるし、それに、こんな状態じゃゆっくり遊べなさそうだしね。少し遊んでみたかったけど………残念』


 フィオナは少しだけ肩を落としてそう言った。エレナはレクス達の会話の内容に首を傾げているのが、印象的だった。


 かくして、レクス達は魔遊戯所を去って、こうして街中を歩いているわけだが─────


 因みに、壊れた天井は直していない。下手に直して周りに人でもいたら、もしかしたら怪我をするかも知れないからだ。それと、あとは単にあれだけ細かく割れていれば、直すのは困難だ。


「…………あのドラゴン、本物の割には、大して強くなかった…………」


 エレナはそう呟いた。通常、特大の魔弾を打った程度でドラゴンは倒れない。ドラゴンの外皮は案外固いので、一撃でやられるほどやわではないのだ。たとえ、エレナの一撃であったとしても。


「じゃあ、ドラゴンに似た別のやつとか?」


「いや、どう見てもドラゴンだったと思うけど」


 シュエイルの言葉に、カレンはいやいやと否定しながらそう言った。どちらだったにせよ、ドラゴンは倒された訳だし、それで良いと思うが。


「…………ロイヤル・ロッド…………使うの、楽しみ………」


 エレナは珍しく浮かれ気味にそう呟いていた。レクスはそれを見て苦笑していた。


「そういえば、レイン。なんか、近くに気絶してた人がいたけど……………どうしたの? あと、あの雷、レインでしょ」


「グルッ、グルゥ! 《うん、そうだよ。あの人達が絡んできたから、相手してあげただけ》」


 レインは少し笑いながらそんなことを言った。レインの念話はレクスには聞こえていないが、多分レインが悪いわけではないだろう。気絶してた人達も柄が悪そうだったし。


 レクス達はたわいもない話をしながら、屋敷へと帰るのだった。
しおりを挟む
感想 490

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。