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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

ユグドラシルを追い求め⑬

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 結晶はパキイィィィィィィ─────ン!! と耳障りのいい音を立てて割れた。割れた結晶は、粉々に砕け散って地面にパラパラ落ちていった。


「くっ…………!」


 痛みをこらえるように右腕を抑えるウルゲルク。右腕は折れているため、力も入っていないプラーンとした状態になっていた。


 エレナはそんなウルゲルクに向かって魔法を発動。魔力糸を紡ぎだし、ガチガチにウルゲルクを拘束した。逃げられないように。


 ドワーフ族の勇者だというニューヴィーは気絶していたので、とりあえずエレナ達が預かることにした。


 それにしても…………先程ニューヴィーが言っていたテギルなる人物。ウルゲルクが擬態していた姿の人のことだろう。本物のテギルはおそらくどこかで捕まってるはずだ。やることが一つ増えそうである。まあ、それはあとにするとして。


「ユグドラシルの場所はどこ? 今すぐ吐いて」


「ふん…………貴様らに教えるほど、オレはやわじゃない」


「そっか。なら…………」


 カレンは自分の魔銃に魔力を込める。膨大すぎると、相手が魔力感知に長けていなかったら、魔力を感じ取れなくなってしまうからだ。あくまでこれは脅しなのだから。相手に伝わらなければ意味がない。


 徐々に魔力を魔銃に溜めていくカレン。それに段々恐怖を感じるウルゲルク。顔面蒼白だ。今にもチビりそうな勢いだった。


「わ、わかった、わかったから。貴様らの要求通りユグドラシルの場所を教えてやる」


 ウルゲルクはやはりやわだったようだ。


「ユグドラシルは─────この森のどこかにある…………はずだ」


 最後は自信なさげに語尾が消えていくウルゲルク。しかも、この森のどこかだという。まだこの期に及んで嘘を吐くらしい。


「これ以上嘘を吐くなら─────」


 カレンは魔銃から魔弾を放とうとする。まあ、勿論当てたら重傷になりかねないので、当てはしないが。


「ほ、本当なんだ! 信じてくれ!」


 ウルゲルクは必死で頼み込んだ。ウルゲルクが言うには、ウルゲルクには協力者がいて、協力者はウルゲルクにここを守るように指示して自分はユグドラシルに早々に向かってしまったという。ユグドラシルの場所を教えてもらったことはないのだとか。


「ふーん…………。嘘はついてなさそうだ」


 トラランカはそう言った。


「…………どうして、わかるの…………?」


「私には、真偽を見抜けるスキルがあるの。『真偽判定』って、まんまのスキルなんだけど」


 トラランカはそう言った。


「じゃあ、トラランカ、本物のユグドラシルはどこに?」


 カレンがそう尋ねる。


「本物のユグドラシルもここら辺にあったと思うんだけど…………」


 周囲を見渡した感じ、それらしきものは見当たらない。ユグドラシルほど巨大な樹木であれば、すぐに見つかってもおかしくはないのだが…………。


 ふと、戦っていたときのことを振り返るエレナ。どこか見落としている点はないか。変なところはなかったか。


「………………!」


 エレナははっと何かに気づいたように顔をあげる。


 そういえば、カレンが『重八連撃』を放ったとき、全ての魔弾を命中させたわけではなく、一、二発ぐらい外した。その時に、ユグドラシルの後ろ辺りでふっといきなり消えたのだ。あの時は魔力が霧散したのだと考えていたのだが…………あれが、もしものだとしたら…………?


「…………『魔法式書き換えエクリ・ア・リライト』………!」


 エレナが後ろを振り向いて魔法を発動させる。魔法というよりかは、魔力を使った作業と言った方がいいかもしれない。


「すごい…………」


 宙に次々と魔法式を記していくエレナに、トラランカは感動するように見入った。


 エレナが暫く作業を続けていると──────


 
 


パキパキパキ………………。



 徐々に亀裂が入っていき──────




パキイイイィィィ───────ン!!



 割れた。そして、その奥には。



「全く…………こうも早く見つかるとは」



 眼鏡をかけた白衣を着た研究者らしき少年とユグドラシルが姿を現したのだった。

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