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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

上がる、上がる、そして─────

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「う~ん…………。思った以上に防御が堅いね………」


 ダメージが通ってるとは思うんだけど、あまり効いてないって感じか…………。何か手は…………。


 レクスはそんなことを考えていると、一つだけそれを可能にするスキルが思い浮かんだ。あとははたして魔力が必要なのかどうか…………試してみるしかない。


「『重拳撃』!!」


 カレンが思い切り拳を振るい、背中を狙う。死角からの攻撃は、有効打になりやすい。しかし──────。


「─────カレン、危ない!」


 レクスがそう叫ぶ。ガーゴイルウルフの背中にはいつの間にか棘が生成されており、ガッチリとガーゴイルウルフの背中を守っている。


「うっ─────!」


 カレンはスキル発動中にいきなり方向転換することも出来ず、このまま突っ込むしかない。レクスも、別のスキルを発動させようとしていたため、対処に間に合わない。


「──────しっちゃん!」


 そんな時、執事の格好をした初老の男性──────しっちゃんが横からカレンのもとへ飛び込み、カレンをキャッチしてそのまま華麗に着地を決めた。


「あ、ありがとう…………助かったよ」


「いえいえ、これくらいお安いご用です」


 しっちゃんはそう言うと、カレンをゆっくり置いてその前に盾になるかのように構えた。


「『呪縛剣』!」


 レクスは、『呪縛剣』を発動。魔力によるものではないらしく、きちんと発動した。レクスの真っ赤な剣が、どす黒く染まる。


「はぁ!!」





ガキイイイィィィィィィ!!





 レクスの剣をまるで嘲笑うかのように『見切り』でしっかりと剣を弾くガーゴイルウルフ。レクスは、今度は体勢を崩すことはなかった。そのままもう一度斬りかかる。今度は横から。相変わらず、速い動きだ。


「グルァ!」


 馬鹿め、とでも言いたげな顔で腕から棘を生やすガーゴイルウルフ。普段通りなら、この棘に少しでも触れれば大体の者は即死する。、だ。


「グルアアァァァ!?」


 しかし、堅牢なはずの棘は、直ぐにポッキリと折れて、そこにガーゴイルウルフの腕にレクスの剣が直撃した。数秒呻いた後、怒ってこっちに攻めてくるかと思われたが、そんなことはなく力尽きて光の粒子となって消えていった。


 それを見て、みんなは力が抜けたように息をついた。レクスも少し疲れたように肩の力を抜いた。


 何はともあれ、15階突破だ。



◇◆◇◆◇


 その後もどんどん上がっていき─────現在、26階もはや倒した魔物の数も数えられなくなってきた。あと少しで、マリューシュのもとまで行ける。ゴールも目前だ。


「あれ? 何も、ない…………?」


 ユキメウラが首を傾げて不思議そうにそう言った。


「変だね…………」


 魔力が拾えないから、反応が分からない。念のため、ネムにも聞く。


「………マスター…………先に言っておきます。この罠は、です」


「………………え?」


 レクスが驚いた瞬間、下の床がパカッと開いた。



「わあああぁぁぁぁ──────!?」


 レクス達は、悲鳴をあげながら、下に落ちていくのだった。



◇◆◇◆◇


「いてて…………まさか床が開くなんて………」


 冷たい床の上で、レクス達は目を覚ます。周りは真っ暗で、何も見えない。ここがどこなのか、何階なのか、全く分からなかった。


「──────こっちの方から、マシュの匂いがする」


 ユキメウラは目が覚めるなり、そんなことを口にした。ユキメウラが指した方向は、レクス達から見て右上。つまり、ユキメウラから見れば左上だということ。


「……………………本当なの? それ」


 疑心暗鬼の目で、ユキメウラを見ながらそう言うミーシャ。


「私がマシュの匂いを間違える訳がない!」


 少し興奮したような様子でそう言うユキメウラ。ミーシャは思わず後ずさってしまった。


「…………まあまあ、取り敢えず手がかりも無いんだし、ユキメウラさんの言う方向に行ってみようよ」


 ということで、ユキメウラの言う方向に向かうことにした。
 
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