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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

『英霊』ヴォルムンガ

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「………………使い魔?」


「そうじゃ、そこの黒髪の少女が抱えとる猫が儂の使い魔じゃ!」


 老人は再度怒りながらそう言った。


『おい、シャム。こっちに戻ってくるのじゃっ』


『え~…………折角堪能してたところだったのに…………。しょうがないなぁ』


 老人とシャムの間でそんな念話が交わされ、渋々ではあるがシャムはミーシャの腕を抜け出し、老人の元へ戻る。


「全く…………油断も隙もない」



 老人は溜め息をつきながらそう言うと、話題を切り替える。


「まあいいわい。それよりも─────よくここまで辿り着いたのう。ここに辿り着いたのは、お主らが初めてじゃよ。一応名乗っておくが─────儂の名はヴォルムンガじゃ」


 老人─────もとい、『英霊』ヴォルムンガはそう言うと、ニヤリ…………と笑みを浮かべる。何かしらのリアクションを期待しているのだろうが──────。


「ヴォルムンガさん、ですか…………。僕はレクスといいます」


「…………私はエレナ………」


「私はミーシャよ!」


「カレン」


「ティーナなのだ!」



「……………………あっれぇ?」



 そう。この通り無駄なのである。『英霊』の伝説は、このセレニア皇国と他3ヵ国─────『ウェントラル』、『コルドバ』、『ミューエル』にのみ伝わっている。その国を建国した祖先が英霊だからだ。レクスに至っては、そういったことには無知なため、仕方ないのである。



「お主ら、『英霊』を知らんのか…………? 儂はその一人なのじゃが…………。あれ、儂って英霊じゃったっけ? 英霊だよね?」


 もはや自信もなくなってきたのか、自問自答を繰り返すヴォルムンガ。



『大丈夫だよー、ヴォルは英霊だから』


『ああ、そうじゃよな。お前だけじゃ、儂を英霊だと分かってくれているのは。後で撫でてやるからな』


『いらない。ヴォルは撫でるの下手だから』


 シャムの言葉に、胸がうっ………と苦しくなるも、レクス達がいるのを思い出し、う、ううん! と咳払いして、仕切り直す。



「さて─────お主らはここまで辿り着いた訳じゃが…………そんなお主らには、儂から褒美をやろう」


「褒美? 何ですか、それは?」


「まあ、珍しいスキルのスクロールじゃったり、世にも珍しい食べ物とかじゃな。他にも色々ある」


「欲しいです! どこにあるんですか!?」


 興奮冷めやらぬレクス。どうやらその褒美とやらに興味が沸いたらしい。


「まあ待て。儂としても、ただで褒美をやるつもりはない。ここは─────儂と勝負して勝ったら、くれてやろう」


 ヴォルムンガも中々趣味が悪い。目の前にエサを吊るし、獲物がつれるのを待つかのようだ。



「そうですか…………。じゃあ─────」


「あ、因みに一人ずつじゃぞ? まとめてかかってくるのはなしじゃからな?」


 慌てたようにヴォルムンガはそう付け足した。正直なところ、レクス達全員に一斉にかかられるときつい。英霊も万能じゃないので、隙はある。それに、レクス達の強さは今までの者に比べて群を抜く。たとえ、相手が一人ずつでも油断はできない。


「分かりました。まずは僕からいきます」


 レクスはそう言うと、一歩前に進み出た。


「ちょっと場所を移動するかの」


 ヴォルムンガはそう言うと、指先から魔力を放出。レクス達を浮かせ、マグマのど真ん中にある岩場まで誘導する。そして、レクスはヴォルムンガと相対する。レクスは、一応エレナ達を障壁で囲い込んだ。


「儂もこの槍を振るうのは久しぶりでのう…………。──────手加減は出来ぬぞ?」


 神々しい槍を片手に顕現させ、そう言うヴォルムンガ。その槍の名は『グングニル』。神が作ったと言われる『神器』の一つだ。


「─────ええ、構いませんよ。僕も折角強い相手と戦えるのに、手加減などしてほしくなかったところですから」


 構えから見て、随分な強さを持っていることが窺える。隙のない構え。その鋭い眼光は、真っ直ぐとレクスを見据えている。


「─────ほあ!」


 ヴォルムンガは、一瞬で間合いを詰めた─────。


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