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7章 旅行先で

夕飯時に

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「あー、楽しかったわ!」




「結局、観光だけで一日潰れたねー」





 ミーシャ、カレンがそんな事を言った。結局、なんやかんやと色んなお店や場所を回ってる内に、日が暮れてしまったのだ。ダンジョンに行くことは出来なかった。まあ、まだ依頼は受けてないし、冒険者カードも発行されていないので、別にいいのだが。





「このコート、暖かいのだーーー!」




 ティーナは、服屋で買った紺色のコートを身にまとってそう言った。




「ティーナ…………季節的にはまだ秋の序盤くらいだし………コートは暑いんじゃ………?」





 それに、他の国では冬が極端に気温が下がって寒い地域もあるって聞いたけど…………セレニア皇国は、大して気温の上下もないし、尚更要らないと思うんだけど…………。





「我は外界の変化に敏感なのだ。気温が少し下がっただけでも、身体に影響が出やすい。春とか夏は大丈夫なのだが…………秋や冬は駄目なのだ。昔は上着なしでも大丈夫だったのだが…………長い間封印されてたせいで、体温調節も上手く出来なくなったのだ」





 ティーナに限らずとも、ほとんどの龍人ドラゴニュート族がそうである。セイレーン族も同様であり、秋や冬、地上に出るときには自分の鱗で作ったコートで寒さをしのぐそうだ。




「そっか…………それは知らなかったよ」




 最近では常識も身に付いてきたレクスだったが、まだまだ知らないことはたくさんある。思ってたよりも、世界は広いのだ。





「さてと…………みんな、夕飯でも食いに行こうよ。そろそろお腹も空いてきた頃でしょ?」





「…………お腹、空いた………」



「確かにねー。どっかにいいお店あるのかな?」




《僕もお腹空いたー》





 エレナとカレンがそう言った。レインは念話なので、レクスにのみ聞こえるのだ。






「そうだね…………従魔用のメニューのある店でもあればいいけど…………。まあ、探せばないことはないか」





 ドワーフの文化と人間ヒューマン族は違う。どんな食事が出てくるのか、どんな店があるのか。ちょっとばかり楽しみなレクス達であった。



◇◆◇◆◇


「どこに入る~? 私はあそこの肉屋さんに行きたい!」



「私はそこの居酒屋ね。色んな料理があるし、いっぱい食べられるから」




「我は、あっちの店がいいのだーー!!」





 ミアとミーシャがそれぞれそう口にした。




 ティーナが指差したのは、パン屋さんの看板が出ている店だ。きっとあまり見かけたことがないから、指差したのだろう。セレニア皇国にもパン屋さんはあるのだが…………残念ながら、まだ見かけたことはない。






「ティーナ。あそこはパン屋さんだよ」




「パン屋さん?」





「そう。僕も詳しいことは知らないけど、コムギっていうのを使って作ってるらしいよ。モチモチしてるのもあるし、固いのもあったりして味も様々だけど、美味しいよ」




 レクスは以前食べたことがあるので、そんなことを言った。




「それは是非とも食べてみたいのだぁ!」





「それじゃ、夕飯食べた帰りに寄ろっか」





「やった!」




 ティーナはガッツポーズした。パンという未知なるものに、興味深々である。






「────────!?」




 レクスは突如立ち止まり、左を振り向いた。




「…………どう、したの…………?」





「魔力反応…………じゃないけど…………何かあそこら辺から違う気配がする。魔物じゃないとは思うんだけど…………」





 第一、ここまで反応が小さい魔物なら、ここに入ってくる前に倒される筈だ。少し気になる。






「気になるなら見に行こうよ」






 ミアがそう言った。みんなも同意なのか、うんうんと頷いてくれている。





「…………そうだね。ありがとう」




 レクスはミアにそう言って頭をポンポンと撫でた。レクスなりのお礼だ。




「ふにゃ~~………………」





「…………むっ、ずるい………ミア………」




「我も撫でられたいのだ!」





 エレナやティーナが羨ましそうに見ていた。





「これが妹の特権ってやつよ!」





 一方、ミアは得意気に笑いながらそう言った。そんな様子を見ていたレクスは、思わず苦笑するのだった。



◇◆◇◆◇


 レクス達は、気配を便りに入り組んだ小路地を進んでいく。人気はなく、薄暗いこともあって多少不気味ささえ感じる。



 レクス達が小路地を右に曲がると、そこには──────。



「────────!?」





 一人の少女が、倒れていた。





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