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6章 突如、領地経営へ

対峙 ー1

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 時刻は──────夜の10時を回った。



「約束の書類、持ってきたよ」




 レクスは、少女達に書類を見せた。真っ暗闇の中なので、ご丁寧に光球ライトニングボールで書類を照らして見えやすくした。





「………………よし、それをお前一人でこっちに持ってこい」





 レクスは言われた通りに一人で書類を少女達の元へ持っていき、渡した。






「…………………間違いはないようだ」




 レクスは、その瞬間何だか嫌な感じがした。誰かが誰かを貶めるような、そんな雰囲気がする。




「──────!?」





 その矢先、ミーシャを拘束しているムラクモが、ダガーを取り出し、ミーシャの首筋目掛けて振り下ろした。悪い予感が、的中したのだ。





「ミーシャ!!」





 悲痛な声で叫び、突っ込んでいくレクス。袋から槍を取り出し、『投擲』を発動して槍の先端に『魔力』を込め、投げた。エレナ達も必死で追撃をかける。しかし────。





「『絶壁展開』!!」





 剣を持った少女────ストリーが、地面に剣を刺して堅牢な障壁を展開。レクスの槍とエレナ達の追撃を防いだ。もう駄目だ─────そう思った。









ガキイイイイイィィィ──────ン!!




 





 しかし、ミーシャの首筋を切り裂くことはなく─────障壁に阻まれた。





「なっ…………!?」




 ムラクモの攻撃が防がれた事に、驚くユーエ。しかも、魔力が回復している。まさか…………!





「──────『魔力無効化』の足枷を外したのか!?」




「その通りよ!」




 ミーシャは、自身につけていた足枷を外し、レクス達の元へ。今まではただの演技だったのだ。これでは、人質の意味もなくなってしまう。



「ミーシャ! 無事でよかった…………!」



 レクスは、ミーシャに抱きつきながらそう言った。ミーシャは、頬をほんのり赤くして、とても嬉しそうであった。




「…………ミーシャ、後で覚えといて……………。…………取り敢えず………今は貸し………」




 エレナは、ぐぬぬ…………と歯を食い縛りながらそう言った。本当は今すぐにでもレクスとミーシャを引き離したいところだ。




「くっ…………! ムラクモ!」



「………………了解」




 ムラクモは大砲を構え、魔力の充填を開始。そして─────。




「発射!」




 ミーシャを目掛けて発射された魔弾。ミーシャは、何やら魔力を組んで障壁を発動していた。いらない魔法陣まで組み合わせながら。








ガキイイイイィィィィィィン!!









「…………ふ、防いだ…………? う、嘘………」



 
 ムラクモは初めて表情を崩した。僅かではあるが。




「──────やっぱりね」





 ミーシャはしたり顔でそう言った。





「その神武具、紛い物でしょう?」





「──────馬鹿にしてるのかしら?」





 ミーシャの言葉に、特殊な形状の魔法杖を持った少女─────ロヴァーが、怒りながらそう言った。表情から察するに、神武具が本物だと思っているようだ。





「多分だけど、貴女達が持っている神武具。相手の術式を読み取って、それに最適な魔法式を構築してるって感じかしら」




「な、何故そんなことが────!?」




 ハッとして自分の口をつぐむロヴァー。しかし、時すでに遅し。レクス達にもがっちり聞こえていた。





「そこの剣を持ってる貴女が障壁を展開した時だったかしら。皆の攻撃を受け止めてる時に、僅かだけど、攻撃を受け止める部分だけ、他のところに比べて魔力反応が大きかったの。そこでピーンときたのよ」




 ミーシャは、懇切丁寧に説明してやった。ギリギリッ…………! と歯ぎしりする剣を持った少女、ストリー。





「なるほどね…………だから僕の障壁も通じなかった訳だ」




 だから、ミーシャはあんなに複雑な魔法を組んだんだ。神武具にも弱点はあった。でも…………。





「ミーシャ。紛い物って?」




「そのまんまよ。あの神武具は、恐らく別の神様の手によって作られたってこと。本物は、今も王都にある筈よ」




「どうしてそんなことが分かるの?」



 レクスは、不思議そうに首を傾げた。




「─────前に本物を見たことがあるのよ。あれの比なんかじゃないくらい、オーラが凄かったわよ」



「なるほど…………」





 紛い物ねぇ…………。紛い物でもこの威力…………本物は一体どんな威力なんだろう?




 レクスはそんなことを思った。
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