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6章 突如、領地経営へ

ルミリア騎士伯

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「いらっしゃいませー、お客様どうぞこちらに」




 妖艶なダークエルフ─────メルビアナが男性客にそう言った。メルビアナの腕には、ブレスレットが装着されていた。これこそが、レクスの言った条件だ。







『このブレスレットを装着して商売してください』





『これは…………?』





『これは、妙な真似をした際にそれを感知して、その者を殺す魔法がかけられています。それをつけた際に、魔力も極限まで落とされます』




 勿論、そんな人を殺すような物騒なものはかけてはいない。これは、ダークエルフ族の反乱行為を抑止するための嘘だ。魔力が極限まで削ぎ落とされるのは本当だ。一度は戦いを交えたダークエルフ族。簡単には信用できない。







『─────分かった。私達は、これを着けて商売をしよう』








 ─────というような経緯があって、今に至る。





「ふっ…………『ザカライア』を失った今では、もうどうしようもないわよ………」





 反旗を翻す気など更々ない。今は、金を稼いで日々の暮らしを豊かにしたい、それだけだ。幸い、家の方は、分割払いだが安く提供して貰えた。




「さてと…………もう一頑張りだわ」





 メルビアナは、思考を断ち切ってそう言った。



◇◆◇◆◇


「ボーマン様、準備完了しました」




 黒い覆面を着け、全身黒装束の男────Sがそう言った。



「そうか。一応聞くが、例の物は準備してあるか?」




「はっ。抜かりはありません」




 ボーマンの言葉にそう返すS。ボーマンは満足げな笑みを浮かべた。





「作戦の決行は3日後だ。それまでに各々、準備をしておくように。失敗は許されないぞ」





「はっ」





 Sはそう言うと、次の瞬間にはボーマンの目の前から消えていた。スキル『影縫い』だ。物や人の影に潜って移動できるスキル。中々に便利だ。





「ああ、ルミリア様。必ずやルミリア様を皇女の側近にします。そして、その暁には────この腐れきった国を変えてください」





 崇拝にも似たような眼差しで上を見上げながら、そう呟くボーマンであった。



◇◆◇◆◇


「ふふふ………………そう。……準備の方は上手くいってるのね……………」




 面白そうに笑うルミリア。




「はい。ボーマンから、そのように伝え聞いております」




 ルミリアにそう言ったのは、可愛らしいメイド服を着た少女────ムラクモだ。青色の透き通る髪に、黒い瞳を持っている。その表情は、冷めきっているようで、何を考えているか分からない。





「そう…………。ねえ、ムラクモ。…………これが終わったら、あの男も処分しちゃっていいわよ………」




 ボーマンもルミリアにとっては只の駒に過ぎないのだ。使用時期を終えれば、それは捨てなければならない。間違っても、犯罪組織と繋がっているなどという証拠は、残してはならない。



「分かりました」



 ムラクモは、無表情で頷いた。




 ルミリアはそんなムラクモの近くまで来て、髪を撫でながらそう言うルミリア。ムラクモは、ルミリアのお気に入りで、メイドの中で一番可愛がっている。




 ルミリアは、髪から手を離して、いつも通り頬にキスをすると再び椅子に座った。



「私はこれで失礼します」




 特に頬を赤らめる様子もなく、そう言って退室したムラクモ。




「……相変わらずね…………」




 お人形さんみたいに可愛い。他のメイドとは違って、私になびなかないところも…………。






「私は皇女の側近になるわ…………どんな手段を使ってでも…………」




 そして、いずれはこの国を牛耳る存在に…………。





「ふふふ………………」




 端から見れば、魅力的な笑みを浮かべているルミリアだが、その思考は似ても似つかないほど腹黒いものだった。



「この選挙…………私がもらうわ…………」




 ルミリアは、そう呟いた。





 ここから、選挙は更に大きく動き出す────。これは、その始まりに過ぎなかった。

 









 








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