46 / 57
2章 新たなスキルと出会い
蓮斗・秀治 VS ザティック盗賊団 ー1
しおりを挟む
「……秀治、準備はいいか?」
蓮斗は秀治にそう問いかける。
「ああ。いつでも大丈夫だ」
秀治は蓮斗の問いかけに対し、落ち着いた様子で答える。
今の時刻は深夜に差し掛かろうかというくらいの所。蓮斗、秀治はザティック盗賊団の拠点であるグライシアス鉱山の近くにいる。昨日と今日で綿密に計画を立て、抜けてるところがないか確認したり、それを何回も反復したりした。抜かりはない。ただ、想定外の事態が起こることだって当然ある。そういった事にも慌てず対処出来ればこの計画は成功するはずだ……と思いたい。
というのも、そもそもこの計画は不確定要素が多すぎる。つまり、想定外の事態が起こる確率の方が圧倒的に高いということだ。ザティック盗賊団という名前以外は何もわかっていない。無謀に近いともいえる。いわば愚行というものに近いのかもしれない。ならば何故こんなことをするのか。それは蓮斗自身、ザティック盗賊団に奴隷として捉えられた人々を一刻でも早く助けたいからだ。時間が経てば経つほど奴隷として商業ギルドに送られる人々が増えてしまう。そういった人々を減らしたい。その為にこのような真似までして、グライシアス鉱山にやって来たのだ。
「あそこが奴等の拠点か……」
蓮斗はそう呟きながら、ザティック盗賊団の拠点ーーグライシアス鉱山を秀治と共に木の陰から見やる。
「何か妙だな……」
秀治が訝しげな顔をしながらそう呟く。
「……どこがだ?」
「奴等の本拠地の近くだっていうのに、まるで人の気配がほとんど感じられない。……もう既にもぬけの殻なのか?」
そう。何故かグライシアス鉱山の方から人の気配が全くしないのだ。一人たりともだ。蓮斗がザティック盗賊団の一味から聞いた話が嘘だったのか……? それとも何かしらの罠があるのか……?
「秀治。一旦確認してこないか?」
蓮斗が特に気負った様子もなく秀治にそう提案する。秀治は蓮斗のその言葉に暫く考え込んでいたが、ここで立ち止まっていても仕方がないと思い、蓮斗の提案を承諾する。
「……そうだな。そうしよう」
蓮斗はその言葉を聞くと、じゃあ行くか、と言ってグライシアス鉱山の入り口に近づいていく。その後ろには当然秀治がついてきている。
「"気配察知"」
蓮斗は気配察知の魔法を使い、辺りを警戒しながら進んでいく。今、蓮斗の気配察知には数十人の気配が引っ掛かっている。故に秀治に警戒を促す。
「秀治。グライシアス鉱山の入り口付近、それに結構奥の方にも人の気配がある。……奴隷か盗賊かはわからないけど……気を付けた方がいい」
「……了解だ」
秀治は自分の無力さを痛感したが、今はそんな場合じゃないと気を引き閉め直す。相手は本気で自分達を殺しに来るのだ。気を抜いていたらあっという間にやられてしまう。まさに一瞬の油断が命取りとなるのだ。
蓮斗と秀治はやがて、グライシアス鉱山の入り口までたどり着く。するとーーー。
「…………!」
気配が複数動いた。俺達を取り囲むように。
「秀治。気を付けろ。周りにいるぞ」
「分かった」
多分潜伏能力の類いだろう。周囲には身を潜めるための岩やらがたくさんある。そこに隠れているんだろう。ある意味、盗賊団の拠点としては最適な場所のように思える。だが、そんな小細工をしたところで、蓮斗には全く通用しないのだ。
通常、気配察知というのは相手の存在感みたいなものしか感知できない。つまり、相手の体温や息づかい、足跡までは感知できない。だが、蓮斗の"気配察知"ではそれが出来てしまうのだ。これではいくら潜伏能力が優秀だったとしても無意味だ。潜伏能力は自分の存在感のみ消せるのだから。
「……いるんだろ? 出てこいよ」
蓮斗は周りに潜んでいるザティック盗賊団の一味にそう声を発する。すると観念したように、岩陰から姿を現す複数の男たち。やはり黒装束に身を包んでいる。人数的に6、7人くらいだろうか。
「ちっ……。ばれてたか……」
一人のがさつそうな男が忌々しげに吐き捨てるようにそう言う。
「……まあいい。お前らがここに侵入するってんなら容赦はしねえ。立ち去るなら今のうちだぜ?」
がさつそうな男は蓮斗達を挑発するようにそう言う。
「……生憎とここで立ち去る気はない」
蓮斗はがさつそうな男の言葉に強い意思を持ってそう言い返す。
「……じゃあ、ここで朽ち果てろ!」
その言葉を合図に盗賊達が一気に蓮斗と秀治に襲いかかる。
「秀治! 後ろの三人は任せた!」
「了解」
蓮斗はそう言うと、腰に掛けてある鞘から短剣を抜き、襲いかかって来る盗賊達と対峙する。盗賊達が四方向から短剣で蓮斗を切りつけようとするがーー。次の瞬間、四人の盗賊達は気を失ったように倒れた。
「……随分あっさり終わったな……。もう少し苦戦するものかと思っていたが……」
何故、四人の盗賊達が一斉に気絶したのか。それは蓮斗が短剣で攻撃したからに他ならない。
まず、前方から迫ってきた盗賊の鳩尾を短剣の柄の部分で打ち付け、右から襲ってきた二人目の盗賊は蹴りで的確に鳩尾を蹴り、左から迫ってきた三人目の盗賊の短剣をいなし、短剣で腹部を切りつけ、後方から襲ってきた四人目の盗賊は短剣の柄の部分でやはり鳩尾を狙い、気絶させたのだ。これが一瞬で出来たのは一重に蓮斗のチートじみたステータスがあってこそだ。
蓮斗自身、あまり血を見るのが好きではない。特に、少女を盗賊から助け出そうとしたときに感情的になってやらかした時が一番やばかった。
今回はその時の反省も踏まえ、血も最小限で済ませている。
「さてと……。秀治の方はどうかな……」
蓮斗は秀治にそう問いかける。
「ああ。いつでも大丈夫だ」
秀治は蓮斗の問いかけに対し、落ち着いた様子で答える。
今の時刻は深夜に差し掛かろうかというくらいの所。蓮斗、秀治はザティック盗賊団の拠点であるグライシアス鉱山の近くにいる。昨日と今日で綿密に計画を立て、抜けてるところがないか確認したり、それを何回も反復したりした。抜かりはない。ただ、想定外の事態が起こることだって当然ある。そういった事にも慌てず対処出来ればこの計画は成功するはずだ……と思いたい。
というのも、そもそもこの計画は不確定要素が多すぎる。つまり、想定外の事態が起こる確率の方が圧倒的に高いということだ。ザティック盗賊団という名前以外は何もわかっていない。無謀に近いともいえる。いわば愚行というものに近いのかもしれない。ならば何故こんなことをするのか。それは蓮斗自身、ザティック盗賊団に奴隷として捉えられた人々を一刻でも早く助けたいからだ。時間が経てば経つほど奴隷として商業ギルドに送られる人々が増えてしまう。そういった人々を減らしたい。その為にこのような真似までして、グライシアス鉱山にやって来たのだ。
「あそこが奴等の拠点か……」
蓮斗はそう呟きながら、ザティック盗賊団の拠点ーーグライシアス鉱山を秀治と共に木の陰から見やる。
「何か妙だな……」
秀治が訝しげな顔をしながらそう呟く。
「……どこがだ?」
「奴等の本拠地の近くだっていうのに、まるで人の気配がほとんど感じられない。……もう既にもぬけの殻なのか?」
そう。何故かグライシアス鉱山の方から人の気配が全くしないのだ。一人たりともだ。蓮斗がザティック盗賊団の一味から聞いた話が嘘だったのか……? それとも何かしらの罠があるのか……?
「秀治。一旦確認してこないか?」
蓮斗が特に気負った様子もなく秀治にそう提案する。秀治は蓮斗のその言葉に暫く考え込んでいたが、ここで立ち止まっていても仕方がないと思い、蓮斗の提案を承諾する。
「……そうだな。そうしよう」
蓮斗はその言葉を聞くと、じゃあ行くか、と言ってグライシアス鉱山の入り口に近づいていく。その後ろには当然秀治がついてきている。
「"気配察知"」
蓮斗は気配察知の魔法を使い、辺りを警戒しながら進んでいく。今、蓮斗の気配察知には数十人の気配が引っ掛かっている。故に秀治に警戒を促す。
「秀治。グライシアス鉱山の入り口付近、それに結構奥の方にも人の気配がある。……奴隷か盗賊かはわからないけど……気を付けた方がいい」
「……了解だ」
秀治は自分の無力さを痛感したが、今はそんな場合じゃないと気を引き閉め直す。相手は本気で自分達を殺しに来るのだ。気を抜いていたらあっという間にやられてしまう。まさに一瞬の油断が命取りとなるのだ。
蓮斗と秀治はやがて、グライシアス鉱山の入り口までたどり着く。するとーーー。
「…………!」
気配が複数動いた。俺達を取り囲むように。
「秀治。気を付けろ。周りにいるぞ」
「分かった」
多分潜伏能力の類いだろう。周囲には身を潜めるための岩やらがたくさんある。そこに隠れているんだろう。ある意味、盗賊団の拠点としては最適な場所のように思える。だが、そんな小細工をしたところで、蓮斗には全く通用しないのだ。
通常、気配察知というのは相手の存在感みたいなものしか感知できない。つまり、相手の体温や息づかい、足跡までは感知できない。だが、蓮斗の"気配察知"ではそれが出来てしまうのだ。これではいくら潜伏能力が優秀だったとしても無意味だ。潜伏能力は自分の存在感のみ消せるのだから。
「……いるんだろ? 出てこいよ」
蓮斗は周りに潜んでいるザティック盗賊団の一味にそう声を発する。すると観念したように、岩陰から姿を現す複数の男たち。やはり黒装束に身を包んでいる。人数的に6、7人くらいだろうか。
「ちっ……。ばれてたか……」
一人のがさつそうな男が忌々しげに吐き捨てるようにそう言う。
「……まあいい。お前らがここに侵入するってんなら容赦はしねえ。立ち去るなら今のうちだぜ?」
がさつそうな男は蓮斗達を挑発するようにそう言う。
「……生憎とここで立ち去る気はない」
蓮斗はがさつそうな男の言葉に強い意思を持ってそう言い返す。
「……じゃあ、ここで朽ち果てろ!」
その言葉を合図に盗賊達が一気に蓮斗と秀治に襲いかかる。
「秀治! 後ろの三人は任せた!」
「了解」
蓮斗はそう言うと、腰に掛けてある鞘から短剣を抜き、襲いかかって来る盗賊達と対峙する。盗賊達が四方向から短剣で蓮斗を切りつけようとするがーー。次の瞬間、四人の盗賊達は気を失ったように倒れた。
「……随分あっさり終わったな……。もう少し苦戦するものかと思っていたが……」
何故、四人の盗賊達が一斉に気絶したのか。それは蓮斗が短剣で攻撃したからに他ならない。
まず、前方から迫ってきた盗賊の鳩尾を短剣の柄の部分で打ち付け、右から襲ってきた二人目の盗賊は蹴りで的確に鳩尾を蹴り、左から迫ってきた三人目の盗賊の短剣をいなし、短剣で腹部を切りつけ、後方から襲ってきた四人目の盗賊は短剣の柄の部分でやはり鳩尾を狙い、気絶させたのだ。これが一瞬で出来たのは一重に蓮斗のチートじみたステータスがあってこそだ。
蓮斗自身、あまり血を見るのが好きではない。特に、少女を盗賊から助け出そうとしたときに感情的になってやらかした時が一番やばかった。
今回はその時の反省も踏まえ、血も最小限で済ませている。
「さてと……。秀治の方はどうかな……」
0
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる