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序章
Prat 4 『魔法使いは彼女を』
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彼女の話によると、この世界には、妖怪も精霊も神様も存在しているという。それも人間たちの近くにいるのだそうだ。
「ただ、見え方が違うって言うんですかね。こう、本来の世界とは別の概念で・・・」
そして、彼女の言葉を自分なりに噛み砕いて説明するなら、自分たちの世界の上に乗るように妖怪たちの世界があるため、普通は人間には観測できないのだという。逆に妖怪たちはこちらのことがはっきり認識できるようだが・・・
イラストを描く人のレイヤー機能みたいなもんかな・・・この世界って言うレイヤーの上に妖怪世界のレイヤーがのってる感じか・・・
「あれ? でも、じゃあ、なんでサクヤは、俺に見えてるんだ?」
その理屈なら俺にサクヤの姿が見えるのはおかしい。確実に俺は、サクヤの声も姿も観測できているのだ。
「それは、私が下の人間世界に半分降りてきているからです。妖力とかそんな類のものですよ。まあ、と言っても私もあんまり詳しい訳ではないので、授業みたいに教えるとなると少し難しいですね。」
「まあ、そうだよな。俺も自分の世界について説明しろって言われても難しいから・・・」
とはいえ、ある程度は理解した。そろそろ、本題に入りたいところだ。なぜサクヤが咲けないのかを。
「はい。随分前の事です。この辺りには魔女がいました。その魔女が私に呪いをかけたんです。咲くことができなくなる呪いを。」
「うん」
「はい」
「・・・・・・・・・え?」
「はい?」
「終わったの!? 10秒にも満たないんだけど!?」
過去の回想に浸る余裕もなかった。なんか、もっとこう、物語には、原因とか経緯とかがあるわけで・・・
「と言いましても通り魔的犯行というか、原因不明といいますか、突然、私に呪いをかけて去っていったので、その頃は、私も今ほど力はありませんでしたし、この桜の木から離れる事なんて出来ませんでしたから、追いかけて呪いを解いてもらうことも出来なくて・・・」
「そりゃあ、とんでもない魔女だな・・・」
「動けるようになってもその魔女さんがどこにいるのかも分からず、結局・・・」
「今に至ると・・・」
「そうです。で、でも、ある時にお知り合いから噂で聞いたんです。魔女がこの辺りに戻ってきているって」
「じゃあ、会いに行って呪いを解いて貰えば、解決じゃないか・・・」
「そうなんですけど・・・魔女に1人で会うのが怖くてですね・・・その、日向さんに一緒に来てもらえればなぁと・・・」
なるほど、それもそうか、通り魔的に呪いをかけてくるような奴に1人で会いに行くのは正気じゃない。
「なるほど、付き添えば良いんだな。了解。じゃあ、いつ行く? 急ぎの方がいいなら今からでも別にいいけど・・・」
「いや! 私も心の準備が・・・はい。・・・なので、ご都合の良い日で大丈夫ですよ。待つのにはなれてます。木ですし・・・」
「それは、独特の感性だなぁ。」
少し不安そうな声だ。無理もないだろうが・・・。しかし、都合を合わせてくれるというのなら、バイトのない日を選んで手伝えそうだ。
携帯電話を開いてバイトのシフトを確認する。確か明日は、休みだったはずだ。
「なら、明日あたりにでも、ここに来れば良いかな?」
「はい! 大丈夫です。お待ちしてますね。」
そうして、俺はサクヤと別れてゼミの方に戻る事にした。奇妙なことになったものだ。俺が見えてないだけで世の中には妖怪やら何やらが大量にいるなんて不思議な話を聞いたものだ。あまりの非現実さに、もしかしたら、夢だったのかもと思うほどだ。
「まあ、この頭の痛みを考えると絶対にありえないんだけどな・・・」
相変わらず、頭がズキズキと痛む。病院に行かなければいけない程ではないが、もし長引くようなら行った方がいいかもしれない。
しかし、今日は、初めての経験ばかりで楽しい一日だ。新しい出会い、新しい価値観、そういうものは、人の心に潤いをもたらしてくれる。だからこそ、色々なことを経験するのは大切だと俺は思う。
そう、戻ってきてみるとゼミのメンバーのほぼ全員が解散していたとしてもそれは良き経験になるはずだよ・・・
「ただ、見え方が違うって言うんですかね。こう、本来の世界とは別の概念で・・・」
そして、彼女の言葉を自分なりに噛み砕いて説明するなら、自分たちの世界の上に乗るように妖怪たちの世界があるため、普通は人間には観測できないのだという。逆に妖怪たちはこちらのことがはっきり認識できるようだが・・・
イラストを描く人のレイヤー機能みたいなもんかな・・・この世界って言うレイヤーの上に妖怪世界のレイヤーがのってる感じか・・・
「あれ? でも、じゃあ、なんでサクヤは、俺に見えてるんだ?」
その理屈なら俺にサクヤの姿が見えるのはおかしい。確実に俺は、サクヤの声も姿も観測できているのだ。
「それは、私が下の人間世界に半分降りてきているからです。妖力とかそんな類のものですよ。まあ、と言っても私もあんまり詳しい訳ではないので、授業みたいに教えるとなると少し難しいですね。」
「まあ、そうだよな。俺も自分の世界について説明しろって言われても難しいから・・・」
とはいえ、ある程度は理解した。そろそろ、本題に入りたいところだ。なぜサクヤが咲けないのかを。
「はい。随分前の事です。この辺りには魔女がいました。その魔女が私に呪いをかけたんです。咲くことができなくなる呪いを。」
「うん」
「はい」
「・・・・・・・・・え?」
「はい?」
「終わったの!? 10秒にも満たないんだけど!?」
過去の回想に浸る余裕もなかった。なんか、もっとこう、物語には、原因とか経緯とかがあるわけで・・・
「と言いましても通り魔的犯行というか、原因不明といいますか、突然、私に呪いをかけて去っていったので、その頃は、私も今ほど力はありませんでしたし、この桜の木から離れる事なんて出来ませんでしたから、追いかけて呪いを解いてもらうことも出来なくて・・・」
「そりゃあ、とんでもない魔女だな・・・」
「動けるようになってもその魔女さんがどこにいるのかも分からず、結局・・・」
「今に至ると・・・」
「そうです。で、でも、ある時にお知り合いから噂で聞いたんです。魔女がこの辺りに戻ってきているって」
「じゃあ、会いに行って呪いを解いて貰えば、解決じゃないか・・・」
「そうなんですけど・・・魔女に1人で会うのが怖くてですね・・・その、日向さんに一緒に来てもらえればなぁと・・・」
なるほど、それもそうか、通り魔的に呪いをかけてくるような奴に1人で会いに行くのは正気じゃない。
「なるほど、付き添えば良いんだな。了解。じゃあ、いつ行く? 急ぎの方がいいなら今からでも別にいいけど・・・」
「いや! 私も心の準備が・・・はい。・・・なので、ご都合の良い日で大丈夫ですよ。待つのにはなれてます。木ですし・・・」
「それは、独特の感性だなぁ。」
少し不安そうな声だ。無理もないだろうが・・・。しかし、都合を合わせてくれるというのなら、バイトのない日を選んで手伝えそうだ。
携帯電話を開いてバイトのシフトを確認する。確か明日は、休みだったはずだ。
「なら、明日あたりにでも、ここに来れば良いかな?」
「はい! 大丈夫です。お待ちしてますね。」
そうして、俺はサクヤと別れてゼミの方に戻る事にした。奇妙なことになったものだ。俺が見えてないだけで世の中には妖怪やら何やらが大量にいるなんて不思議な話を聞いたものだ。あまりの非現実さに、もしかしたら、夢だったのかもと思うほどだ。
「まあ、この頭の痛みを考えると絶対にありえないんだけどな・・・」
相変わらず、頭がズキズキと痛む。病院に行かなければいけない程ではないが、もし長引くようなら行った方がいいかもしれない。
しかし、今日は、初めての経験ばかりで楽しい一日だ。新しい出会い、新しい価値観、そういうものは、人の心に潤いをもたらしてくれる。だからこそ、色々なことを経験するのは大切だと俺は思う。
そう、戻ってきてみるとゼミのメンバーのほぼ全員が解散していたとしてもそれは良き経験になるはずだよ・・・
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