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4章
Part 304『実践』
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あれからしばらくして、学校が始まり、授業と呪具を作る生活で忙殺されていた。
一年の間に取れるだけ単位を取っていたこともあり、今年の講義を多少減らして、呪術の練習に割く時間を増やした。
ウチガネさんのコツの意味が理解出来てもすぐに良い品は出来なかった。
当然だ。ウチガネさんのコツとは、作品への考え方であり、技術を瞬間的に高めるものではない。
ウチガネさんのコツは俺にとても上手く胸に落ちた。なんのために作るのか。作る意味は。ただ、完成度を上げようとしていた自分の行動を変えた。
使うのは自分ではなくサクヤである以上、指輪は自分の感覚で作ってはいけない。
意匠もサクヤに似合う物にしたい。そう思うとどこを削るかを考える時間が増えた。
より良い作品。サクヤが身につけるならどう作るのが彼女に似合うだろうか。
それは今まで自分が持てなかった作品へのこだわりになっていった。
俺が作る意匠を変えたいと行った時、篝さんはあっさりと許してくれた。
意外そうな顔をする俺に篝さんは「なんて顔してやがんだ。」と頭を軽く小突いた。
「こだわりがない作品に人の心は動かせねぇよ。好きな女にやるもんならなおさらだ。てめぇの作りたいだけの物を押し付けて何の意味があるんだ。そういう意味じゃ利根も成長してるってことだ。」
相変わらず名前は憶えて貰えないが指導はスパルタだった。何度も何度も怒られながら作業した。けれど、根気強く教えてくれた。
きちんと俺のやりたいことを察してくれて教えてくれる。
そして、清浄石を使った練習が認められたのは、冬に入り始め厚着しないと凍えそうになった頃だった。
自分でも驚くほど成長できたと思う。まだまだ拙さはあるが始めた頃に比べれば明らかに出来ることの幅は広くなった。
手に清浄石を持つ。冬の寒さで冷えた石は痛いぐらいだ。
妖怪にとっては毒になる石だ。魔力の活動を鈍らせる性質のある清浄石は、原石の状態ならば、並の妖怪なら触れるだけで死んでしまうほどに毒性が強い。向こうの世界では人間だけが特権的に使える石となっていて、加工して武器などに転用していた。
妖怪達の世界であった冬夜の持つ刀『陽炎』も清浄石の使われたものである。しかし、毒も使い方を変えれば薬になる。魔力の活動を鈍らせる力をある程度を抑えることが出来れば、サクヤの魔力の放出を必要最低限に調節することが出来る。
今、俺の努力を発揮する時がきた。期待もあり不安もある。清浄石は少し多めに貰っているとはいえ、数に限りがある。トライアンドエラーばかりはしていられない。
そう思うと中々実行できずにいた。削り針を強く握っては離しを繰り返していた。
「大丈夫ですよ。日向さん。」
サクヤが俺に優しく声をかけた。そして、いつもの笑顔で微笑みかけた。
「日向さんの努力をずっと見てきました。大丈夫です。日向さんなら出来ますよ。」
「・・・・・・ありがとな。」
俺は、清浄石を削り始めた。
一年の間に取れるだけ単位を取っていたこともあり、今年の講義を多少減らして、呪術の練習に割く時間を増やした。
ウチガネさんのコツの意味が理解出来てもすぐに良い品は出来なかった。
当然だ。ウチガネさんのコツとは、作品への考え方であり、技術を瞬間的に高めるものではない。
ウチガネさんのコツは俺にとても上手く胸に落ちた。なんのために作るのか。作る意味は。ただ、完成度を上げようとしていた自分の行動を変えた。
使うのは自分ではなくサクヤである以上、指輪は自分の感覚で作ってはいけない。
意匠もサクヤに似合う物にしたい。そう思うとどこを削るかを考える時間が増えた。
より良い作品。サクヤが身につけるならどう作るのが彼女に似合うだろうか。
それは今まで自分が持てなかった作品へのこだわりになっていった。
俺が作る意匠を変えたいと行った時、篝さんはあっさりと許してくれた。
意外そうな顔をする俺に篝さんは「なんて顔してやがんだ。」と頭を軽く小突いた。
「こだわりがない作品に人の心は動かせねぇよ。好きな女にやるもんならなおさらだ。てめぇの作りたいだけの物を押し付けて何の意味があるんだ。そういう意味じゃ利根も成長してるってことだ。」
相変わらず名前は憶えて貰えないが指導はスパルタだった。何度も何度も怒られながら作業した。けれど、根気強く教えてくれた。
きちんと俺のやりたいことを察してくれて教えてくれる。
そして、清浄石を使った練習が認められたのは、冬に入り始め厚着しないと凍えそうになった頃だった。
自分でも驚くほど成長できたと思う。まだまだ拙さはあるが始めた頃に比べれば明らかに出来ることの幅は広くなった。
手に清浄石を持つ。冬の寒さで冷えた石は痛いぐらいだ。
妖怪にとっては毒になる石だ。魔力の活動を鈍らせる性質のある清浄石は、原石の状態ならば、並の妖怪なら触れるだけで死んでしまうほどに毒性が強い。向こうの世界では人間だけが特権的に使える石となっていて、加工して武器などに転用していた。
妖怪達の世界であった冬夜の持つ刀『陽炎』も清浄石の使われたものである。しかし、毒も使い方を変えれば薬になる。魔力の活動を鈍らせる力をある程度を抑えることが出来れば、サクヤの魔力の放出を必要最低限に調節することが出来る。
今、俺の努力を発揮する時がきた。期待もあり不安もある。清浄石は少し多めに貰っているとはいえ、数に限りがある。トライアンドエラーばかりはしていられない。
そう思うと中々実行できずにいた。削り針を強く握っては離しを繰り返していた。
「大丈夫ですよ。日向さん。」
サクヤが俺に優しく声をかけた。そして、いつもの笑顔で微笑みかけた。
「日向さんの努力をずっと見てきました。大丈夫です。日向さんなら出来ますよ。」
「・・・・・・ありがとな。」
俺は、清浄石を削り始めた。
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