286 / 352
4章
Part 285『決別』
しおりを挟む
「おい。最近、作品の出来が遅いがどうかしたのか?」
篝さんからそう言われるのを篝さんからそう言われるのは予想できていた。
呪術の練習をこっそりとやっているせいで、石像彫りに時間をかけられていないこともあって、目に見えて作業が遅れていた。
「授業のレポートに追われてて・・・・・・」とそれらしい嘘を吐いて、愛想笑いを浮かべて誤魔化した。
「あんまり、時間もない。手を抜いて出来るほど甘くないぞ」
棘のある言葉に作り笑いが固まる。言われなくても、そんなことは分かっている。
「分かってますよ。そんなこと・・・・・・俺が一番」
吐き捨てるように言った俺の言葉に篝さんは、溜息を吐いて「今日は帰れ。そんなイラついた状態で作品を作っても、ミスするだけだ。」と吐き捨てた。
その無責任な発言に笑顔で流していたストレスがピークに達した。
「そんな言い方ないでしょう! 俺だってちゃんと真面目にやってんのに!」
声を荒げて俺は、篝さんに反論していた。自分は、作業に手を抜こうなんて思ったことは、一度もない。
詰めの甘い部分があったことは事実だが、別に手を抜いたわけではない。
なのに全部、俺が悪い様にいう篝さんに溜まっていた不満が一気に爆発する。
「今までは、この時期には、一体、石像を彫ってただろう。時間をかけてるにしてもほぼ完成してる時期だ。手を抜いてるとしか思えないだろうが」
俺の叫ぶような反論に篝さんは、動じた様子もなく正論を返してくる。確かに呪術の練習をしていると知らない篝さんから見れば、明らかにペースの落ちている俺は、サボっている様に見えるだろう。
だけど、今はその正論が余計に腹立たしかった。その時の俺は、頭に血が上っていた。だから、正常な思考が出来ていなかったのかもしれない。
「俺は、こんなことがしたくて、あんたに弟子入りしたんじゃない!」
とっさの言葉にすぐに頭が冷えるのを感じる。そこまで喧嘩腰になるつもりはなかった。
すぐに謝ろうと言葉を繕おうとすると、突き放した様な冷たい声で、篝さんは俺に言った。
「なら、やめちまえ。」
その言葉を聞いて考えていた言葉が全て消し飛んだ。
「俺はお前に弟子になってくれと頼んだ覚えはない。お前が自分で選んで、自分で始めた事だ。やめるのもお前の勝手だ。お前には向いてなかった。それだけだ。やる気のない奴に教えるほど、暇じゃねぇ。」
その言葉に今まで少し考えていた疑惑が確信に変わっていく。
ああ、この人に教わるのは間違っていた。もう、この人とは一緒にはやっていけない。
俺は、地面に苛立ちを込めてポケットに入っていた練習用の小石を叩きつける。
叩きつけられた石は、辺りに散らばっていく。その一つが、篝さんの足元に転がっていく。
それを拾いあげた篝さんは、目を剥いて俺の胸ぐらを掴んだ。
壁際に追いやられ、壁に押さえつけられ息が苦しくなる。筋肉質とは言えない体のどこからそんな力が出ているのか分からない。
「お前が作ったのか? これは?」
ドスの効いた声に篝さんがさっきとは明らかに違うレベルで起こっているのだと確信した。
その手には、呪術で硬化させた石が握られていた。本当に魔の悪いと思いながら、バレてしまったなら仕方ないとやけになっている自分もいた。
「俺でも出来るんですよ。あんな石像を彫る作業なんてやり続けなくてーーーー」
引くに引けず、やけくそになりながら言いかけたその言葉を終える前に、俺の体は、左へと吹き飛ばされた。
耐えきれずに床に倒れて、頬に感じる痛みによって自分が殴られたのだと自覚する。
「道具を全部置いて、帰れ。」
篝さんは、俺に向かってそう言った。そこにどんな感情も感じられなかった。
ただ、確実に言えるのは、俺と篝さんの関係はこれで完全に切れてしまったということだ。
「・・・・・・お世話になりました。」
頬に痛みを感じながら俺はそう言って家を出ていった。
篝さんからそう言われるのを篝さんからそう言われるのは予想できていた。
呪術の練習をこっそりとやっているせいで、石像彫りに時間をかけられていないこともあって、目に見えて作業が遅れていた。
「授業のレポートに追われてて・・・・・・」とそれらしい嘘を吐いて、愛想笑いを浮かべて誤魔化した。
「あんまり、時間もない。手を抜いて出来るほど甘くないぞ」
棘のある言葉に作り笑いが固まる。言われなくても、そんなことは分かっている。
「分かってますよ。そんなこと・・・・・・俺が一番」
吐き捨てるように言った俺の言葉に篝さんは、溜息を吐いて「今日は帰れ。そんなイラついた状態で作品を作っても、ミスするだけだ。」と吐き捨てた。
その無責任な発言に笑顔で流していたストレスがピークに達した。
「そんな言い方ないでしょう! 俺だってちゃんと真面目にやってんのに!」
声を荒げて俺は、篝さんに反論していた。自分は、作業に手を抜こうなんて思ったことは、一度もない。
詰めの甘い部分があったことは事実だが、別に手を抜いたわけではない。
なのに全部、俺が悪い様にいう篝さんに溜まっていた不満が一気に爆発する。
「今までは、この時期には、一体、石像を彫ってただろう。時間をかけてるにしてもほぼ完成してる時期だ。手を抜いてるとしか思えないだろうが」
俺の叫ぶような反論に篝さんは、動じた様子もなく正論を返してくる。確かに呪術の練習をしていると知らない篝さんから見れば、明らかにペースの落ちている俺は、サボっている様に見えるだろう。
だけど、今はその正論が余計に腹立たしかった。その時の俺は、頭に血が上っていた。だから、正常な思考が出来ていなかったのかもしれない。
「俺は、こんなことがしたくて、あんたに弟子入りしたんじゃない!」
とっさの言葉にすぐに頭が冷えるのを感じる。そこまで喧嘩腰になるつもりはなかった。
すぐに謝ろうと言葉を繕おうとすると、突き放した様な冷たい声で、篝さんは俺に言った。
「なら、やめちまえ。」
その言葉を聞いて考えていた言葉が全て消し飛んだ。
「俺はお前に弟子になってくれと頼んだ覚えはない。お前が自分で選んで、自分で始めた事だ。やめるのもお前の勝手だ。お前には向いてなかった。それだけだ。やる気のない奴に教えるほど、暇じゃねぇ。」
その言葉に今まで少し考えていた疑惑が確信に変わっていく。
ああ、この人に教わるのは間違っていた。もう、この人とは一緒にはやっていけない。
俺は、地面に苛立ちを込めてポケットに入っていた練習用の小石を叩きつける。
叩きつけられた石は、辺りに散らばっていく。その一つが、篝さんの足元に転がっていく。
それを拾いあげた篝さんは、目を剥いて俺の胸ぐらを掴んだ。
壁際に追いやられ、壁に押さえつけられ息が苦しくなる。筋肉質とは言えない体のどこからそんな力が出ているのか分からない。
「お前が作ったのか? これは?」
ドスの効いた声に篝さんがさっきとは明らかに違うレベルで起こっているのだと確信した。
その手には、呪術で硬化させた石が握られていた。本当に魔の悪いと思いながら、バレてしまったなら仕方ないとやけになっている自分もいた。
「俺でも出来るんですよ。あんな石像を彫る作業なんてやり続けなくてーーーー」
引くに引けず、やけくそになりながら言いかけたその言葉を終える前に、俺の体は、左へと吹き飛ばされた。
耐えきれずに床に倒れて、頬に感じる痛みによって自分が殴られたのだと自覚する。
「道具を全部置いて、帰れ。」
篝さんは、俺に向かってそう言った。そこにどんな感情も感じられなかった。
ただ、確実に言えるのは、俺と篝さんの関係はこれで完全に切れてしまったということだ。
「・・・・・・お世話になりました。」
頬に痛みを感じながら俺はそう言って家を出ていった。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
思い出を売った女
志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。
それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。
浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。
浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。
全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。
ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。
あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。
R15は保険です
他サイトでも公開しています
表紙は写真ACより引用しました
ずっと君のこと ──妻の不倫
家紋武範
大衆娯楽
鷹也は妻の彩を愛していた。彼女と一人娘を守るために休日すら出勤して働いた。
余りにも働き過ぎたために会社より長期休暇をもらえることになり、久しぶりの家族団らんを味わおうとするが、そこは非常に味気ないものとなっていた。
しかし、奮起して彩や娘の鈴の歓心を買い、ようやくもとの居場所を確保したと思った束の間。
医師からの検査の結果が「性感染症」。
鷹也には全く身に覚えがなかった。
※1話は約1000文字と少なめです。
※111話、約10万文字で完結します。
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる