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4章
Part 258『月夜の晩に』
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サクヤとの近況報告を軽く済ませた。こちらと違いサクヤの方は、随分と技術的に進歩しているようで、近いうちに真冬さんのところに来て欲しいと言われた程である。どうやら、真冬さんにも認めてもらえた料理がいくつかあるらしい。
サクヤの方はきちんと確実に力をつけているのだ。その様子を見て少し羨ましく感じている自分がいたのは、言うまでもない。
俺が、ここ一ヶ月で身につけた事といえば、簡単な絵を石に彫るだけである。
そして、現状では、呪いのノの字も教わっていない。せめて簡単な呪いだけでも教えてもらえれば、少しは違うのだが・・・・・・
「少しだけ、日向さんの作業している姿を見せてもらえませんか?」
サクヤが期待した表情を浮かべて俺にお願いしてくる。道具は、家で練習するためにあるので、作業自体は、可能だ。
月明かりで明るくなっているので手元もそれほど暗くないし、作業は出来なくはない。
ただ、ほとんど進歩していない作業を見せるのがなんとなく恥ずかしかった。
「見せても良いけど、面白くないぞ? 地味な作業だし」
俺が遠回しにアピールするが、サクヤは気にした様子もなく「ぜひ、お願いします。」とキラキラした目で見てくるので、俺も観念して道具を取り出した。
もう、頭の中には、何を描けば良いのかは分かっている。ここ最近は、ずっと同じ絵を描き続けていたのだ。目に穴が空くほど見ている。目を閉じればクマの幻覚が浮かび上がってくるほどだ。
俺は、削り針を取り出して、石を掘り始める。意識をずっと深くに沈めていく。指先に全神経を集中させてゆっくりと彫り進めていく。
まだ少し想像よりも指の動きが違う。思ったように体が動かない。おそらく、篝さんが俺に作業をさせているのは、この微妙なズレを修正させるためなのだろう。
細かな作業になればなるほど、体の小さな動作一つ一つが意識と噛み合っていないとミスに繋がる。
それは、数をこなして慣れていくしかない。最初から楽なものではないことなど分かっていたのだ。
会話をする事もなく俺は、掘り続けた。サクヤもその様子をただ、黙って見ていた。
周囲の音が消えて意識がどんどん狭くなっていく。自分でも信じられないほどに今日は集中出来ている。
つい先ほどまで感じていた意識と指先のズレがなくなっていく。
「・・・・・・出来た。」
黙々と作業を進めていた俺は、自分でもびっくりするほどあっさりとクマを作れてしまった。
時計を確認すると二時間以上が経過していた。妹から何時に帰ってくるのかとメッセージが来ていたのに気付かなかった。ここまで深く集中出来たのは初めてだった。
サクヤの方はきちんと確実に力をつけているのだ。その様子を見て少し羨ましく感じている自分がいたのは、言うまでもない。
俺が、ここ一ヶ月で身につけた事といえば、簡単な絵を石に彫るだけである。
そして、現状では、呪いのノの字も教わっていない。せめて簡単な呪いだけでも教えてもらえれば、少しは違うのだが・・・・・・
「少しだけ、日向さんの作業している姿を見せてもらえませんか?」
サクヤが期待した表情を浮かべて俺にお願いしてくる。道具は、家で練習するためにあるので、作業自体は、可能だ。
月明かりで明るくなっているので手元もそれほど暗くないし、作業は出来なくはない。
ただ、ほとんど進歩していない作業を見せるのがなんとなく恥ずかしかった。
「見せても良いけど、面白くないぞ? 地味な作業だし」
俺が遠回しにアピールするが、サクヤは気にした様子もなく「ぜひ、お願いします。」とキラキラした目で見てくるので、俺も観念して道具を取り出した。
もう、頭の中には、何を描けば良いのかは分かっている。ここ最近は、ずっと同じ絵を描き続けていたのだ。目に穴が空くほど見ている。目を閉じればクマの幻覚が浮かび上がってくるほどだ。
俺は、削り針を取り出して、石を掘り始める。意識をずっと深くに沈めていく。指先に全神経を集中させてゆっくりと彫り進めていく。
まだ少し想像よりも指の動きが違う。思ったように体が動かない。おそらく、篝さんが俺に作業をさせているのは、この微妙なズレを修正させるためなのだろう。
細かな作業になればなるほど、体の小さな動作一つ一つが意識と噛み合っていないとミスに繋がる。
それは、数をこなして慣れていくしかない。最初から楽なものではないことなど分かっていたのだ。
会話をする事もなく俺は、掘り続けた。サクヤもその様子をただ、黙って見ていた。
周囲の音が消えて意識がどんどん狭くなっていく。自分でも信じられないほどに今日は集中出来ている。
つい先ほどまで感じていた意識と指先のズレがなくなっていく。
「・・・・・・出来た。」
黙々と作業を進めていた俺は、自分でもびっくりするほどあっさりとクマを作れてしまった。
時計を確認すると二時間以上が経過していた。妹から何時に帰ってくるのかとメッセージが来ていたのに気付かなかった。ここまで深く集中出来たのは初めてだった。
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