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4章
Part 251『繰り返し』
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それから数日間は、学校に行って帰りに篝さんの家に寄ってサクヤのところに寄ってから帰るという生活の繰り返しだった。
削り針の扱いもある程度慣れてきた事もあって、猫ぐらいならきちんと模様通りに描くことが出来る様になった。
削り針は、一見すると彫刻刀の様に削り出すイメージで扱ってしまうが、呪いの効果で切れ味が凄まじく上昇しているので、鉛筆やボールペンの様に扱う方が正解だと気付いた。
線に描かれた猫は線を均一な深さでなぞるだけなのですぐに彫れる様になった。
篝さんにそう言うと次に渡されたのは、A4の紙に書かれたデフォルメされたクマの絵と何も書かれていない石だった。
「これを見て彫れ。」と篝さんは俺に言うとすぐに自分の作業に移ってしまった。
明らかに今回も呪術ではない。落胆はあったが、それならば、すぐに達成して、呪術を教えてもらおうと思った。
けれど、事はそう簡単ではなかった。石には何も描いていないのでクマのイラストを見ながら描くことになるのだが、サイズ感が違う事もあって大きさの調整やバランスが難しく、最初は、大きく描きすぎて石に収まらなくなってしまった。
それからは、また数日、練習の日々である。彫って彫って、また彫って、百個ほど削ったのではと思うほどに毎日数十個の石を削った。
結局、呪術については、教えてもらえない。その事も若干の焦りを俺に感じさせながら、時間は過ぎて、そして、夏になった。
蝉が鳴く声を聞きながら、黙々と石を削る。篝さんの家には、クーラーなどと言う文明の利器は存在していないので、部屋の気温は、外と同じだ。時折、吹いて来る山の木陰で冷やされた空気を風が運んで来るのが唯一の救いである。
体から汗が吹き出し、服を濡らす。不快感を感じながらも集中力を切らさない様に石と向き合う。
時折、この作業に意味があるのかと不安になる。けれど、何もしない訳にはいかず、石を削る。
しかし、続けてきて随分とイメージ通りに作業出来ている。もう少しで完成する。
その瞬間、瞳に痛みが走る。
「いって・・・・・・」
額から垂れる汗が目に入って、瞳が開けられなくなる。
腕で拭って目を開けると描いていたクマの絵の一部にミスが出来ていた。思わず、利き腕を動かしてしまった。
もう少しで完成だったのに・・・・・・
込み上げて来るものを爆発させない様に俺は、道具を置いてゆっくりと息を吐いた。
やばい。全然、楽しくない。同じことの繰り返し、それは、退屈以外の何ものでもなかった。
削り針の扱いもある程度慣れてきた事もあって、猫ぐらいならきちんと模様通りに描くことが出来る様になった。
削り針は、一見すると彫刻刀の様に削り出すイメージで扱ってしまうが、呪いの効果で切れ味が凄まじく上昇しているので、鉛筆やボールペンの様に扱う方が正解だと気付いた。
線に描かれた猫は線を均一な深さでなぞるだけなのですぐに彫れる様になった。
篝さんにそう言うと次に渡されたのは、A4の紙に書かれたデフォルメされたクマの絵と何も書かれていない石だった。
「これを見て彫れ。」と篝さんは俺に言うとすぐに自分の作業に移ってしまった。
明らかに今回も呪術ではない。落胆はあったが、それならば、すぐに達成して、呪術を教えてもらおうと思った。
けれど、事はそう簡単ではなかった。石には何も描いていないのでクマのイラストを見ながら描くことになるのだが、サイズ感が違う事もあって大きさの調整やバランスが難しく、最初は、大きく描きすぎて石に収まらなくなってしまった。
それからは、また数日、練習の日々である。彫って彫って、また彫って、百個ほど削ったのではと思うほどに毎日数十個の石を削った。
結局、呪術については、教えてもらえない。その事も若干の焦りを俺に感じさせながら、時間は過ぎて、そして、夏になった。
蝉が鳴く声を聞きながら、黙々と石を削る。篝さんの家には、クーラーなどと言う文明の利器は存在していないので、部屋の気温は、外と同じだ。時折、吹いて来る山の木陰で冷やされた空気を風が運んで来るのが唯一の救いである。
体から汗が吹き出し、服を濡らす。不快感を感じながらも集中力を切らさない様に石と向き合う。
時折、この作業に意味があるのかと不安になる。けれど、何もしない訳にはいかず、石を削る。
しかし、続けてきて随分とイメージ通りに作業出来ている。もう少しで完成する。
その瞬間、瞳に痛みが走る。
「いって・・・・・・」
額から垂れる汗が目に入って、瞳が開けられなくなる。
腕で拭って目を開けると描いていたクマの絵の一部にミスが出来ていた。思わず、利き腕を動かしてしまった。
もう少しで完成だったのに・・・・・・
込み上げて来るものを爆発させない様に俺は、道具を置いてゆっくりと息を吐いた。
やばい。全然、楽しくない。同じことの繰り返し、それは、退屈以外の何ものでもなかった。
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