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3章
Part 175『勝てない戦い』
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ここまで感情が苛立つのは、久しぶりの経験だと粉雪は思う。
努力すれば、必ず勝てる。強者とはスタート位置が違うだけの事で、その距離は詰めればいい。
そんなものは、願望だと粉雪は否定する。それは、弱者が自分の敗北を認めないための詭弁だ。
確かに才能であれば、努力で補える。それは、いかに天才であっても伸び悩むものであり、そして、成長も難しくなっていくからである。
長い年月と自己研鑽を重ねれば、いつかは、天才に追いつくかもしれない。
現に一人の鬼はすでに自分よりも高みにいる事を粉雪は知っている。
愚かしいほどに真っ直ぐに努力し続けた鬼を粉雪は知っている。
才能がそれほど群を抜いていた訳ではなかった。むしろ、その逆、粉雪の目から見たマコトは、才能としては劣っていた。
けれど、自分に才能がない事を絶対に認めない頑固さと真っ直ぐで曲がらない芯の強さがあり、努力を怠らない事でマコトは鬼島でも一番の実力者になった。
マコトの実力は、粉雪も認めている。今の粉雪では勝つのは難しい相手だと思う。
けれど、マコトの強さは一番では無いと確信を持って言える。
本当の最強は、並び立つ可能性すら考慮に入れさせない相手だ。
粉雪は、天才であった。物覚えは人一倍よく、上達も速かった。戦闘に関して言えば圧倒的で昔から注目されていた。
けれど、そんなものは、ただ、上達が早いというだけだった。
粉雪の近くには常に姉がいた。鬼の中でも群を抜いて優れた身体能力を持つ姉
その存在は、常識の埒外にいた。最初は、粉雪はいつかは姉を超える存在になろうと努力していた。
けれど、すぐに気付いてしまった。身体能力に優れた姉が今よりも鍛え上げれば、自分は、いつ姉に届くのだろう。と
才能は長い時間をかければ追いつける。けれど、体の作りがそもそも違う相手はどうやって追いつくのだ。
いくら努力しても規格が違う相手に勝つイメージは持てなかった。
粉雪は、次第に努力をやめた。勝てない勝負をするほど愚かな事はない。その劣等感を粉雪は無理矢理に尊敬へと切り替えてた。
技術の追求に費やされた情熱は、昔から好きだった娯楽へと向いた。
表面上は、努力をしていた。しかし、それも、姉が家を出たのを境に辞めてしまった。
自分は、実力の差に早々に見切りをつけた。だからだろうか、目の前の明らかに身体能力に劣ると分かっていながら向かってくる二人に苛立つのは・・・・・・
勝てないなら諦めて何が悪い。私は、なりたくてこんな私になったんじゃないのに!
粉雪は、明らかに変わっていた。相手が防御に専念しているのと対照的に粉雪は完全な攻撃にしか集中しない戦いだった。
武器も持たず、ただ、相手を壊す事のみを重視した思考は、防御というものを確実に突破して二人に一撃を与える事ができる。
身体能力であれば劣っている相手、対する粉雪は傷ついてもすぐに回復する恵まれた肉体を持つ。
防御なんて必要ない。相手に攻撃されたところで、大したダメージにはならない。なら、確実にダメージを与えることに集中する。
片方さえ潰してしまえば、この程度の敵は、有象無象でしかない。
粉雪は、全ての攻撃を兄である男に集中した。妹の攻撃は全て受けきる。そうすれば、負ける事はない。
暴力的なまでに単純化した思考は、それでも、的を得ていた。
けれど、粉雪は、失念していた。この世界には、魔法の道具が存在している事を。
粉雪は、自分の体に痺れを感じた。体の動きがどんどん鈍くなっていく。
「油断 大敵 毒 有効」
ネネの声が粉雪には遠くに聞こえた。立っているのが難しいほどに痺れはどんどんと強くなっていく。
ネネの手には、黒く怪しい光を放つナイフには、赤い血が滴っていた。
「妖刀 人形遊び」
妖刀 人形遊びと名付けられたそのナイフは、相手の体を麻痺させる武器である。それは、一撃加えるごとに強くなり、どんな妖怪であっても動く事が出来なくなる。
動かなくなった敵を倒すそれがその妖刀の使い方である。
まるで、人形で遊んでついつい壊してしまう様に・・・・・・
「経験 不足 魔具 警戒 基本」
そう。真剣勝負であれば、勝ちようがない相手だろうと道具を使えば、勝てる事がある。
巨大な獣を殺すために銃を使うように
正攻法で強者に勝てる弱者などいない。
努力すれば、必ず勝てる。強者とはスタート位置が違うだけの事で、その距離は詰めればいい。
そんなものは、願望だと粉雪は否定する。それは、弱者が自分の敗北を認めないための詭弁だ。
確かに才能であれば、努力で補える。それは、いかに天才であっても伸び悩むものであり、そして、成長も難しくなっていくからである。
長い年月と自己研鑽を重ねれば、いつかは、天才に追いつくかもしれない。
現に一人の鬼はすでに自分よりも高みにいる事を粉雪は知っている。
愚かしいほどに真っ直ぐに努力し続けた鬼を粉雪は知っている。
才能がそれほど群を抜いていた訳ではなかった。むしろ、その逆、粉雪の目から見たマコトは、才能としては劣っていた。
けれど、自分に才能がない事を絶対に認めない頑固さと真っ直ぐで曲がらない芯の強さがあり、努力を怠らない事でマコトは鬼島でも一番の実力者になった。
マコトの実力は、粉雪も認めている。今の粉雪では勝つのは難しい相手だと思う。
けれど、マコトの強さは一番では無いと確信を持って言える。
本当の最強は、並び立つ可能性すら考慮に入れさせない相手だ。
粉雪は、天才であった。物覚えは人一倍よく、上達も速かった。戦闘に関して言えば圧倒的で昔から注目されていた。
けれど、そんなものは、ただ、上達が早いというだけだった。
粉雪の近くには常に姉がいた。鬼の中でも群を抜いて優れた身体能力を持つ姉
その存在は、常識の埒外にいた。最初は、粉雪はいつかは姉を超える存在になろうと努力していた。
けれど、すぐに気付いてしまった。身体能力に優れた姉が今よりも鍛え上げれば、自分は、いつ姉に届くのだろう。と
才能は長い時間をかければ追いつける。けれど、体の作りがそもそも違う相手はどうやって追いつくのだ。
いくら努力しても規格が違う相手に勝つイメージは持てなかった。
粉雪は、次第に努力をやめた。勝てない勝負をするほど愚かな事はない。その劣等感を粉雪は無理矢理に尊敬へと切り替えてた。
技術の追求に費やされた情熱は、昔から好きだった娯楽へと向いた。
表面上は、努力をしていた。しかし、それも、姉が家を出たのを境に辞めてしまった。
自分は、実力の差に早々に見切りをつけた。だからだろうか、目の前の明らかに身体能力に劣ると分かっていながら向かってくる二人に苛立つのは・・・・・・
勝てないなら諦めて何が悪い。私は、なりたくてこんな私になったんじゃないのに!
粉雪は、明らかに変わっていた。相手が防御に専念しているのと対照的に粉雪は完全な攻撃にしか集中しない戦いだった。
武器も持たず、ただ、相手を壊す事のみを重視した思考は、防御というものを確実に突破して二人に一撃を与える事ができる。
身体能力であれば劣っている相手、対する粉雪は傷ついてもすぐに回復する恵まれた肉体を持つ。
防御なんて必要ない。相手に攻撃されたところで、大したダメージにはならない。なら、確実にダメージを与えることに集中する。
片方さえ潰してしまえば、この程度の敵は、有象無象でしかない。
粉雪は、全ての攻撃を兄である男に集中した。妹の攻撃は全て受けきる。そうすれば、負ける事はない。
暴力的なまでに単純化した思考は、それでも、的を得ていた。
けれど、粉雪は、失念していた。この世界には、魔法の道具が存在している事を。
粉雪は、自分の体に痺れを感じた。体の動きがどんどん鈍くなっていく。
「油断 大敵 毒 有効」
ネネの声が粉雪には遠くに聞こえた。立っているのが難しいほどに痺れはどんどんと強くなっていく。
ネネの手には、黒く怪しい光を放つナイフには、赤い血が滴っていた。
「妖刀 人形遊び」
妖刀 人形遊びと名付けられたそのナイフは、相手の体を麻痺させる武器である。それは、一撃加えるごとに強くなり、どんな妖怪であっても動く事が出来なくなる。
動かなくなった敵を倒すそれがその妖刀の使い方である。
まるで、人形で遊んでついつい壊してしまう様に・・・・・・
「経験 不足 魔具 警戒 基本」
そう。真剣勝負であれば、勝ちようがない相手だろうと道具を使えば、勝てる事がある。
巨大な獣を殺すために銃を使うように
正攻法で強者に勝てる弱者などいない。
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