咲かない桜

御伽 白

文字の大きさ
上 下
164 / 352
3章

Part 164『鬼の武装』

しおりを挟む
 ハチから血をもらってから、俺とサクヤは、鬼島の家へと戻った。

 どうやら、準備は整ったようで行動するメンバーはすでに準備を終えていた。真冬さんは、腰に妖刀を携えてはいるが、桜模様の描かれた着物を着ており、はっきり言って防御力があるようには見えなかった。

 しかし、他の誰もこの違和感は気にした様子もない。他のメンバーに視線を移すと次に目に入ったのは粉雪だった。

 粉雪は、いつものような、萌えキャラのシャツはやめていた。しかし、かなりの軽装で、これから戦いに行くとは思えない服装だった。手には、小さな巾着袋を握っている。おそらくは、ハチたちが持っていた大容量の袋だろう。

 布地が真冬さんよりも明らかに少なく白い柔らかそうな太ももや腕が露出している。服装としては、どことなく、ドレスの様ではあるのだが、大胆すぎて明らかに普通のドレスとは違っている。どこか、アニメなどで見るような印象を受ける。

 マコトは、戦国時代を甲冑を身に纏っており、その背には身の丈ほどの大きな棍棒が立てかけてある。朱色の兜からは白いツノが伸びており、いかにもこれから戦いに行くぞというような風貌であった。

 他の男の鬼達は、大剣を持った男と何も武器を持っていない。その二人の格好は対照的であり、大剣を持った男は、全身を銀色に輝く鎧で覆い尽くしており、 もう一人は、軽く着物を羽織っているだけである。

 どちらも筋骨隆々という風貌であるがアンバランスな二人組だ。

 「あ、日向さん。 どうです? この格好! かっこいいでしょう?」

 粉雪は、俺の方に駆け寄ってくると、くるりと回って俺に意見を求めてくる。確かに似合ってはいる。ただ、胸元も開いており、かなり際どいので目のやり場に困る。

 「なんて言うかアニメのコスプレみたいだな。」

 俺がそういうと「お、分かりますか?」と嬉しそうに反応する。どうやら本気でそういう風にデザインしたらしい。

 「アニメ風にアレンジしてみました。いやぁ、可愛いでしょう?」

 「いや、可愛いとは思うけど、機能性無視だな。」

 そういうと粉雪は、得意げな表情を浮かべて「そう思うでしょう? だけど、そんなものは、真のレイヤーではないです。」と人差し指を俺に向けて小さく振った。

 「機能性もアニメの様な魔法によって防御力を上げる魔法具内蔵の服です。まあ、魔力が切れると魔石を交換しないとですが」

 「なんでもありだな。魔法って・・・・・・」

 「というか、私は基本的に治癒力が高いので防具なんていらないんですけどね。」

 そう言われて醜穢との戦いを思い出す。体を貫かれてもすぐに塞がっていた。そういう意味では確かに防具はいらないのかもしれない。

 「じゃあ、マコトとかは・・・・・・」

 俺が視線を向けるとマコトは、ぶっきらぼうに俺の疑問に答えてくれる。

 「粉雪や真冬さんは再生能力に特化した鬼だからな。俺はどちらかと言えば力が強いタイプで回復力はそれほどないからな。甲冑とかを身につけてる必要がある。」

 どうやら、鬼と言っても種類があるようである。だからこんなにも装備がバラバラなのか・・・・・・

 ここの身体能力に差がある以上は、統一の防具を用意するよりも個人にあった防具や武器を使用するのが適しているらしい。

 「そうだ。他の二人紹介してなかったですね。こっちの甲冑の鬼がキズキ、そして、こっちのラフな鬼はイズキです。」

 そう言って粉雪が紹介すると二人の鬼は軽く頭を下げた。正直、宴会の時に顔は見たが全く話していない。正直、粉雪が来ていなかったらもう一人知らない鬼が増えていたと思うとやはり来てくれてよかったと思うのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

思い出を売った女

志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。 それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。 浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。 浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。 全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。 ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。 あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。 R15は保険です 他サイトでも公開しています 表紙は写真ACより引用しました

お兄ちゃんは今日からいもうと!

沼米 さくら
ライト文芸
 大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。  親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。  トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。  身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。  果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。  強制女児女装万歳。  毎週木曜と日曜更新です。

ずっと君のこと ──妻の不倫

家紋武範
大衆娯楽
鷹也は妻の彩を愛していた。彼女と一人娘を守るために休日すら出勤して働いた。 余りにも働き過ぎたために会社より長期休暇をもらえることになり、久しぶりの家族団らんを味わおうとするが、そこは非常に味気ないものとなっていた。 しかし、奮起して彩や娘の鈴の歓心を買い、ようやくもとの居場所を確保したと思った束の間。 医師からの検査の結果が「性感染症」。 鷹也には全く身に覚えがなかった。 ※1話は約1000文字と少なめです。 ※111話、約10万文字で完結します。

【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

処理中です...