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3章
Part 143『凡人』
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「あんたら人間は、明らかに俺達よりも身体のスペックが低い。種族の壁は絶対的でそれを超える奴は大体、あんたぐらいの時には、すでに人間の中でも頭一つ抜けてるもんだ。だけど、あんたにはそれがない。」
根本的な問題として人間では、鬼には勝てないとそう言う話をされているのだ。
僕としては別に鬼に勝ちたい訳ではない。ので少し話がずれているような気がした。
「いや、俺が言いたいのは・・・・・・」
「楽に強くなれる方法だろ? そんなものはない。」
「いや、楽だなんて・・・・・・」
「違うのか? 見る限り人間の中でも普通の身体能力、昔から体を鍛えているようには見えない。体の動かし方もど素人、そんな人間が俺にそんな質問をするってのはそういう事だろう?」
突き放すように言ったマコトの表情は、どこか呆れた様子だった。
「技とか以前にお前は、体が出来ていない。そんな状態であんたは明らかに次元の違う強さの俺に強くなる方法を問う。あんたが俺に求めてる回答は、体を鍛えるなんて普通の答えなのか? そんなシンプルな答え自分でも、わかっているだろう。あんたが求めてるのは、今の自分でも使える必殺技だろ。つまり、楽に強くなる方法だ。」
「・・・・・・」
言葉もなかった。はっきりとそう言われて自分がとんでもなく安易な質問をしていたのだと悟った。
「楽に強くなる方法なんて俺は知らない。体を鍛えて、自分より強い存在の技術を真似て、何度も何度も反復練習をして、自分なりに改善していく。楽なんかじゃなかった。途方もない道のりを歩いてここまで来た。天才的な才能があればいい、恵まれた身体能力があればいい、けれど、俺は鬼としては普通の存在だった。誰もが認める秀でた才能もない。頭一つどころか体一つ分以上、飛び抜けた身体能力もない。だから、凡人でも勝てるように他人が努力するならその倍、努力してきた。」
マコトの鍛え抜かれた体がその努力の証明に他ならなかった。自分は凡人だったと言う。鬼の中ではと言う意味だろうが、それでも負けたくないと続けてきたのだという。
「あんたがもし、奇跡的な天才であるかもしれないとか恵まれた身体能力があるとか思っているのなら、はっきり言ってやる。戦闘に関してあんたに天才的な才能も恵まれた身体能力もない」
少なからず抱いていた淡い希望をマコトははっきりと否定した。まだ、やっていないだけで、もしかしたら自分には才能があるのかもしれない。そんな夢見がちな可能性をきっぱりと否定した。
「だから、あんたに教えてやれる事はない。そもそも、俺にそんな事きくよりも人間に教えてもらう方がよっぽど有意義だ。」
「そうですね・・・・・・」
「悪い。流石に言い過ぎたか・・・・・・」
少し後ろめたそうに頭を掻きながらマコトは謝罪する。
「いえ、むしろ、頑張るしかないってわかりましたから。」
「あんたは、何で強くなりたいんだ? あんたのいた所は平和だって聞いたんだが」
「ああ、俺のいる所は、ずっと治安の良い場所だよ。武器なんて持ってるだけで罪になるようなそんな国だよ。」
「そりゃあ、俺達とは相性の悪い国だな。なんせ、戦い専門の家系だからな。でも、だったら、なおさらだ。戦う技術もいらない平和な国なら何で強くなりたい?」
「妖怪が見えるようになって色々なことがあった。けど、いつも俺は傍観者で、近くにいるだけだった。救いたい子を救うのも他人任せで結局、俺はいてもいなくても変わらないギャラリーだった。」
ツララとの戦いの時もそうだ。俺はツララを助けたかった。だけど、俺には何も出来なかった。結局、彼女を助けたのは、リューやリドの二人だ。
俺は誰かに必要とされたい。ただの傍観者じゃなくて確かに必要な存在に
「だったら、あんたが目指すべきは鍛えて戦えるようになる事なのか? 適材適所、あんたに出来ることをすりゃあ良いと俺は思うけどな。」
「・・・・・・」
「ただ、筋トレは毎日、続けた方がいいと思うぞ。」
「筋肉つけた方がいいって事?」
「それもあるけど、結局は、気持ちの問題だ。手を抜いた数だけ、最後の最後で自分自身を信じられなくなる。勝負でもなんでもな。あの時もう少し頑張れたんじゃないか、自分はあの時手を抜いたから勝てなかったってな。俺は、そう言う経験が腐るほどある。だから、努力はし続けておいた方がいい。」
「わかった。ありがとう。」
「ああ、俺ももう寝る。」
俺は、マコトにお礼を言ってから部屋に戻った。自分に出来る事・・・・・・それは一体、なんだろうか。
その答えは眠りにつくまで出る事はなかった。
根本的な問題として人間では、鬼には勝てないとそう言う話をされているのだ。
僕としては別に鬼に勝ちたい訳ではない。ので少し話がずれているような気がした。
「いや、俺が言いたいのは・・・・・・」
「楽に強くなれる方法だろ? そんなものはない。」
「いや、楽だなんて・・・・・・」
「違うのか? 見る限り人間の中でも普通の身体能力、昔から体を鍛えているようには見えない。体の動かし方もど素人、そんな人間が俺にそんな質問をするってのはそういう事だろう?」
突き放すように言ったマコトの表情は、どこか呆れた様子だった。
「技とか以前にお前は、体が出来ていない。そんな状態であんたは明らかに次元の違う強さの俺に強くなる方法を問う。あんたが俺に求めてる回答は、体を鍛えるなんて普通の答えなのか? そんなシンプルな答え自分でも、わかっているだろう。あんたが求めてるのは、今の自分でも使える必殺技だろ。つまり、楽に強くなる方法だ。」
「・・・・・・」
言葉もなかった。はっきりとそう言われて自分がとんでもなく安易な質問をしていたのだと悟った。
「楽に強くなる方法なんて俺は知らない。体を鍛えて、自分より強い存在の技術を真似て、何度も何度も反復練習をして、自分なりに改善していく。楽なんかじゃなかった。途方もない道のりを歩いてここまで来た。天才的な才能があればいい、恵まれた身体能力があればいい、けれど、俺は鬼としては普通の存在だった。誰もが認める秀でた才能もない。頭一つどころか体一つ分以上、飛び抜けた身体能力もない。だから、凡人でも勝てるように他人が努力するならその倍、努力してきた。」
マコトの鍛え抜かれた体がその努力の証明に他ならなかった。自分は凡人だったと言う。鬼の中ではと言う意味だろうが、それでも負けたくないと続けてきたのだという。
「あんたがもし、奇跡的な天才であるかもしれないとか恵まれた身体能力があるとか思っているのなら、はっきり言ってやる。戦闘に関してあんたに天才的な才能も恵まれた身体能力もない」
少なからず抱いていた淡い希望をマコトははっきりと否定した。まだ、やっていないだけで、もしかしたら自分には才能があるのかもしれない。そんな夢見がちな可能性をきっぱりと否定した。
「だから、あんたに教えてやれる事はない。そもそも、俺にそんな事きくよりも人間に教えてもらう方がよっぽど有意義だ。」
「そうですね・・・・・・」
「悪い。流石に言い過ぎたか・・・・・・」
少し後ろめたそうに頭を掻きながらマコトは謝罪する。
「いえ、むしろ、頑張るしかないってわかりましたから。」
「あんたは、何で強くなりたいんだ? あんたのいた所は平和だって聞いたんだが」
「ああ、俺のいる所は、ずっと治安の良い場所だよ。武器なんて持ってるだけで罪になるようなそんな国だよ。」
「そりゃあ、俺達とは相性の悪い国だな。なんせ、戦い専門の家系だからな。でも、だったら、なおさらだ。戦う技術もいらない平和な国なら何で強くなりたい?」
「妖怪が見えるようになって色々なことがあった。けど、いつも俺は傍観者で、近くにいるだけだった。救いたい子を救うのも他人任せで結局、俺はいてもいなくても変わらないギャラリーだった。」
ツララとの戦いの時もそうだ。俺はツララを助けたかった。だけど、俺には何も出来なかった。結局、彼女を助けたのは、リューやリドの二人だ。
俺は誰かに必要とされたい。ただの傍観者じゃなくて確かに必要な存在に
「だったら、あんたが目指すべきは鍛えて戦えるようになる事なのか? 適材適所、あんたに出来ることをすりゃあ良いと俺は思うけどな。」
「・・・・・・」
「ただ、筋トレは毎日、続けた方がいいと思うぞ。」
「筋肉つけた方がいいって事?」
「それもあるけど、結局は、気持ちの問題だ。手を抜いた数だけ、最後の最後で自分自身を信じられなくなる。勝負でもなんでもな。あの時もう少し頑張れたんじゃないか、自分はあの時手を抜いたから勝てなかったってな。俺は、そう言う経験が腐るほどある。だから、努力はし続けておいた方がいい。」
「わかった。ありがとう。」
「ああ、俺ももう寝る。」
俺は、マコトにお礼を言ってから部屋に戻った。自分に出来る事・・・・・・それは一体、なんだろうか。
その答えは眠りにつくまで出る事はなかった。
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