咲かない桜

御伽 白

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3章

Part 136『本能ですからしょうがない。』

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 「ていうか、これ本当に生き物なのか?」

 雪飴を食べ終えてから俺はそう呟いた。すると頭の中で再び声が響く。(この世界にしかいない生き物ですよ。)という声が響いて驚くが、良く良く思い返してみればこれは粉雪の声である。

 周囲を見渡してみると店の立て看板の裏に真冬さんと粉雪が隠れている。

 もしかして、あの人達、尾行してたんじゃないだろうな・・・・・・

 俺に発見されたことに気づくと真冬さん達は、ゆっくりと近づいてくる。

 「どうですか? さっきの店で買った人に言葉を飛ばすことの出来る道具。これがあれば、付き合いたてのじれったいカップルもいちころです!」

 やっぱり、最初の声も粉雪だったのか。というよりも、先ほどの話が気になった。

 「やっぱり、あれ生き物なのか・・・」

 「よく分かんないんですよね。意思もないですし、ただ空中を漂っているだけの存在なので、ただ、2体以上の個体がいると勝手に繁殖するっていう不思議な生物なんですよね。あと、暑い空間でも溶けないのに体に触れると急速に溶けて周囲に冷気を出すっていう特性があるんで、食べ物として利用しているんです。雪飴って名前はその頃につけられたんですけどね。」

「だとすると、かなりコスパの良い商品だな。」

 放っておけば増える生き物でシロップをかけるだけで三百円、利益率どれぐらいなんだろうか。

 「まあ、数を売らないと大きな利益は出ないですし、繁殖するって言ってもそんなにハイペースで増えるわけではないのでそこそこ儲かるって感じですね。」

 「なるほどな・・・」

 「それに大量に飼育してもし、何かの手違いでぶちまけたら大事故です。一個だとひんやりとしてて気持ちいいんですけど数が増えると大変なことになります。一回、数十匹の雪飴をかけられて、氷漬けにされた妖怪がいました。」

 「大惨事じゃねぇか!」

 想像以上に危険な生き物だった。と言うことはあの雪飴の大量に入った水槽に入ったら即座に氷漬けになるという事だ。

 「まあ、中の妖怪は無事救出されましたから大丈夫ですよ。」

 「いや、確実に俺は大丈夫じゃないって事だよな。それ・・・」

 粉雪は、そう言われて「気をつけてくださいね」と笑った。笑えないから・・・・・・。

 「アイスになったら食べてあげますよ。お姉ちゃんと一緒に」

 「そうですね。峰さんが良いと言うなら・・・・・・」

 控えめな態度でそんな事を言う真冬さんだったが全然、可愛くない。むしろ、その目は爛々と輝いて見えた。

 「いや、あの、気をつけるんで・・・・・・普通にその獲物を狙うような眼やめてもらえませんか・・・・・・」

 そう言えば、この二人、人間や妖怪を食べるじゃないか。本当に洒落にならない。

 俺、この人達の家に泊まるんだよな・・・・・・不安しかない・・・・・・。
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