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2章
Part 86 『圧倒的優位』
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魔法を使った戦いは、アニメや漫画を見ているようだった。
浮遊した2人は、一定の距離感を保ちながらユキが何もない空間から炎を打ち出した。明らかに致死性を持った獰猛な炎は、リューを飲み込み爆煙が上がる。
「リュー!」と叫ぶとリドが「大丈夫だ。あのレベルの攻撃じゃ。ダメージすら与えれねぇよ。」と落ち着いた様子で答える。
「峰さん、大丈夫みたいです。」
サクヤが爆炎の方を指差して俺に声をかけてくる。指差した方向を見ると、飄々とした様子で笑うリューの姿があった。まるで何かに阻まれるようにリューの周りを煙が避けていく。
「バリア?」
「まあ、似たようなもんだ。魔法の道具の一つで自分の周りに見えない壁を作れる。」
「魔法の道具便利すぎじゃない?」
正直、魔法を使わなくても、その道具を使い続ければ攻撃を受けることなく戦える。それは破格すぎると思う。
「まあ、あんだけ色々と持ってれば強く見えるだろうが、魔法の道具にも一個一個に制約がある。1日に使用できる回数とか、あの量を管理するのは相当頭が回ってないと出来ないぞ。」
リューはつまるところ、全ての魔法の道具を計算しながら戦っている。大量にある魔法の道具の中から条件に合う道具を適したタイミングで瞬時に選ぶというのは確かに人間業ではない。
それからも、リューへとユキは攻撃を続ける。雷を放ったり、鋭く尖った氷の槍をぶつけたりとするが、リューはその全てを効率的に無効化していく。
攻撃を逸らし、躱し、消していく。そうして、すぐに明らかな力の差を、すぐにユキは自覚させられたのだろう。
攻めきれないと理解したユキは脱力したように力を抜いて手をプラプラと振ってみせた。
「おや、もう終わりかい? 思ったより往生際が良いんだね。」
「そうだね。正直、勝ち目がないよ。だから私の負けだよ。無駄な戦いはしないんだ。」
溜息を吐きながら空中から地面にふわりと降り立つ。
「物分かりのいい素直な子は好きだよ。」そう言いながら、リューも同じように降りてくる。
「やっと終わったのか・・・」
「良かったですね。」
俺とサクヤは、ホッと胸をなでおろす。こうして、大きな被害もなく無事に戦いが決着した。
「それにしてもリューさんだっけ? すごいね。それだけの魔法の道具を持ってるだなんて・・・」
そう言ってユキは人懐っこい笑みを浮かべてリューに近寄る。
「ああ、色々と魔法の道具はあるんだ。君と戦う事に関して真っ向勝負で勝つのは無理だよ。」
「でも、甘すぎるね。」ユキは、歪んだ笑みを浮かべて小さく呟いた。すると、突然、右手に銀色のナイフを出現させた。
誰もが反応するまもなく、そのナイフは、リューの心臓に向かって吸い込まれるようにスムーズに確かな手応えを持って突き刺さった。
「戦いはあなたの勝ちでいいよ。だけど、こんなところで終わらせられない。」
ユキのその呟きは、まるで呪詛のように俺たちの耳に響いた。
浮遊した2人は、一定の距離感を保ちながらユキが何もない空間から炎を打ち出した。明らかに致死性を持った獰猛な炎は、リューを飲み込み爆煙が上がる。
「リュー!」と叫ぶとリドが「大丈夫だ。あのレベルの攻撃じゃ。ダメージすら与えれねぇよ。」と落ち着いた様子で答える。
「峰さん、大丈夫みたいです。」
サクヤが爆炎の方を指差して俺に声をかけてくる。指差した方向を見ると、飄々とした様子で笑うリューの姿があった。まるで何かに阻まれるようにリューの周りを煙が避けていく。
「バリア?」
「まあ、似たようなもんだ。魔法の道具の一つで自分の周りに見えない壁を作れる。」
「魔法の道具便利すぎじゃない?」
正直、魔法を使わなくても、その道具を使い続ければ攻撃を受けることなく戦える。それは破格すぎると思う。
「まあ、あんだけ色々と持ってれば強く見えるだろうが、魔法の道具にも一個一個に制約がある。1日に使用できる回数とか、あの量を管理するのは相当頭が回ってないと出来ないぞ。」
リューはつまるところ、全ての魔法の道具を計算しながら戦っている。大量にある魔法の道具の中から条件に合う道具を適したタイミングで瞬時に選ぶというのは確かに人間業ではない。
それからも、リューへとユキは攻撃を続ける。雷を放ったり、鋭く尖った氷の槍をぶつけたりとするが、リューはその全てを効率的に無効化していく。
攻撃を逸らし、躱し、消していく。そうして、すぐに明らかな力の差を、すぐにユキは自覚させられたのだろう。
攻めきれないと理解したユキは脱力したように力を抜いて手をプラプラと振ってみせた。
「おや、もう終わりかい? 思ったより往生際が良いんだね。」
「そうだね。正直、勝ち目がないよ。だから私の負けだよ。無駄な戦いはしないんだ。」
溜息を吐きながら空中から地面にふわりと降り立つ。
「物分かりのいい素直な子は好きだよ。」そう言いながら、リューも同じように降りてくる。
「やっと終わったのか・・・」
「良かったですね。」
俺とサクヤは、ホッと胸をなでおろす。こうして、大きな被害もなく無事に戦いが決着した。
「それにしてもリューさんだっけ? すごいね。それだけの魔法の道具を持ってるだなんて・・・」
そう言ってユキは人懐っこい笑みを浮かべてリューに近寄る。
「ああ、色々と魔法の道具はあるんだ。君と戦う事に関して真っ向勝負で勝つのは無理だよ。」
「でも、甘すぎるね。」ユキは、歪んだ笑みを浮かべて小さく呟いた。すると、突然、右手に銀色のナイフを出現させた。
誰もが反応するまもなく、そのナイフは、リューの心臓に向かって吸い込まれるようにスムーズに確かな手応えを持って突き刺さった。
「戦いはあなたの勝ちでいいよ。だけど、こんなところで終わらせられない。」
ユキのその呟きは、まるで呪詛のように俺たちの耳に響いた。
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