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2章
Part 77 『気持ちと自覚』
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「じゃあ、私の探検は今日で終わりだ。」
凛は、両手で腕を組んで上に体を伸ばしながらそう呟いた。
魔女の一件が肩がついたら、凛がこの街を探索する必要はなくなる。だから、もう必要がないのだ。
「俺がいうのもおかしいですけど、本当にもう良いんですか?」
「うん。本当は、何も変わらない事はわかってたんだ。だけど、もしかしたらって希望が捨てられなかった。けど、日向が今の私を好きだって言ってくれたから、今までの失敗にも意味があったんだって思えた。だから、もういい。一緒に探検出来ないのは、ちょっと名残惜しいけど。」
そう言って笑う凛の表情は、今までの心のモヤが晴れたようでスッキリとしていていつも以上に魅力的に見えた。
「今度、遊びに行きましょう。散歩みたいな探検とかじゃなくて普通に」
「本当? 約束だよ?」
そう言ってくる凛はどこか子供っぽくて普段の印象とは違っていて、少し面白い。
「はい。もちろん」
「じゃあ、空いて日今度連絡する。そう言えば、今も妖怪がいるの? 魔女の人も猫って言ってたし」
柏木さんは、キョロキョロと辺りを見渡しているが、普通の人には、妖怪の類は見えないので見ることも聞くことも出来ない。
「ええ、クロっていう猫の妖怪がいるんですけどね。他にも妖怪の知り合いが何人かいて・・・」
「へぇ、いつも一緒にいるの?」
「いや、いつもじゃないですけど、結構な頻度でサクヤっていう桜の妖精の女の子と一緒にいることが多いですかね・・・」
最近は、顔も見れていないので最近は一緒に入れていないのだが・・・
「ただ、最近、なんか会いに行っても不在のことが多くて中々会えてないんですけどね・・・」
「それ、避けられてるんじゃないの?」
考えたくない事を本当に直球で伝えてくる凛に面食らってしまった。
「や、やっぱりそう思うかな?」
薄々そうなんじゃないかなとは思っていたのだが、いざ他の人から言われると心にくるものがある。
まっすぐな真実は時に人の心を抉るものだ。本人が自覚している場合は特に・・・
「何かしたの?」
「何かしたってほどのことは何もしてない・・・と思う。凛と最初に会った時に一緒に居たんだけど・・・それからパッタリと音信不通で・・・」
「それは、もう、無理だと思う。昔、荒れてた頃に仲良くしてくれた子が急に連絡が途絶えて話しかけたらすごく他人行儀になってた事がある。それ以来その子とは話もしてない。」
そう語る凛の瞳からどんどん輝きがなく濁っていく。完全に触れてはいけない部分だったのかもしれない・・・
「でも、一応、共通の目的があるんだよ。だから、そのために行動してるからさ・・・。」
だが、実際のところ、すでに妖怪が見えるという事を受け入れてしまっている自分もいるので、実質的にサクヤのために行動していると言っても過言じゃない。
「桜の精霊の事好きなの?」
「そりゃあ、好きだよ。純粋でちょっと抜けてるところはあるけど、人の気持ちを考えれる奴だと思う。めっちゃ大量に飯を食べるけど・・・」
「そうじゃなくて、恋愛対象としてってこと」
「恋愛対象としてって・・・」
「? 変なことじゃないと思うけど、話せるし触れるなら。人の形してないとかなら無理かもしれないけど」
「いや、それは普通に女の子なんだけど・・・」
恋愛対象と言われた時に内心ドキリとした。考えた事がない訳ではなかった。サクヤは自分にとって世界を変えてくれた存在だ。サクヤの存在がなければ、今の俺は居ないと言ってもいいほどだ。
サクヤの存在があったからこそ、俺は、ウチガネさんの最期を見届ける事ができた。
ただ、やっぱり、サクヤは妖怪で俺は人間だという事で一線を引いて居た自分がいたのだ。しかし、今日見た夢は、間違いなく俺に一つの価値観を叩き込んだ。人間と妖怪の結ばれる可能性を。
完璧で幸せな結末だったとは言えない。だけど、マトとマヨリの思い出は本当に輝いて見えた。
あれをただの孤独な思い出というだけで終わらせることは出来ない。
「確かに気にはなってるのかもしれない・・・」
「そっか。なら、後は日向がどうしたいかだと思う。」
凛さんは、俺の方を見て「頑張れ。振られたら慰めてあげるよ。親友だから」と笑った。
「それじゃあ、そろそろ私は帰る。また、明日、学校で・・・」
俺が何かを言う前に早々に話を切り上げて凛は、俺に背を向けて歩き出した。
俺は慌てて彼女を呼ぶが何故か止まる気配もなくそのまま見えなくなってしまった。
「凛・・・・・・駅反対・・・だよ・・・」
・・・相変わらずだった。
凛は、両手で腕を組んで上に体を伸ばしながらそう呟いた。
魔女の一件が肩がついたら、凛がこの街を探索する必要はなくなる。だから、もう必要がないのだ。
「俺がいうのもおかしいですけど、本当にもう良いんですか?」
「うん。本当は、何も変わらない事はわかってたんだ。だけど、もしかしたらって希望が捨てられなかった。けど、日向が今の私を好きだって言ってくれたから、今までの失敗にも意味があったんだって思えた。だから、もういい。一緒に探検出来ないのは、ちょっと名残惜しいけど。」
そう言って笑う凛の表情は、今までの心のモヤが晴れたようでスッキリとしていていつも以上に魅力的に見えた。
「今度、遊びに行きましょう。散歩みたいな探検とかじゃなくて普通に」
「本当? 約束だよ?」
そう言ってくる凛はどこか子供っぽくて普段の印象とは違っていて、少し面白い。
「はい。もちろん」
「じゃあ、空いて日今度連絡する。そう言えば、今も妖怪がいるの? 魔女の人も猫って言ってたし」
柏木さんは、キョロキョロと辺りを見渡しているが、普通の人には、妖怪の類は見えないので見ることも聞くことも出来ない。
「ええ、クロっていう猫の妖怪がいるんですけどね。他にも妖怪の知り合いが何人かいて・・・」
「へぇ、いつも一緒にいるの?」
「いや、いつもじゃないですけど、結構な頻度でサクヤっていう桜の妖精の女の子と一緒にいることが多いですかね・・・」
最近は、顔も見れていないので最近は一緒に入れていないのだが・・・
「ただ、最近、なんか会いに行っても不在のことが多くて中々会えてないんですけどね・・・」
「それ、避けられてるんじゃないの?」
考えたくない事を本当に直球で伝えてくる凛に面食らってしまった。
「や、やっぱりそう思うかな?」
薄々そうなんじゃないかなとは思っていたのだが、いざ他の人から言われると心にくるものがある。
まっすぐな真実は時に人の心を抉るものだ。本人が自覚している場合は特に・・・
「何かしたの?」
「何かしたってほどのことは何もしてない・・・と思う。凛と最初に会った時に一緒に居たんだけど・・・それからパッタリと音信不通で・・・」
「それは、もう、無理だと思う。昔、荒れてた頃に仲良くしてくれた子が急に連絡が途絶えて話しかけたらすごく他人行儀になってた事がある。それ以来その子とは話もしてない。」
そう語る凛の瞳からどんどん輝きがなく濁っていく。完全に触れてはいけない部分だったのかもしれない・・・
「でも、一応、共通の目的があるんだよ。だから、そのために行動してるからさ・・・。」
だが、実際のところ、すでに妖怪が見えるという事を受け入れてしまっている自分もいるので、実質的にサクヤのために行動していると言っても過言じゃない。
「桜の精霊の事好きなの?」
「そりゃあ、好きだよ。純粋でちょっと抜けてるところはあるけど、人の気持ちを考えれる奴だと思う。めっちゃ大量に飯を食べるけど・・・」
「そうじゃなくて、恋愛対象としてってこと」
「恋愛対象としてって・・・」
「? 変なことじゃないと思うけど、話せるし触れるなら。人の形してないとかなら無理かもしれないけど」
「いや、それは普通に女の子なんだけど・・・」
恋愛対象と言われた時に内心ドキリとした。考えた事がない訳ではなかった。サクヤは自分にとって世界を変えてくれた存在だ。サクヤの存在がなければ、今の俺は居ないと言ってもいいほどだ。
サクヤの存在があったからこそ、俺は、ウチガネさんの最期を見届ける事ができた。
ただ、やっぱり、サクヤは妖怪で俺は人間だという事で一線を引いて居た自分がいたのだ。しかし、今日見た夢は、間違いなく俺に一つの価値観を叩き込んだ。人間と妖怪の結ばれる可能性を。
完璧で幸せな結末だったとは言えない。だけど、マトとマヨリの思い出は本当に輝いて見えた。
あれをただの孤独な思い出というだけで終わらせることは出来ない。
「確かに気にはなってるのかもしれない・・・」
「そっか。なら、後は日向がどうしたいかだと思う。」
凛さんは、俺の方を見て「頑張れ。振られたら慰めてあげるよ。親友だから」と笑った。
「それじゃあ、そろそろ私は帰る。また、明日、学校で・・・」
俺が何かを言う前に早々に話を切り上げて凛は、俺に背を向けて歩き出した。
俺は慌てて彼女を呼ぶが何故か止まる気配もなくそのまま見えなくなってしまった。
「凛・・・・・・駅反対・・・だよ・・・」
・・・相変わらずだった。
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