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闘争ギルドにお邪魔します
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キリシャの話の通りに移動してみれば、外壁で囲われた建物があります。
他のレンガ造りの建物たちの中でも目立つ大きな建物。
人の身長の倍ぐらいはありそうな頑丈そうな鉄製の扉。そして、その上には、槍と熊のシンボルの描かれた紋章が壁に取り付けられています。
キリシャは闘争ギルドと言っていましたか。名前からして物騒な組織であるような気がしますが、というか、多分私の予想通りでしょうね。
遠目から見てみても、筋骨隆々の男や女が開かれた扉の向こうに見えます。
建物の中にいる人たちは、ほとんどの人々が武装していて、見るからに強そうな見た目をしています。
要するに冒険者ギルド的な組織なんでしょうか。本当にここに来れば素材が手に入るのかやや疑問です。
というか、ただのメイド服でこんな殺伐とした空間に入りたくないです。
「もし、嘘だったらイーリスのお茶を飲ませます」
いけ好かないスーツの男に対して、そんな呟きをしながら、私は、正門から建物に向かって入りました。
建物は私がイメージしていたよりも広々としていて、学校の体育館を思わせる大きさです。
入口の手前は吹き抜けになっていて、天井が高いので、余計にそう感じます。
中は、いくつものテーブルと椅子が置かれており、食事を食べている人々がいます。端には、厨房が見えており、給仕の人もいます。
部屋の中に香ばしい肉の焼ける匂いがします。
壁には、高級そうな武器や、魔獣の剝製などが飾られていて、やや物々しさを感じさせます。
部屋の奥には、手前と奥を区切るように少し背の高い机があり、その向こうで、受付嬢が数名立っています。
そして、受付嬢たちの前に並んでいる人々。それらの対応をしていている受付嬢さんたちはかなり忙しそうです。
想像以上に人が多いですね。100人以上いるんじゃないでしょうか。
建物の中に入ると周囲の視線が私に集中します。
「おい。見ろよ。すげぇ、上玉」
「こんなところにメイドが何の用だ?」
「誰か声をかけに行かないか?」
「いや、無理だろ。あんな美人。俺らじゃ相手にならないって」
「うわぁ、あんな子のご主人様になりてぇよ」
「むしろ、下僕になりたい」
「黙れ」
男の人達の下世話な会話が聞こえてきます。女性陣も私の存在は気になるようで見ていますが、私の姿を見て盛り上がっている男衆に冷たい視線を送っています。
声をかけられるかと思いましたけど、どうやら様子を見る方向でいるみたいですね。ありがたいことです。
とりあえず、受付に行けばいいんでしょうかね。列に並んだ方が良いんですよね。
列の後ろに並ぶと前にいる男がこちらを見ています。あんまりにもジロジロ見られると、居心地悪いですね。
男は、長剣を背負っていて剣士っぽい恰好をした男です。筋肉質な見た目から戦っているのだろうと思わせます。
もう、いっそのこと話を振ってみましょうかね。このまま、無言で見られるのも気が散ります。
「何か?」
私が声をかけるとは思わなかったのか、男は、少し驚いた表情を浮かべます。
「いや、この辺りでは見かけない顔だなと思ってな」
「ええ、買い出しにたまたま訪れただけですからね」
「買い出し? ああ、あんた魔獣の素材を買いに来たのか?」
「はい。その辺で知り合った変な男の人に、ここに行けば、魔物の素材を買えると聞いたんです」
「あんた、見ず知らずの変な男の話は、素直に信じすぎない方が良いぞ」
「・・・・・・確かに」
イーリスの知り合いということで、特に深くは考えていませんでしたけど、よくよく考えたら、私の危機感低すぎですか?
警戒しているとか言いながらも、本質的なところで、危険性を意識出来ていませんね。
平和ボケしてるというか、なんというか。
「まあ、それは良いです。とりあえず、魔物の販売はここであってるんですよね?」
「それはそうだけど」
「与えられた情報の真偽を判断出来ているので大丈夫です」
そう。与えられた情報をただ信じているわけではなく、精査したうえで考えているので、何も考えず、ここにいるわけではありません。
「まあ、あんたがそれで良いなら良いけどさ」
「ところで、あなたも魔物の素材を買いに来たんですか?」
「俺が魔物の素材が必要そうに見えるか?」
「いえ、どちらかというとお金が欲しそうに見えます」
「そうそう。貧乏そうな見た目してるしな・・・・・・ってうるせぇよ」
おお、見ず知らずなのにノリツッコミが出来るなんて、異世界、レベル高いですね。
「まあ、換金に来たのはその通りだから間違ってねぇんだけど。あんたが買い手なら、俺らは売り手だ。魔物を狩って素材を換金に来てる」
「お強いんですね。戦闘系の固有スキルなんですか?」
「まあ、大したスキルじゃないけどな。刃物の刀身を伸ばす『間合い崩し』ってシンプルなスキルだし」
確かに派手なスキルではないですね。でも、対人戦では強そうですけど。
いえ、戦闘中に刀身をいじれるなら、振りかぶりの瞬間に刀身を伸ばして攻撃を無理やり当てることも出来ますし。
「まあ、馬鹿と鋏は使いようですね」
「いや、俺が言うのはともかく、あんたが言うな」
あ、思わず言葉に出ていました。ごめんなさい。
他のレンガ造りの建物たちの中でも目立つ大きな建物。
人の身長の倍ぐらいはありそうな頑丈そうな鉄製の扉。そして、その上には、槍と熊のシンボルの描かれた紋章が壁に取り付けられています。
キリシャは闘争ギルドと言っていましたか。名前からして物騒な組織であるような気がしますが、というか、多分私の予想通りでしょうね。
遠目から見てみても、筋骨隆々の男や女が開かれた扉の向こうに見えます。
建物の中にいる人たちは、ほとんどの人々が武装していて、見るからに強そうな見た目をしています。
要するに冒険者ギルド的な組織なんでしょうか。本当にここに来れば素材が手に入るのかやや疑問です。
というか、ただのメイド服でこんな殺伐とした空間に入りたくないです。
「もし、嘘だったらイーリスのお茶を飲ませます」
いけ好かないスーツの男に対して、そんな呟きをしながら、私は、正門から建物に向かって入りました。
建物は私がイメージしていたよりも広々としていて、学校の体育館を思わせる大きさです。
入口の手前は吹き抜けになっていて、天井が高いので、余計にそう感じます。
中は、いくつものテーブルと椅子が置かれており、食事を食べている人々がいます。端には、厨房が見えており、給仕の人もいます。
部屋の中に香ばしい肉の焼ける匂いがします。
壁には、高級そうな武器や、魔獣の剝製などが飾られていて、やや物々しさを感じさせます。
部屋の奥には、手前と奥を区切るように少し背の高い机があり、その向こうで、受付嬢が数名立っています。
そして、受付嬢たちの前に並んでいる人々。それらの対応をしていている受付嬢さんたちはかなり忙しそうです。
想像以上に人が多いですね。100人以上いるんじゃないでしょうか。
建物の中に入ると周囲の視線が私に集中します。
「おい。見ろよ。すげぇ、上玉」
「こんなところにメイドが何の用だ?」
「誰か声をかけに行かないか?」
「いや、無理だろ。あんな美人。俺らじゃ相手にならないって」
「うわぁ、あんな子のご主人様になりてぇよ」
「むしろ、下僕になりたい」
「黙れ」
男の人達の下世話な会話が聞こえてきます。女性陣も私の存在は気になるようで見ていますが、私の姿を見て盛り上がっている男衆に冷たい視線を送っています。
声をかけられるかと思いましたけど、どうやら様子を見る方向でいるみたいですね。ありがたいことです。
とりあえず、受付に行けばいいんでしょうかね。列に並んだ方が良いんですよね。
列の後ろに並ぶと前にいる男がこちらを見ています。あんまりにもジロジロ見られると、居心地悪いですね。
男は、長剣を背負っていて剣士っぽい恰好をした男です。筋肉質な見た目から戦っているのだろうと思わせます。
もう、いっそのこと話を振ってみましょうかね。このまま、無言で見られるのも気が散ります。
「何か?」
私が声をかけるとは思わなかったのか、男は、少し驚いた表情を浮かべます。
「いや、この辺りでは見かけない顔だなと思ってな」
「ええ、買い出しにたまたま訪れただけですからね」
「買い出し? ああ、あんた魔獣の素材を買いに来たのか?」
「はい。その辺で知り合った変な男の人に、ここに行けば、魔物の素材を買えると聞いたんです」
「あんた、見ず知らずの変な男の話は、素直に信じすぎない方が良いぞ」
「・・・・・・確かに」
イーリスの知り合いということで、特に深くは考えていませんでしたけど、よくよく考えたら、私の危機感低すぎですか?
警戒しているとか言いながらも、本質的なところで、危険性を意識出来ていませんね。
平和ボケしてるというか、なんというか。
「まあ、それは良いです。とりあえず、魔物の販売はここであってるんですよね?」
「それはそうだけど」
「与えられた情報の真偽を判断出来ているので大丈夫です」
そう。与えられた情報をただ信じているわけではなく、精査したうえで考えているので、何も考えず、ここにいるわけではありません。
「まあ、あんたがそれで良いなら良いけどさ」
「ところで、あなたも魔物の素材を買いに来たんですか?」
「俺が魔物の素材が必要そうに見えるか?」
「いえ、どちらかというとお金が欲しそうに見えます」
「そうそう。貧乏そうな見た目してるしな・・・・・・ってうるせぇよ」
おお、見ず知らずなのにノリツッコミが出来るなんて、異世界、レベル高いですね。
「まあ、換金に来たのはその通りだから間違ってねぇんだけど。あんたが買い手なら、俺らは売り手だ。魔物を狩って素材を換金に来てる」
「お強いんですね。戦闘系の固有スキルなんですか?」
「まあ、大したスキルじゃないけどな。刃物の刀身を伸ばす『間合い崩し』ってシンプルなスキルだし」
確かに派手なスキルではないですね。でも、対人戦では強そうですけど。
いえ、戦闘中に刀身をいじれるなら、振りかぶりの瞬間に刀身を伸ばして攻撃を無理やり当てることも出来ますし。
「まあ、馬鹿と鋏は使いようですね」
「いや、俺が言うのはともかく、あんたが言うな」
あ、思わず言葉に出ていました。ごめんなさい。
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