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魔女とのティータイム
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「ふぅ、やろうと思えば意外と作業が出来るものですね」
掃除に取り掛かって、すでに数時間が経過しました。掃除道具とスキルを駆使しながら取り組むと面白いぐらいに部屋が奇麗になっていきます。
掃除をしている所としていない場所の差が新築と廃墟ぐらい違います。これだけ奇麗に汚れが落ちると掃除も楽しくなってきますね。
自分のお部屋と食堂、調理場、お風呂、トイレ、そして、そこにいくまでの廊下。予定していた主要設備が、全て奇麗になりました。
まあ、不思議なことはいっぱいありましたけど、トイレが何故か使われてなかったり。魔女はトイレしない。とかあるんですかね。
「この体、とても便利ですね。」
掃除をしていて気づいたことも多くあります。まず、一番にこの体についてです。
この体、魔力を消費しながら活動していますが、それ以外の生理的欲求が存在しません。眠くもならず、お腹も減らない。勿論、トイレにも行く必要がありません。
考えてみれば、私の本体は、ホムンクルス・コアの小さな球体部分で、人の体は人形ですから生理欲求がないのは当然です。
そして、さらに私の体は疲れを感じることがありません。体を動かし続けていても、それによって活動が出来なくなることはありません。
つまり、労働力として最高の存在なのです。その気になれば、永遠に働き続けられる体です。
でも、雇用条件に関して、私が疲れたら休憩していいよ。と言われましたけど、あれって、私が疲れないから言われた条件だったんじゃないんでしょうか。
だとしたら、とんだ悪徳雇用主ですけど。
疲労感を感じないというのは、とんでもないアドバンテージがあります。生理欲求に思考を乱されることがないので、作業効率が常に一定です。
単純作業も飽きることはあってもしんどくなることはない。ブラック企業で働くための最良の体です。
まあ、そのおかげで、掃除は、驚くべき速度で進んでいるんですけど。
そして、別の気づきですが、この家は人里離れた山の中に存在しているということです。
窓の向こうには、樹齢数百年、あるいは、数千年と思われるような木々が生い茂っています。どこの窓を見ても景色がそれほど変わらないので、木々に囲まれているようです。
見渡す限りの大自然です。その中で、この家の周囲だけ、まるでくり抜いたみたいに整地されています。どうやって、この家建てたんでしょうかね。
「フレン。お疲れ様」
私が不思議そうに外の景色を眺めているとイーリスが声をかけてきます。
「ああ、ご主人様。一通り奇麗になりましたよ」
「うん。研究室を出てびっくりした。この家を建てた時よりも奇麗に感じるぐらい」
「この家は、ご主人様が建てたんですか?」
「うん。魔法で建てた。」
改めて言われると便利な能力ですね。魔法。レベルが下がるという条件があるとはいえ、簡単に家を建てることが出来るなんて。
「でも、どうして、こんな山奥に建てたんですか? 材料とか持ってくるの大変そうですけど」
「そんなことない。木はいっぱいあるから、材料には困らない」
「ああ、なるほど」
山奥に物資を運んだのではなく、整地した木々を使って家を建てたということですか。目から鱗です。いえ、考えてみれば、そちらの方が明らかに効率的です。
こんな山奥にどうやって物資を運んだのか不思議に思っていたのですが、1つの疑問があっさりと解決してしまいました。
「ご主人様は、これからどちらに?」
「作業もひと段落着いたから寝ようかと思って。フレンも好きなタイミングで休んでて良い」
「この体、疲れないので、疲れるまで永遠に働き続けるという契約かと思いました」
「そんな非人道的なことはしない。いつ休憩をしてくれてもいい」
私の言葉にイーリスは少しムッとした表情を浮かべた。彼女としては、そう思われていることが心外だったようです。
そうですよね。イーリスとは、ほとんど話をしていませんが、それほど非情な人という印象は感じません。
雇用条件が緩すぎて、私が、下手な勘繰りをしているだけですよね。世の中には、こんな素晴らしい職場があるんですねぇ。
「すいません」
「フレンも休む?」
「そうですね。一区切りついたので、少し休憩にしようかと思います」
「お茶でも飲む?」
「え、この屋敷にお茶なんてものがあるんですか?」
調理場、空っぽでしたけど。明らかに食事を用意する場所じゃない。
「うん。研究室にある」
「調理場は使わないんですか?」
「わざわざ、あんな遠いところまで行くのが面倒くさいから、研究室に置いてる」
「そんなに離れてませんけどね」
研究室から調理場までは、精々、数メートルなのですが・・・・・・。この方、本当になんでこんな豪邸を建てたんですか?
「というか、ご主人様、これから寝るんじゃ?」
「・・・・・・別にいい。お茶を飲んだら寝るから」
「そうですか? それなら良いんですけど」
研究室に来るとイーリスは部屋の奥から、袋と小鍋を取り出します。イーリスは、袋から茶葉を取り出して鍋に入れます。
「『固定』、『水』、『火』」
すると突然、イーリスの周りに魔法陣のようなものが空中に展開され、鍋が空中に止まります。そして、魔法陣から水が出て、小さな鍋に注がれていき、その鍋の下から小さな炎が出現しました。
「それって魔法ですか?」
「これは『魔術』。呪文を詠唱してた」
「え、あの火とか、水とか言ってたのって呪文なんですか?」
「魔術は、練習すれば簡略化出来る。複雑なものは少し詠唱する。鍋を空中に固定して、水を入れて、火で鍋を温めるって3個の魔術を使っただけだから」
魔術ってそんな簡単に出来るものなんですね。
「お茶が出来た」
イーリスはその辺りに置いてあったコップにお茶を注いで、私に手渡した。
「ありがとうございます」
イーリスからのお茶に口を付ける。
「・・・・・・にがい」
口にした瞬間、独特な苦みが口の中に広がっていきます。飲み続けるのには勇気がいる味です。
「あの、これ、何のお茶なんですか? とんでもなく苦いんですけど」
「薬草。飲むと体に良い」
「イーリスは、苦くないんですか?」
平然とした顔で自分のお茶を飲み続けるイーリスに私は少し違和感を感じながら、質問する。
「にがい。吐きそう。もう飲みたくない」
「なんで、私達、罰ゲームみたいなことしてるんですか!?」
この魔女さん、やっぱり、かなりの変わり者です。
掃除に取り掛かって、すでに数時間が経過しました。掃除道具とスキルを駆使しながら取り組むと面白いぐらいに部屋が奇麗になっていきます。
掃除をしている所としていない場所の差が新築と廃墟ぐらい違います。これだけ奇麗に汚れが落ちると掃除も楽しくなってきますね。
自分のお部屋と食堂、調理場、お風呂、トイレ、そして、そこにいくまでの廊下。予定していた主要設備が、全て奇麗になりました。
まあ、不思議なことはいっぱいありましたけど、トイレが何故か使われてなかったり。魔女はトイレしない。とかあるんですかね。
「この体、とても便利ですね。」
掃除をしていて気づいたことも多くあります。まず、一番にこの体についてです。
この体、魔力を消費しながら活動していますが、それ以外の生理的欲求が存在しません。眠くもならず、お腹も減らない。勿論、トイレにも行く必要がありません。
考えてみれば、私の本体は、ホムンクルス・コアの小さな球体部分で、人の体は人形ですから生理欲求がないのは当然です。
そして、さらに私の体は疲れを感じることがありません。体を動かし続けていても、それによって活動が出来なくなることはありません。
つまり、労働力として最高の存在なのです。その気になれば、永遠に働き続けられる体です。
でも、雇用条件に関して、私が疲れたら休憩していいよ。と言われましたけど、あれって、私が疲れないから言われた条件だったんじゃないんでしょうか。
だとしたら、とんだ悪徳雇用主ですけど。
疲労感を感じないというのは、とんでもないアドバンテージがあります。生理欲求に思考を乱されることがないので、作業効率が常に一定です。
単純作業も飽きることはあってもしんどくなることはない。ブラック企業で働くための最良の体です。
まあ、そのおかげで、掃除は、驚くべき速度で進んでいるんですけど。
そして、別の気づきですが、この家は人里離れた山の中に存在しているということです。
窓の向こうには、樹齢数百年、あるいは、数千年と思われるような木々が生い茂っています。どこの窓を見ても景色がそれほど変わらないので、木々に囲まれているようです。
見渡す限りの大自然です。その中で、この家の周囲だけ、まるでくり抜いたみたいに整地されています。どうやって、この家建てたんでしょうかね。
「フレン。お疲れ様」
私が不思議そうに外の景色を眺めているとイーリスが声をかけてきます。
「ああ、ご主人様。一通り奇麗になりましたよ」
「うん。研究室を出てびっくりした。この家を建てた時よりも奇麗に感じるぐらい」
「この家は、ご主人様が建てたんですか?」
「うん。魔法で建てた。」
改めて言われると便利な能力ですね。魔法。レベルが下がるという条件があるとはいえ、簡単に家を建てることが出来るなんて。
「でも、どうして、こんな山奥に建てたんですか? 材料とか持ってくるの大変そうですけど」
「そんなことない。木はいっぱいあるから、材料には困らない」
「ああ、なるほど」
山奥に物資を運んだのではなく、整地した木々を使って家を建てたということですか。目から鱗です。いえ、考えてみれば、そちらの方が明らかに効率的です。
こんな山奥にどうやって物資を運んだのか不思議に思っていたのですが、1つの疑問があっさりと解決してしまいました。
「ご主人様は、これからどちらに?」
「作業もひと段落着いたから寝ようかと思って。フレンも好きなタイミングで休んでて良い」
「この体、疲れないので、疲れるまで永遠に働き続けるという契約かと思いました」
「そんな非人道的なことはしない。いつ休憩をしてくれてもいい」
私の言葉にイーリスは少しムッとした表情を浮かべた。彼女としては、そう思われていることが心外だったようです。
そうですよね。イーリスとは、ほとんど話をしていませんが、それほど非情な人という印象は感じません。
雇用条件が緩すぎて、私が、下手な勘繰りをしているだけですよね。世の中には、こんな素晴らしい職場があるんですねぇ。
「すいません」
「フレンも休む?」
「そうですね。一区切りついたので、少し休憩にしようかと思います」
「お茶でも飲む?」
「え、この屋敷にお茶なんてものがあるんですか?」
調理場、空っぽでしたけど。明らかに食事を用意する場所じゃない。
「うん。研究室にある」
「調理場は使わないんですか?」
「わざわざ、あんな遠いところまで行くのが面倒くさいから、研究室に置いてる」
「そんなに離れてませんけどね」
研究室から調理場までは、精々、数メートルなのですが・・・・・・。この方、本当になんでこんな豪邸を建てたんですか?
「というか、ご主人様、これから寝るんじゃ?」
「・・・・・・別にいい。お茶を飲んだら寝るから」
「そうですか? それなら良いんですけど」
研究室に来るとイーリスは部屋の奥から、袋と小鍋を取り出します。イーリスは、袋から茶葉を取り出して鍋に入れます。
「『固定』、『水』、『火』」
すると突然、イーリスの周りに魔法陣のようなものが空中に展開され、鍋が空中に止まります。そして、魔法陣から水が出て、小さな鍋に注がれていき、その鍋の下から小さな炎が出現しました。
「それって魔法ですか?」
「これは『魔術』。呪文を詠唱してた」
「え、あの火とか、水とか言ってたのって呪文なんですか?」
「魔術は、練習すれば簡略化出来る。複雑なものは少し詠唱する。鍋を空中に固定して、水を入れて、火で鍋を温めるって3個の魔術を使っただけだから」
魔術ってそんな簡単に出来るものなんですね。
「お茶が出来た」
イーリスはその辺りに置いてあったコップにお茶を注いで、私に手渡した。
「ありがとうございます」
イーリスからのお茶に口を付ける。
「・・・・・・にがい」
口にした瞬間、独特な苦みが口の中に広がっていきます。飲み続けるのには勇気がいる味です。
「あの、これ、何のお茶なんですか? とんでもなく苦いんですけど」
「薬草。飲むと体に良い」
「イーリスは、苦くないんですか?」
平然とした顔で自分のお茶を飲み続けるイーリスに私は少し違和感を感じながら、質問する。
「にがい。吐きそう。もう飲みたくない」
「なんで、私達、罰ゲームみたいなことしてるんですか!?」
この魔女さん、やっぱり、かなりの変わり者です。
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