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プリンと懸念
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相談の結果、明日に真斗宅を訪問し、説得する。その結果によって今後の方針を決めることになった。上手く説得できるのであれば良し。説得出来なければ、やや強行手段を取るのも検討しなければいけない。
最悪、無理矢理に縁を切れば、縁結びの効果で悠美に関する記憶が消滅するため、縁結びに関する記憶も消えてしまうだろう。
「つまり、目的さえ達成出来すれば、多少の無茶は許されるわけだ」
非常に嬉しそうにプリンを食べる玲子の質問に誠は頷いた。
「まあ、流石に無理矢理、押し入り強盗みたいなことをすれば問題にはなると思うけど」
誠も何気なく机の上に置かれたプリンを一つ取ろうとすると取る前に玲子にプリンを奪われる。
「私の」
「・・・・・・はい」
玲子の三つ買ってこいは、本当に三つ食べるつもりだったらしい。
もしかしたら、一緒に食べるつもりとか、淡い期待を誠は抱いていたが、玲子にそんなつもりは一切ないらしい。
ため息を吐いて誠は先ほどいれたコーヒーに口を付ける。
コーヒーの香りの鼻を通り、少しだけ気持ちが落ち着いてくる。
「出来れば、強硬手段は取りたくない。荒事は苦手だし」
誠は、そう言いながら玲子の右手に視線を向ける。
誠は自分が荒事に向いている人物であると微塵も思っていない。そもそも、誠は体を鍛えていないため、細身であ
る。自己評価としても、暴力的な解決手段が得意な訳ではないし、好まない。
結果的に荒事を処理するのは、玲子になる。
玲子も白すぎるほどに真っ白な肌ですらりとしたスタイルをしている。誠に比べれば、多少は力はあるが、一般女性の筋力を越える訳ではない。
玲子に荒事の解決を任せるのは、偏に幻想遺物の存在である。玲子の右手の義手にも、縁結びのような強力な能力がある。
縁結びも他人の運命を操る凄まじい力を保有しているが、玲子の持つ幻想遺物は、どちらかというと戦いに使用出来る系統のものである。
だが、幻想遺物を使わせる状況というのは、玲子に危険を負わせるということだ。誠としては、玲子に幻想遺物を使わせたくはない。
幻想遺物を調べたり、手に入れたりすることが好きな誠だが、玲子の幻想遺物に関しては、危険性も強い確信がある。
幻想遺物の中でも玲子の幻想遺物は異質なのだ。日常の道具に紛れ込んでいる幻想遺物。それこそ、シロノの持つ縁結びは、一見するとただの針と区別がつかない代物である。
噂に聞くどれもが、外見的には幻想遺物だとは、誰にも分からない物がほとんどなのだ。
しかし、玲子の幻想遺物はそれとは趣が異なる。どういう構造で、動いているのか分からないこともそうだが、一般人が見ても奇妙だと分かるあからさまに異質な物である。そんな幻想遺物は誠も聞いたことがなかった。
(それに過剰に使い過ぎると玲子にも影響が出るしね)
誠は少し過去にあった出来事を思い出しながら、少し苦い表情を浮かべた。
幻想遺物は、良い影響を与えてくれるだけではない。危険性も当然存在している。
「玲子は、出来るだけ幻想遺物は使わないようにしてね」
「私も出来れば使いたくない。ただ、使わないといけないと思ったら躊躇しない」
「うん。使わせないように説得できると良いんだけど」
問題なく事件が解決することに淡い期待を抱きながら、誠はそう呟いた。
最悪、無理矢理に縁を切れば、縁結びの効果で悠美に関する記憶が消滅するため、縁結びに関する記憶も消えてしまうだろう。
「つまり、目的さえ達成出来すれば、多少の無茶は許されるわけだ」
非常に嬉しそうにプリンを食べる玲子の質問に誠は頷いた。
「まあ、流石に無理矢理、押し入り強盗みたいなことをすれば問題にはなると思うけど」
誠も何気なく机の上に置かれたプリンを一つ取ろうとすると取る前に玲子にプリンを奪われる。
「私の」
「・・・・・・はい」
玲子の三つ買ってこいは、本当に三つ食べるつもりだったらしい。
もしかしたら、一緒に食べるつもりとか、淡い期待を誠は抱いていたが、玲子にそんなつもりは一切ないらしい。
ため息を吐いて誠は先ほどいれたコーヒーに口を付ける。
コーヒーの香りの鼻を通り、少しだけ気持ちが落ち着いてくる。
「出来れば、強硬手段は取りたくない。荒事は苦手だし」
誠は、そう言いながら玲子の右手に視線を向ける。
誠は自分が荒事に向いている人物であると微塵も思っていない。そもそも、誠は体を鍛えていないため、細身であ
る。自己評価としても、暴力的な解決手段が得意な訳ではないし、好まない。
結果的に荒事を処理するのは、玲子になる。
玲子も白すぎるほどに真っ白な肌ですらりとしたスタイルをしている。誠に比べれば、多少は力はあるが、一般女性の筋力を越える訳ではない。
玲子に荒事の解決を任せるのは、偏に幻想遺物の存在である。玲子の右手の義手にも、縁結びのような強力な能力がある。
縁結びも他人の運命を操る凄まじい力を保有しているが、玲子の持つ幻想遺物は、どちらかというと戦いに使用出来る系統のものである。
だが、幻想遺物を使わせる状況というのは、玲子に危険を負わせるということだ。誠としては、玲子に幻想遺物を使わせたくはない。
幻想遺物を調べたり、手に入れたりすることが好きな誠だが、玲子の幻想遺物に関しては、危険性も強い確信がある。
幻想遺物の中でも玲子の幻想遺物は異質なのだ。日常の道具に紛れ込んでいる幻想遺物。それこそ、シロノの持つ縁結びは、一見するとただの針と区別がつかない代物である。
噂に聞くどれもが、外見的には幻想遺物だとは、誰にも分からない物がほとんどなのだ。
しかし、玲子の幻想遺物はそれとは趣が異なる。どういう構造で、動いているのか分からないこともそうだが、一般人が見ても奇妙だと分かるあからさまに異質な物である。そんな幻想遺物は誠も聞いたことがなかった。
(それに過剰に使い過ぎると玲子にも影響が出るしね)
誠は少し過去にあった出来事を思い出しながら、少し苦い表情を浮かべた。
幻想遺物は、良い影響を与えてくれるだけではない。危険性も当然存在している。
「玲子は、出来るだけ幻想遺物は使わないようにしてね」
「私も出来れば使いたくない。ただ、使わないといけないと思ったら躊躇しない」
「うん。使わせないように説得できると良いんだけど」
問題なく事件が解決することに淡い期待を抱きながら、誠はそう呟いた。
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