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正体暴露
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案内されたのは、家の隣にある蔵だった。二人分ほどありそうな、大きな木製の扉を開いてシロノは、誠を中へと案内した。
「こっちへ、美琴さんは私に用事があるんですよね?」
シロノはそう言うと美琴の返事を待たずに中へと進んでいく。その姿は、先ほどまで慌てていた時と違って、凛とした表情に変わっていた。その振る舞いもあってか、不憫な女の子という印象は払拭され、むしろ、油断ならない相手という印象すら受ける。まるで別人の様な雰囲気の変化に誠は生唾を飲み込み、ゆっくりとそれに続いた。
蔵の中は薄暗くシロノが付けたランプの明かりがあるおかげで何とか見ることが出来る。埃の香りの充満した部屋は時間の流れを実感させる。部屋の隅には段ボールなどが置かれ、神社の行事で使われると思わしき、祭具が片付けられている。
「それでご用件は? あんな露骨な話題の振り方をしたんですから、なにか用事があるんですよね?」
「つまりは、シロノさんが縁結びの女の子で正解ってことですか」
「そうです。ただ、私は美琴さんにあったことがないはずなんですが、誰かに私のことを聞きましたか?」
シロノの問いかけに誠も正体を自白するべきか考える。けれど、彼女に協力をお願いするのなら、自身の正体を明かし信頼を得る方が話の進みは良いはずだ。女装をしていたという告白をしたところで、信頼を得られるのかは疑問ではあるが・・・・・・。
「・・・・・・本当に勘違いしないで欲しいんだけど、騙すつもりはなかったんだ。家に上がるとも思っていなかったから、計画性はまったくない。それだけは覚えておいてほしい」
告白しようとして、ついつい、予防線を張ってしまう。語るほど、というやつではあるが、分かってはいても、ほとんど無意識的に行ってしまうのだから、止めようがない。シロノは不可解そうな表情を浮かべていた。当然の反応だろう。
「何の話です?」
「いや、ごめん。ちょっと、僕の告白の準備に心がひよってた」
「え、もしかして、シロノさんの魅力に恋に」
オーバーに照れた表情を浮かべるシロノは、可愛いものの、狙っているのがはっきり分かって、素直に可愛いと思いずらい。
「可愛い云々は、おいといて、そっちの告白じゃない」
「あーやっぱりですか。そっちだったら、まだ、楽だったんですけど」
そう言ってシロノは、冗談めかして笑うと「ああ、脱線させてしまいましたね」と軽く謝罪した。
「本題をどうぞ」
「君に会ったことはあるんだ。僕は。覚えてないかな? アルミマンのシャツを着てた男」
「ああ、あの、めちゃくちゃダサい服を着てた」
「やっぱり、あれダサいんだ・・・・・・」
シロノの遠慮のない言葉に予想外なところでショックを受け、切ない気持ちを抱きながらも話を続ける。
「あれが僕だよ」
「なるほど、確かにそれなら納得です。あの日は、油揚げ二枚だったのでテンション爆上がりだったので、余計なことも言っちゃいましたし」
シロノは納得いったと何度も頷いた。誠が女装していたという事実は、さほど気にも止めてない様子で、誠も安心して息を吐いた。
「・・・・・・まさか、男装して私を欺いていたとはやられました」
「そうじゃない!!」
シロノの更なる誤解に誠は慌てて否定した。
「こっちへ、美琴さんは私に用事があるんですよね?」
シロノはそう言うと美琴の返事を待たずに中へと進んでいく。その姿は、先ほどまで慌てていた時と違って、凛とした表情に変わっていた。その振る舞いもあってか、不憫な女の子という印象は払拭され、むしろ、油断ならない相手という印象すら受ける。まるで別人の様な雰囲気の変化に誠は生唾を飲み込み、ゆっくりとそれに続いた。
蔵の中は薄暗くシロノが付けたランプの明かりがあるおかげで何とか見ることが出来る。埃の香りの充満した部屋は時間の流れを実感させる。部屋の隅には段ボールなどが置かれ、神社の行事で使われると思わしき、祭具が片付けられている。
「それでご用件は? あんな露骨な話題の振り方をしたんですから、なにか用事があるんですよね?」
「つまりは、シロノさんが縁結びの女の子で正解ってことですか」
「そうです。ただ、私は美琴さんにあったことがないはずなんですが、誰かに私のことを聞きましたか?」
シロノの問いかけに誠も正体を自白するべきか考える。けれど、彼女に協力をお願いするのなら、自身の正体を明かし信頼を得る方が話の進みは良いはずだ。女装をしていたという告白をしたところで、信頼を得られるのかは疑問ではあるが・・・・・・。
「・・・・・・本当に勘違いしないで欲しいんだけど、騙すつもりはなかったんだ。家に上がるとも思っていなかったから、計画性はまったくない。それだけは覚えておいてほしい」
告白しようとして、ついつい、予防線を張ってしまう。語るほど、というやつではあるが、分かってはいても、ほとんど無意識的に行ってしまうのだから、止めようがない。シロノは不可解そうな表情を浮かべていた。当然の反応だろう。
「何の話です?」
「いや、ごめん。ちょっと、僕の告白の準備に心がひよってた」
「え、もしかして、シロノさんの魅力に恋に」
オーバーに照れた表情を浮かべるシロノは、可愛いものの、狙っているのがはっきり分かって、素直に可愛いと思いずらい。
「可愛い云々は、おいといて、そっちの告白じゃない」
「あーやっぱりですか。そっちだったら、まだ、楽だったんですけど」
そう言ってシロノは、冗談めかして笑うと「ああ、脱線させてしまいましたね」と軽く謝罪した。
「本題をどうぞ」
「君に会ったことはあるんだ。僕は。覚えてないかな? アルミマンのシャツを着てた男」
「ああ、あの、めちゃくちゃダサい服を着てた」
「やっぱり、あれダサいんだ・・・・・・」
シロノの遠慮のない言葉に予想外なところでショックを受け、切ない気持ちを抱きながらも話を続ける。
「あれが僕だよ」
「なるほど、確かにそれなら納得です。あの日は、油揚げ二枚だったのでテンション爆上がりだったので、余計なことも言っちゃいましたし」
シロノは納得いったと何度も頷いた。誠が女装していたという事実は、さほど気にも止めてない様子で、誠も安心して息を吐いた。
「・・・・・・まさか、男装して私を欺いていたとはやられました」
「そうじゃない!!」
シロノの更なる誤解に誠は慌てて否定した。
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