21 / 41
事後のチャーハン
しおりを挟む
「ごめん、起こしちゃった?」
「ぅ……ん……」
横でもぞもぞと紘人さんが動く気配に目が覚める。カーテンの隙間から覗く太陽が眩しい。
「お腹空いたから何か作ろうと思うんだけど、由奈も食べる?」
「作ってくれるんですか……?」
「うん、もちろん。何か食べに行ってもいいけど、身体も服もよれよれでしょ? とりあえず洗濯機回しちゃっていい? そもそもだけど……今日、家帰りたい? 昨日の服は皴だらけだし、今日もう一泊して、洗濯上がりの服を着て帰るのをおススメするけど」
「紘人さん、ご予定は?」
「何も。ジムも予約してないし、普段からそれ以外の予定ってないから」
お互いに、頬が緩むのを止められない。どちらかともなく触れるだけのキスをして、おでこをこつんと合わせた。もう一泊したいです、と返事をする。
「ん、ありがと。由奈とだらだらできるの嬉しいな。在宅勤務とか、一緒にできるならもっと一緒にいられるのにね」
「それってもう同棲じゃないですか?」
「うん、俺は、そうしてもいいと思ってるよ? 週末ずっとこっちにいるなら、由奈が自分の家にいる時間なんて平日の夜だけになるし、部屋借りておくだけお金がもったいないでしょ。あ、俺が由奈の部屋に転がり込むのでもアリだし、二人でもう少し広めの部屋借り直すのもアリだけど……とか、勝手に色々想像して、楽しくなってた。ごめんね。由奈のペースに合わせるから、無理しないでね」
ちゅ、ちゅ、とキスの雨を降らせながら、紘人さんが甘い言葉ばかりを紡ぐ。彼の瞳がきらきらしていて、本当に私と一緒にいられる時間一秒でも長く持ちたいと思っていることが伝わってくる。
「なんにせよ、洗濯してご飯作ってくるね。スマホこれで充電していいし、お水も飲んで待っててね。チャーハンかパスタか、どっちにしようかなー」
ベッドから紘人さんが抜けだした。紘人さんは私に服を用意してくれている。いつの間に服を着たのか、彼はスウェットの上下をしっかりと身に纏っていた。本当は手伝わなくてはいけないとわかっているが、股関節や背中が痛むのを言い訳に、紘人さんの甘やかしを享受して、ベッドの中ににやけた顔を隠す。
半日ぶりに確認したスマホに届く通知を確認していると、憂鬱な仕事の連絡も目に入る。そのうちの一つが紘人さんと一緒に進めている仕事の件で、彼の週明けの仕事が増えた気配を感じた。
「紘人さん、メール、見た方がいいかも……」
「ん、さっき見たよー……まじで、土日に連絡寄越すの止めてほしいよなぁ……由奈も、仕事のメール見ないよ。今日はお休みなんだから」
キッチンに向かって声を投げると、全て把握していた紘人さんの残念そうな返事。仕事ができる人のところにばかり仕事は溜まるものだとよく言うが、こういうことかとまざまざと思い知らされる。
たまねぎが炒められるいい匂いが届く。チャーハンかパスタかわからないが、紘人さんの料理を食べられるのは本当に嬉しい。私は胸を張って料理が得意とは言えない程度の、自炊はしていますが、というレベルだから、いつか紘人さんにおいしいものを作れるように少し練習をしようと思う。
「できたよー。パスタが微妙な量しかなかったから、チャーハンね。冷凍してたご飯が残っててよかった。歩ける?」
「歩けます」
ベッドに迎えに来てくれた紘人さんと手を繋ぎ、リビングまで歩いていく。短い距離でもこうしてくっついていられることが幸せだった。
「わ、おいしそう」
「お口に合いますように。いただきます」
狭いローテーブルにお皿を二つ並べ、遅めの昼ご飯。チャーハンの塩気が疲れた身体に沁みる。おいしい、と呟くと、紘人さんは安心したように微笑んだ。
「おいしい時にどういう顔するか知ってるから、嘘じゃないって安心できる。よかった」
「紘人さん料理お得意なんですね」
「もう敬語いらないから……料理はね、一時期ハマって割と練習したんだけど、自己流だからレパートリーは名前のないおつまみ料理ばっかりかも。今度宅飲みもしようね」
紘人さんの緩んだ頬が愛しい。会社にいるときとは比べものにならないほど饒舌なこの人の笑顔をずっと近くで見ていたい。
「食休みしたら何か映画でも見ようか。話しててもいいし、ごろごろしてもいいし、由奈とゆっくりできるなら、なんでもいいや。こんなに充実した土日、いつ以来だろう。由奈、本当にありがとうね」
「私こそ、まだ、なんだか実感が湧ききらないです。でも……でも、とっても幸せ。おでかけもしたいし、旅行も魅力的だし、ご飯食べにも行きたいし……そういうやりたいことの洗い出しも、したいですね」
「うん。やりたいこと、全部、一個ずつ叶えていこうね」
「ぅ……ん……」
横でもぞもぞと紘人さんが動く気配に目が覚める。カーテンの隙間から覗く太陽が眩しい。
「お腹空いたから何か作ろうと思うんだけど、由奈も食べる?」
「作ってくれるんですか……?」
「うん、もちろん。何か食べに行ってもいいけど、身体も服もよれよれでしょ? とりあえず洗濯機回しちゃっていい? そもそもだけど……今日、家帰りたい? 昨日の服は皴だらけだし、今日もう一泊して、洗濯上がりの服を着て帰るのをおススメするけど」
「紘人さん、ご予定は?」
「何も。ジムも予約してないし、普段からそれ以外の予定ってないから」
お互いに、頬が緩むのを止められない。どちらかともなく触れるだけのキスをして、おでこをこつんと合わせた。もう一泊したいです、と返事をする。
「ん、ありがと。由奈とだらだらできるの嬉しいな。在宅勤務とか、一緒にできるならもっと一緒にいられるのにね」
「それってもう同棲じゃないですか?」
「うん、俺は、そうしてもいいと思ってるよ? 週末ずっとこっちにいるなら、由奈が自分の家にいる時間なんて平日の夜だけになるし、部屋借りておくだけお金がもったいないでしょ。あ、俺が由奈の部屋に転がり込むのでもアリだし、二人でもう少し広めの部屋借り直すのもアリだけど……とか、勝手に色々想像して、楽しくなってた。ごめんね。由奈のペースに合わせるから、無理しないでね」
ちゅ、ちゅ、とキスの雨を降らせながら、紘人さんが甘い言葉ばかりを紡ぐ。彼の瞳がきらきらしていて、本当に私と一緒にいられる時間一秒でも長く持ちたいと思っていることが伝わってくる。
「なんにせよ、洗濯してご飯作ってくるね。スマホこれで充電していいし、お水も飲んで待っててね。チャーハンかパスタか、どっちにしようかなー」
ベッドから紘人さんが抜けだした。紘人さんは私に服を用意してくれている。いつの間に服を着たのか、彼はスウェットの上下をしっかりと身に纏っていた。本当は手伝わなくてはいけないとわかっているが、股関節や背中が痛むのを言い訳に、紘人さんの甘やかしを享受して、ベッドの中ににやけた顔を隠す。
半日ぶりに確認したスマホに届く通知を確認していると、憂鬱な仕事の連絡も目に入る。そのうちの一つが紘人さんと一緒に進めている仕事の件で、彼の週明けの仕事が増えた気配を感じた。
「紘人さん、メール、見た方がいいかも……」
「ん、さっき見たよー……まじで、土日に連絡寄越すの止めてほしいよなぁ……由奈も、仕事のメール見ないよ。今日はお休みなんだから」
キッチンに向かって声を投げると、全て把握していた紘人さんの残念そうな返事。仕事ができる人のところにばかり仕事は溜まるものだとよく言うが、こういうことかとまざまざと思い知らされる。
たまねぎが炒められるいい匂いが届く。チャーハンかパスタかわからないが、紘人さんの料理を食べられるのは本当に嬉しい。私は胸を張って料理が得意とは言えない程度の、自炊はしていますが、というレベルだから、いつか紘人さんにおいしいものを作れるように少し練習をしようと思う。
「できたよー。パスタが微妙な量しかなかったから、チャーハンね。冷凍してたご飯が残っててよかった。歩ける?」
「歩けます」
ベッドに迎えに来てくれた紘人さんと手を繋ぎ、リビングまで歩いていく。短い距離でもこうしてくっついていられることが幸せだった。
「わ、おいしそう」
「お口に合いますように。いただきます」
狭いローテーブルにお皿を二つ並べ、遅めの昼ご飯。チャーハンの塩気が疲れた身体に沁みる。おいしい、と呟くと、紘人さんは安心したように微笑んだ。
「おいしい時にどういう顔するか知ってるから、嘘じゃないって安心できる。よかった」
「紘人さん料理お得意なんですね」
「もう敬語いらないから……料理はね、一時期ハマって割と練習したんだけど、自己流だからレパートリーは名前のないおつまみ料理ばっかりかも。今度宅飲みもしようね」
紘人さんの緩んだ頬が愛しい。会社にいるときとは比べものにならないほど饒舌なこの人の笑顔をずっと近くで見ていたい。
「食休みしたら何か映画でも見ようか。話しててもいいし、ごろごろしてもいいし、由奈とゆっくりできるなら、なんでもいいや。こんなに充実した土日、いつ以来だろう。由奈、本当にありがとうね」
「私こそ、まだ、なんだか実感が湧ききらないです。でも……でも、とっても幸せ。おでかけもしたいし、旅行も魅力的だし、ご飯食べにも行きたいし……そういうやりたいことの洗い出しも、したいですね」
「うん。やりたいこと、全部、一個ずつ叶えていこうね」
1
お気に入りに追加
603
あなたにおすすめの小説
【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。
どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。
婚約破棄ならぬ許嫁解消。
外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。
※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。
R18はマーク付きのみ。
【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
真田(さなだ)ホールディングスで専務秘書を務めている香坂 杏珠(こうさか あんじゅ)は凛とした美人で26歳。社内外問わずモテるものの、男に冷たく当たることから『男性嫌いではないか』と噂されている。
しかし、実際は違う。杏珠は自分の理想を妥協することが出来ず、結果的に彼氏いない歴=年齢を貫いている、いわば拗らせ女なのだ。
そんな杏珠はある日社長から副社長として本社に来てもらう甥っ子の専属秘書になってほしいと打診された。
渋々といった風に了承した杏珠。
そして、出逢った男性――丞(たすく)は、まさかまさかで杏珠の好みぴったりの『筋肉男子』だった。
挙句、気が付いたら二人でベッドにいて……。
しかも、過去についてしまった『とある嘘』が原因で、杏珠は危機に陥る。
後継者と名高いエリート副社長×凛とした美人秘書(拗らせ女)の身体から始まる現代ラブ。
▼掲載先→エブリスタ、ベリーズカフェ、アルファポリス(性描写多め版)
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件
百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。
そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。
いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。)
それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる!
いいんだけど触りすぎ。
お母様も呆れからの憎しみも・・・
溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。
デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。
アリサはの気持ちは・・・。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる