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ユリたちの会社では新年会や忘年会の他に、季節ごとに飲み会が行われる。
ユリは車で行くしかないので呑めないが、雰囲気が楽しくて好きだった。
お酒で人が変わる人が何人かいるが、普段おとなしい人がおしゃべりになるギャップはおもしろい。
特に柏木がそうだ。彼は基本的に優しいがぶっきらぼう。だが、お酒が入ると饒舌でいつも以上に馴れ馴れしくなる。
そして今日は夏の呑み会。座敷席の会場は長い机が三つ並べられ、それぞれ部署で分かれていた。
飲み会も中盤になると、各々好きな者同士で固まり始める。ユリはノンアルカクテル片手に柏木の横に移動し、彼と話していた。普段見られない姿を見たいからだ。
彼の反対側の隣には、彼を慕う男性社員────松嶋がビールを注いでいる。
「柏木さんは自炊してるんですか?」
「そんなんしねーよ」
柏木の顔はお酒のせいで赤い。壁にもたれかかり、グラスをあおった。
「クマちゃん。柏木さんは高級店でしか食べないんだよ」
「へ~。いいな~」
「連れてってもらえばいいじゃん」
「あ、いいです。お小遣いだけください」
「金が全てかいな」
呆れた柏木の顔はムスッとしている。普段なら絶対しない顔だ。ユリはニヤけそうなのをこらえながら、彼のことを指差した。
「あ、もしかして私とご飯に行きたいとか~?」
「そうだよ。俺だってたまには可愛いコと飯行きたい」
「もれなく俺がついていきますけどね」
意外な返答に笑い飛ばすことができなかった。
柏木がバツイチで独り者なのは知っている。バツがついてからは彼女がいたこともない、とも。全て松嶋に教えてもらったことだ。
「い……意外ですね! 柏木さんがそんなこと言うとか! お酒の力はすごいな~……」
少しだけ動揺してしまった。彼が口説きまがいの台詞を吐くところは見たことがない。例えお酒が入っていても。
ユリは彼と仲がいい方だが、冗談でも一緒に食事に行こうかなんて誘われたことはなかった。
一瞬でも動揺した心を落ち着けるためにグラスを一気に煽った。柏木が”おっ”と感心したように口角を上げる。
「お嬢、いつも車だから呑めねぇよな。いつか呑もうな~……」
そう言った彼の様子は落ち着きがない。視線はまっすぐ、どこかへ。
もしかして照れているのだろうか。自分が何を言ったのかに気がつき、酔いが覚めそうなのか。
まるで”好き”を匂わす小学生男子のよう。ユリはにっこりと笑うと、グラスをテーブルに置いた。
「やること若いから若々しいんですね!もうすぐ40になんて見えませんよ!」
柏木はビールを注ぐ手を止め、ニヤリと片頬を上げた。
「分かってんじゃん。あとで松嶋から三万もらいな」
「やったー」
「なんでだよ!?」
「母ちゃん母ちゃん。聞きてぇことがあるんだけど」
「母ちゃん言うな。せめて姉さんにしろ」
「すまんすまん長谷川姉さん」
配達から帰ってきた柏木は事務所に入ると、キーボードを叩いている長谷川に声をかけた。
私服姿でメガネをかけた少し年上の女性。彼女は柏木が入社した時にはすでにここで働いていた。今や大ベテランだ。柏木の勤続年数が誰よりも長くなった頃からタメ口で話すようになった。
ふーう、と柏木は長谷川の隣の席に腰かけた。ここに普段座っている事務員は席を立っているようだ。
「まぁ確かに姉さんだわな。俺の母さん60代」
「腹立つ!」
そばに置いてあるファイルで肩にチョップされた。他の事務員が吹き出すのが聞こえた。”またおちょくってる~”と笑っている。
すると、長谷川が机の中からおやつを取り出した。せんべいだ。柏木の前に置くと立ち上がった。どうやらくれるらしい。
「ごっそーさん」
さっそく袋を破ってボリボリ食べていたら、彼女は事務員たちに配って歩いた。よくよく時計を見たら十五時。おやつの時間だ。
「……で? 何よ」
「姉さん、娘と息子いるだろ? 急に帰ってくることとかあんの? 旦那とか嫁さんとケンカしたーって」
「あるわよ。特に娘はひどかったわね」
長谷川は水筒のお茶を飲むと、せんべいの袋を捨てた。歯応えがしっかりあって醬油が香ばしい、おいしいせんべいだった。
「旦那がだらしなさ過ぎて無理とか、家のこと全然やってくれないとか、他にもいろいろ言ってたわね。今は妥協して付き合いやすくなったみたいだけど」
「ふ~ん」
「急にどうしたのよ?」
理由を聞かれるかもしれないとは予想したが、とっさに理由が浮かばなかった。
柏木には子どもがいない。こんなことで相談することは永遠にないはず。
彼はキャスター付きの椅子の上でのけぞると、天井を見上げた。
「ん~……いや。お嬢は今頃どうしてんのかな~って……」
長谷川は不自然な柏木に違和感を覚えることはなかったようだ。水筒を足元のバッグに滑りこませると、再びパソコンに向かい合った。
「ユリさんなら元気にやってるでしょう。あの子しっかりしてるし、言いたいことはちゃんと言える子だから」
「そうか? 言えるのは仕事の不満だけだろ」
長谷川は片眉を上げ、柏木の顔をのぞきこんだ。
「あら。妙に彼女のことに詳しいのねぇ?」
「……そんなこたねぇよ」
「あなたたち結構仲良かったわよね。柏木君と松嶋君ほどの仲じゃないけど」
そうだっけかと思い出そうとしたら、事務所と配送の倉庫を隔てるガラス戸がゴン、という音をたてた。
二人で振り向くと松嶋が軍手をして張り付いている。彼も配送から帰ってきたようだ。
音に気付いた事務員が顔を上げ、小さく悲鳴を上げたり指さして笑っている。
「柏木さーん! 荷物多いから早く積み込んでくださーい!」
「おーう」
そのタイミングで柏木が座っている席の女性事務員が戻ってきた。彼は”悪りぃ悪りぃ”と立ち上がってガラス戸に向かった。
明日の配送分の荷物をトラックに積み、柏木は一服していた。他の配送員も喫煙所にやってきて煙草に火をつける。
配送員はほとんどが男性。二十代から六十代と、年齢層が幅広い。
配達エリアは県内と隣県。午前中に出て夕方までに帰ってくることのできる距離を走っている。
距離が近いエリアはパートのおばちゃんが担当している。彼女らは午前中の内に仕事が終わるので、顔を合わせるのは出勤時だけだ。
「柏木さん柏木さん! お疲れっス! 呑みに行きません!?」
彼らと今日の配送はどうだったの、明日はどうだのと話していたら松嶋がやってきた。彼も作業服の胸ポケットから電子タバコを取り出した。
松嶋は三十代の若手男性社員で、やけに柏木のことを慕っている。柏木も明るい松嶋のことは気に入っているので、自宅に呼んで呑んだり呑みに行くことがしばしば。そのまま自宅に泊めることもある。
「あーごめん。しばらく呑みに行けねぇんだ」
柏木はユリのことを思い出してむせそうになった。ぽろっと言ってしまわないように気を引き締める。
「えーなんでですか!? この日を楽しみに仕事頑張ってるのにぃ~」
残念そうな松嶋の姿に胸が痛む。柏木もなんやかんやで彼と呑むのを楽しんでいるからだ。
柏木は灰皿に灰を落とすと、明後日の方向へ煙を吐いた。
「……友だちから猫を預かっている。それがもう構ってちゃんで……」
「えー猫ー!? 俺、猫好きです! あ、じゃあ柏木さん家で呑みましょうよ! そのまま朝帰り~」
「猫は俺には懐いてるんだが、急に人が来たら驚いちまう」
柏木は猫の姿を思い浮かべ、鉢合わせたら一体どうなることやら……と身震いした。ロリコンのレッテルを張られるのはごめんだ。
「もしかして女ができたんじゃねーの!?」
「なワケあるか。できたら自慢してるわ」
他の者にからかわれながら煙草をふかし、そろそろ帰るかと煙草を灰皿に押し込んだ。
ユリは車で行くしかないので呑めないが、雰囲気が楽しくて好きだった。
お酒で人が変わる人が何人かいるが、普段おとなしい人がおしゃべりになるギャップはおもしろい。
特に柏木がそうだ。彼は基本的に優しいがぶっきらぼう。だが、お酒が入ると饒舌でいつも以上に馴れ馴れしくなる。
そして今日は夏の呑み会。座敷席の会場は長い机が三つ並べられ、それぞれ部署で分かれていた。
飲み会も中盤になると、各々好きな者同士で固まり始める。ユリはノンアルカクテル片手に柏木の横に移動し、彼と話していた。普段見られない姿を見たいからだ。
彼の反対側の隣には、彼を慕う男性社員────松嶋がビールを注いでいる。
「柏木さんは自炊してるんですか?」
「そんなんしねーよ」
柏木の顔はお酒のせいで赤い。壁にもたれかかり、グラスをあおった。
「クマちゃん。柏木さんは高級店でしか食べないんだよ」
「へ~。いいな~」
「連れてってもらえばいいじゃん」
「あ、いいです。お小遣いだけください」
「金が全てかいな」
呆れた柏木の顔はムスッとしている。普段なら絶対しない顔だ。ユリはニヤけそうなのをこらえながら、彼のことを指差した。
「あ、もしかして私とご飯に行きたいとか~?」
「そうだよ。俺だってたまには可愛いコと飯行きたい」
「もれなく俺がついていきますけどね」
意外な返答に笑い飛ばすことができなかった。
柏木がバツイチで独り者なのは知っている。バツがついてからは彼女がいたこともない、とも。全て松嶋に教えてもらったことだ。
「い……意外ですね! 柏木さんがそんなこと言うとか! お酒の力はすごいな~……」
少しだけ動揺してしまった。彼が口説きまがいの台詞を吐くところは見たことがない。例えお酒が入っていても。
ユリは彼と仲がいい方だが、冗談でも一緒に食事に行こうかなんて誘われたことはなかった。
一瞬でも動揺した心を落ち着けるためにグラスを一気に煽った。柏木が”おっ”と感心したように口角を上げる。
「お嬢、いつも車だから呑めねぇよな。いつか呑もうな~……」
そう言った彼の様子は落ち着きがない。視線はまっすぐ、どこかへ。
もしかして照れているのだろうか。自分が何を言ったのかに気がつき、酔いが覚めそうなのか。
まるで”好き”を匂わす小学生男子のよう。ユリはにっこりと笑うと、グラスをテーブルに置いた。
「やること若いから若々しいんですね!もうすぐ40になんて見えませんよ!」
柏木はビールを注ぐ手を止め、ニヤリと片頬を上げた。
「分かってんじゃん。あとで松嶋から三万もらいな」
「やったー」
「なんでだよ!?」
「母ちゃん母ちゃん。聞きてぇことがあるんだけど」
「母ちゃん言うな。せめて姉さんにしろ」
「すまんすまん長谷川姉さん」
配達から帰ってきた柏木は事務所に入ると、キーボードを叩いている長谷川に声をかけた。
私服姿でメガネをかけた少し年上の女性。彼女は柏木が入社した時にはすでにここで働いていた。今や大ベテランだ。柏木の勤続年数が誰よりも長くなった頃からタメ口で話すようになった。
ふーう、と柏木は長谷川の隣の席に腰かけた。ここに普段座っている事務員は席を立っているようだ。
「まぁ確かに姉さんだわな。俺の母さん60代」
「腹立つ!」
そばに置いてあるファイルで肩にチョップされた。他の事務員が吹き出すのが聞こえた。”またおちょくってる~”と笑っている。
すると、長谷川が机の中からおやつを取り出した。せんべいだ。柏木の前に置くと立ち上がった。どうやらくれるらしい。
「ごっそーさん」
さっそく袋を破ってボリボリ食べていたら、彼女は事務員たちに配って歩いた。よくよく時計を見たら十五時。おやつの時間だ。
「……で? 何よ」
「姉さん、娘と息子いるだろ? 急に帰ってくることとかあんの? 旦那とか嫁さんとケンカしたーって」
「あるわよ。特に娘はひどかったわね」
長谷川は水筒のお茶を飲むと、せんべいの袋を捨てた。歯応えがしっかりあって醬油が香ばしい、おいしいせんべいだった。
「旦那がだらしなさ過ぎて無理とか、家のこと全然やってくれないとか、他にもいろいろ言ってたわね。今は妥協して付き合いやすくなったみたいだけど」
「ふ~ん」
「急にどうしたのよ?」
理由を聞かれるかもしれないとは予想したが、とっさに理由が浮かばなかった。
柏木には子どもがいない。こんなことで相談することは永遠にないはず。
彼はキャスター付きの椅子の上でのけぞると、天井を見上げた。
「ん~……いや。お嬢は今頃どうしてんのかな~って……」
長谷川は不自然な柏木に違和感を覚えることはなかったようだ。水筒を足元のバッグに滑りこませると、再びパソコンに向かい合った。
「ユリさんなら元気にやってるでしょう。あの子しっかりしてるし、言いたいことはちゃんと言える子だから」
「そうか? 言えるのは仕事の不満だけだろ」
長谷川は片眉を上げ、柏木の顔をのぞきこんだ。
「あら。妙に彼女のことに詳しいのねぇ?」
「……そんなこたねぇよ」
「あなたたち結構仲良かったわよね。柏木君と松嶋君ほどの仲じゃないけど」
そうだっけかと思い出そうとしたら、事務所と配送の倉庫を隔てるガラス戸がゴン、という音をたてた。
二人で振り向くと松嶋が軍手をして張り付いている。彼も配送から帰ってきたようだ。
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松嶋は三十代の若手男性社員で、やけに柏木のことを慕っている。柏木も明るい松嶋のことは気に入っているので、自宅に呼んで呑んだり呑みに行くことがしばしば。そのまま自宅に泊めることもある。
「あーごめん。しばらく呑みに行けねぇんだ」
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残念そうな松嶋の姿に胸が痛む。柏木もなんやかんやで彼と呑むのを楽しんでいるからだ。
柏木は灰皿に灰を落とすと、明後日の方向へ煙を吐いた。
「……友だちから猫を預かっている。それがもう構ってちゃんで……」
「えー猫ー!? 俺、猫好きです! あ、じゃあ柏木さん家で呑みましょうよ! そのまま朝帰り~」
「猫は俺には懐いてるんだが、急に人が来たら驚いちまう」
柏木は猫の姿を思い浮かべ、鉢合わせたら一体どうなることやら……と身震いした。ロリコンのレッテルを張られるのはごめんだ。
「もしかして女ができたんじゃねーの!?」
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一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。
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その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。
そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。
優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。
そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。
「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。
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