Eternal Dear３

２章

１

　ある日の数学の授業でのこと。

　教卓に教科書を置いた扇は、パンッと手を叩いた。

「今日は校外学習のことに関しての班決めと行き先決めにしちゃいましょー。最近君ら勉強ばっかだろ？ 今日は息抜きの日にします！」

　扇の気遣いに生徒たちは皆一様に喜んだ。隣にいる友人と同じ班になろうとか、ここに行きたくない？ とか、すでに話が始まっている。

「席の移動してもいいよ。その代わりあんまり騒がないようにね」

　彼の一言でそれぞれ、友人の席に行ったり自分の席に呼んだり。

　麓の所にはいつも一緒にお昼を食べるメンバーが自然に集まった。

「校外学習は女子にとっては、半分買い物するようなモンやろ？ せやから俺と光は外れた方がええかな？」

「言われてみればそうかも。５人もぞろぞろ…ってやたら目立ちそうだし」

「じゃっ、今回は女子３、男子２で分かれるっちゅーことで…」

「ちょっと待ったァ！」

　蔓が締めようとしたら光が抗議の声を上げた。そんな彼に全員が不思議そうな視線を送る。

「勝手に決めないでくれる！？ 僕はロクにゃんと一緒にいたいんだけど！」

「ンなのいつでも一緒やないか、寮でも学校でも…。たまには麓離れせェや」

　おもちゃを欲しがるこどもがわがままを言う態度の光に、蔓は冷たい視線を投げた。

「ほんで。ご指名もろた麓はどうなん？」

「私は…一緒じゃなくてもいい、かな」

「えぇーっ！？ ロクにゃん、そんな…」

「ほれ見ろ。ほな決まり…」 

「ちょっと待って」

　またもや抗議らしい声。露が挙手をして蔓の言葉遮った。

「私がこの２人の監視役になる。光も蔓も心配」

「お前は俺のオカンかァ！？ なんや心配って！」

　淡々と告げた露に蔓はテンション高く食いつく。嵐も露に賛同した。

「なるほど。いるね、監視。特に人間界に行くわけだし。何かあってからじゃ遅いもんね」

「なんなん嵐まで！？ そんなに？ そんなに俺らは何かしでかしそうに見えるんか？」

「ということで今度こそ決まり！ テストが終わったら楽しもうね、麓」

「うん」

「…ってスルーすな！」

　ギャーギャー騒ぐ蔓の横でしょぼくれている光に、誰かが肩を叩いた。

　涙で瞳をうるませて振り向くと、そこには口角を上げて不敵な笑みを浮かべる扇の姿が。

「オウちゃん…？」

　すると扇は光の耳元に近づいて何やらゴニョゴニョと話し始めた。

　スっと扇が離れると、光は満面の笑みを浮かべた。 

「ありがとオウちゃん！」

「おうよ」

　２人は嬉しそうに笑いあっている。企みのある顔つきに見える。

「先生に何言われたの？ 気持ち悪いくらいニヤついて」

「ん～内緒！」

　光はいたずらっぽく笑って人差し指を唇に当てた。

「あ。それと僕は抜けるから。つるーにょとつゆにーで楽しんできて～」

「抜けてどうするの？」

「オウちゃんと各班の見回り」

「ちょ待ちぃや…。俺が露と２人！？ なんでこうなるん！？」

「文句ある？」

「うっ…なんもない」

　無表情さは逆に蔓をビビらせる効果があったようだ。彼は自分よりずっと小さい露相手に縮みこまった。