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5章
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夜叉たちの一行は見回りで散策している神崎と小野寺の仲良し教師コンビに出会い、他校の生徒と連れ立っていることに驚かれた。
神崎はその姿にある時の事件を思い出したのか”トラブルになるなよ”とそれとなく釘を刺した。
「響高校も同じような日程なんだね」
「らしいな」
神崎と小野寺は再び散策に繰り出した彼らの後ろ姿を見送った。
朝来の通う高校は同じ市内なので当然2人は知っている。そしてかつて不良生徒が何人も在籍していたことも。
そのせいか受け持っている生徒たちが朝来と歩いているところを見た時は一瞬ひやっとした。
しかし彼らが1年生の時に彼らの同級生であり我が校の守護神という異名を持つ結城から、響高校に不良はいなくなったから安心してほしいと言われたことを思い出した。
そして何より、朝来の夜叉を見守るような愛おしそうにほほえむ姿で恐れを吹き飛ばされた。
かつて不良生徒を束ねていた朝来の顔もひそかに知っておりマークもしていたのだが、そこには恋するただの男子生徒しかいなかった。
「青春だな…」
「どしたの、らしくないこと言っちゃって」
「いや。影内朝来を最後に見た時と顔つきがだいぶ変わったと思って。まさか桜木姉と…へ~」
「もしかしてうらやましいの?」
「バッカ言うんじゃねーよ」
神崎は隣を歩く小野寺の後頭部を軽くはたいた。つい男子高校生のようなノリでしてしまったことに謝ったが彼は小さく笑って首を振った。
修学旅行の引率ではあるが生徒の自由行動中は教師陣も見回りと称して散策しているので、なんだか学生時代に戻ったようだ。
「桜木さん、他の生徒より大人っぽい雰囲気あるもんね。影内君は歳上だけどお似合いの2人だね」
「だな。…俺には大人っぽいのは雰囲気だけな気もするが」
「そうなの?」
「だって桜木姉、食の好みに偏りがあり過ぎる。勉強もスポーツも…ってクチだが普段は割とぼんやりしてることが多い」
「それは分からんでもないけど」
2人はかたやクラス担任、かたや教科担任なのでもちろん普段に夜叉のことはそれなりに知っている。やっぱり天才はどこか普通とは違うんだろうな…となんとなく結論づけた。
「あっ、あっちは…」
「桜木弟だな」
神崎と小野寺は2人でカフェに入って休憩しつつ、生徒たちの見回りという名の小樽の街散策を続けた。
オルゴール屋のある通りで周りの店に目移りしつつ見つけたのは、夜叉の弟である和馬たちの班だ。他の女子の班と合流しているのかかなりの大所帯だ。
その中で2人の存在に気づいたらしい女子生徒が何人か手を振っている。
2人がそれぞれ爽やかにけだるげに笑うと彼らはくすっと笑って輪の中に戻って行った。
「前から思ってたんだけど、神崎君ってどうして和馬君のことをそう呼ぶの?」
「桜木家の弟だからだ」
「それはそうだけど…普通に名前でいいんじゃない?」
「前にも双子の生徒の担任になったことがあってそう呼んでたからその延長的な」
「そうだったんだ」
他の生徒よりも飛びぬけて身長の高い和馬の存在はよく目立つ。彼は輪の後ろの方で同じ班の男子や合流しているらしい女子たちのことを見てニコニコとしている。
その視線の先を見ると輪の中心で男女2人が赤い顔をして並んで歩いていた。周りの男子や女子が茶々を入れているのか、2人は不自然な距離感を保ちながら互いに目を合わせないように周りに向かって何か声を上げているらしい。
「あれは…卓球部のエース様方か」
「生田君に清野さんだね。そういえばあの2人がどうとか一部で騒いでた気がするなぁ…」
「それなら俺も小耳に挟んだな」
「あの様子だとカップル誕生ってとこかな」
「ぽいな。若いねぇ」
友樹と泉はそれぞれからかう同級生たちを引き剥がすと振り返って笑い合った。
神崎はその姿にある時の事件を思い出したのか”トラブルになるなよ”とそれとなく釘を刺した。
「響高校も同じような日程なんだね」
「らしいな」
神崎と小野寺は再び散策に繰り出した彼らの後ろ姿を見送った。
朝来の通う高校は同じ市内なので当然2人は知っている。そしてかつて不良生徒が何人も在籍していたことも。
そのせいか受け持っている生徒たちが朝来と歩いているところを見た時は一瞬ひやっとした。
しかし彼らが1年生の時に彼らの同級生であり我が校の守護神という異名を持つ結城から、響高校に不良はいなくなったから安心してほしいと言われたことを思い出した。
そして何より、朝来の夜叉を見守るような愛おしそうにほほえむ姿で恐れを吹き飛ばされた。
かつて不良生徒を束ねていた朝来の顔もひそかに知っておりマークもしていたのだが、そこには恋するただの男子生徒しかいなかった。
「青春だな…」
「どしたの、らしくないこと言っちゃって」
「いや。影内朝来を最後に見た時と顔つきがだいぶ変わったと思って。まさか桜木姉と…へ~」
「もしかしてうらやましいの?」
「バッカ言うんじゃねーよ」
神崎は隣を歩く小野寺の後頭部を軽くはたいた。つい男子高校生のようなノリでしてしまったことに謝ったが彼は小さく笑って首を振った。
修学旅行の引率ではあるが生徒の自由行動中は教師陣も見回りと称して散策しているので、なんだか学生時代に戻ったようだ。
「桜木さん、他の生徒より大人っぽい雰囲気あるもんね。影内君は歳上だけどお似合いの2人だね」
「だな。…俺には大人っぽいのは雰囲気だけな気もするが」
「そうなの?」
「だって桜木姉、食の好みに偏りがあり過ぎる。勉強もスポーツも…ってクチだが普段は割とぼんやりしてることが多い」
「それは分からんでもないけど」
2人はかたやクラス担任、かたや教科担任なのでもちろん普段に夜叉のことはそれなりに知っている。やっぱり天才はどこか普通とは違うんだろうな…となんとなく結論づけた。
「あっ、あっちは…」
「桜木弟だな」
神崎と小野寺は2人でカフェに入って休憩しつつ、生徒たちの見回りという名の小樽の街散策を続けた。
オルゴール屋のある通りで周りの店に目移りしつつ見つけたのは、夜叉の弟である和馬たちの班だ。他の女子の班と合流しているのかかなりの大所帯だ。
その中で2人の存在に気づいたらしい女子生徒が何人か手を振っている。
2人がそれぞれ爽やかにけだるげに笑うと彼らはくすっと笑って輪の中に戻って行った。
「前から思ってたんだけど、神崎君ってどうして和馬君のことをそう呼ぶの?」
「桜木家の弟だからだ」
「それはそうだけど…普通に名前でいいんじゃない?」
「前にも双子の生徒の担任になったことがあってそう呼んでたからその延長的な」
「そうだったんだ」
他の生徒よりも飛びぬけて身長の高い和馬の存在はよく目立つ。彼は輪の後ろの方で同じ班の男子や合流しているらしい女子たちのことを見てニコニコとしている。
その視線の先を見ると輪の中心で男女2人が赤い顔をして並んで歩いていた。周りの男子や女子が茶々を入れているのか、2人は不自然な距離感を保ちながら互いに目を合わせないように周りに向かって何か声を上げているらしい。
「あれは…卓球部のエース様方か」
「生田君に清野さんだね。そういえばあの2人がどうとか一部で騒いでた気がするなぁ…」
「それなら俺も小耳に挟んだな」
「あの様子だとカップル誕生ってとこかな」
「ぽいな。若いねぇ」
友樹と泉はそれぞれからかう同級生たちを引き剥がすと振り返って笑い合った。
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