ガルデニアの残り香

板久咲絢芽

文字の大きさ
上 下
24 / 44
回想 4 袋小路と果(はたて)

1

しおりを挟む
おにいちゃんが死んだ時、私以外の人間は、暗示で仕掛しかけてある通りに忘れるだろうとおにいちゃんは言った。
ただ、暗示がほとんどけている私は忘れない可能性が高いから、とも。
だから、はっきりとおにいちゃんは私に忘れていいよ、と告げた。

――本当に、おにいちゃんは何がしたかったのだろう。
見るなの禁忌タブー
えて見ることを禁止することにより、それを意識させ、多くの物語において、それをなし得させてしまう。
それはあくまで代表がなだけであって、見ることのみにとどまらない。
強制することで、その反対が行われる傾向とも言える。

おにいちゃんは、私に「いいよ」と、許可しただけだった。
それでも、意識するには十分だった。

「おにいちゃんの言う仮説って何?」

高校二年生になった冬。
私はれたてのココアを片手にそういた。
おにいちゃんの目的を知ったその時は、おにいちゃんはその時の私でも難しいと思うから、と仮説は教えてくれなかった。

「唐突だね」

おにいちゃんは眼鏡越しに私を見た。
おにいちゃんがいつの間にかかけ始めた眼鏡は、黒縁のシンプルなもので、目が悪くなることがあるのか、老眼か、と私が問うと、イメチェンと返ってきた。
にこにこと笑いながらいわく、みぃちゃんも飽きてきたでしょ、美人は三日で飽きるとか言うし。
……無言で一発だけなぐるにとどめた私を褒めて欲しい。

「だって、おにいちゃん。全然説明してくれない」
「……説明する気、ないしねえ」

おにいちゃんはそう言って文庫本片手に首をかしげた。

「気になるじゃん」
「……そんなに気になるなら、僕のメモを解読してみればいいよ。
 生きてる限り、みぃちゃんに見せる気もないけど」
「それ、私が見れない可能性のが高くない?」
「はは、そもそも、単なるメモランダム覚書を他人に分かるように書いてると思うかい?」

私が目的を知った時には難しすぎるから、とはぐらかしておきながら、実際に教える気は微塵みじんもなかったらしい。
当然ながら、こちらとしてはカチンと来た。
おにいちゃんはそれをさっして、ため息をつくと、口を開いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

キャバ嬢とホスト

廣瀬純一
ライト文芸
キャバ嬢とホストがお互いの仕事を交換する話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

Black Day Black Days

かの翔吾
ライト文芸
 日々積み重ねられる日常。他の誰かから見れば何でもない日常。  何でもない日常の中にも小さな山や谷はある。  濱崎凛から始まる、何でもない一日を少しずつ切り取っただけの、六つの連作短編。  五人の高校生と一人の教師の細やかな苦悩を、青春と言う言葉だけでは片付けたくない。  ミステリー好きの作者が何気なく綴り始めたこの物語の行方は、未だ作者にも見えていません。    

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...