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6-1 竜馬と松浦の姫 side A
2 奇妙な二人組
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小夜は名前こそアレだが、人付き合いが上手いわけではない。こればかりは親に散々当てこすっているが。
そもそも、今回とりあえず待ち合わせということで聞いていたので、蓬が人を紹介しようとしていたなんて初耳である。いや、音で聞いてるわけでもないけど。
せめてどんな人たちか教えてくれてもいいのに、と思いながら、スマホの画面から顔をあげて目の前の改札を見る。
丁度電車がやってきた直後なので、それなりの人が改札から出てきた。
そろそろ時間だが、さて、この中に蓬の言っていた人たちはいるのか。
じっと改札を観察していると、不意にばちっと外国人らしい眼鏡の青年と目があった。
その眼鏡の奥の冷や汗が出るほど鋭い目つきに、慌てて小夜は目をそらす。
しかし、ちら、と盗み見ると、彼は何やら隣の女性に小夜を示すような動作をして、その女性も一つ頷いた。
そして、そのまま黒髪をショートウルフにしたその女性がこちらに向かってくる。
小夜よりは少し年上だろうか、シンプルなデニム地のスキニーパンツに、上はややオーバーサイズ気味のパーカーを羽織っている。
「高里蓬と待ち合わせしてる、松波小夜さんですか?」
あー、字面しか見てないんだな、と小夜は一瞬にして悟った。
そして、その小夜の微妙な表情を察したらしく、女性が首を傾げる。
「あ、ええと、その、小夜って書いて、読みは、せれな、なんです……」
「え、ああー、はい、なるほど? セレナーデ……苦労されてますね」
すぐに答えに行き当たった上で浮かべられた同情的な苦笑に思わず、小夜はすみません、と返す。
女性の後ろに立っていた、先程目があった外国人がぼそりと小夜に聞き取れない音量で何か言うと、それを聞いた女性の肘鉄砲が吸い込まれるような勢いで、青年の上体に入った。
ものすごく痛そうだし、実際青年はけふけふと咳き込んでいる。
「失礼。わたしは唐国弘。こっちのもやしはロビン・イングラム。蓬さんからの連絡は受けてますよね?」
「あ、はい、遅れるって……」
「ひとまず近場のファミレスにでもいきましょうか。ロビン、蓬さんにも送っといてください」
「けほ……わかった」
そう言ってスマホを取り出す様子からして、このロビンという青年は、どうやら素の目つきが悪いだけのようだ。
弘のぞんざいな扱いに文句を言う事なく、従っている。
「とりあえず一報、送ったよ。後で位置情報も送らないと……」
またばちりと目が合って、小夜は慌てて目を逸らした。
流暢に喋るものだなーと思っていただけなのだが、その目を見ると、なんだか咎められてる気がするのだ。
「ロビンの目つきの悪さは筋金入りですからねえ」
「否定できないから困る」
その様子を見ていた弘の言葉に、ロビンがそう返す。
どうやら、意外と、軽い人たちなのかもしれない、と小夜は思った。
そもそも、今回とりあえず待ち合わせということで聞いていたので、蓬が人を紹介しようとしていたなんて初耳である。いや、音で聞いてるわけでもないけど。
せめてどんな人たちか教えてくれてもいいのに、と思いながら、スマホの画面から顔をあげて目の前の改札を見る。
丁度電車がやってきた直後なので、それなりの人が改札から出てきた。
そろそろ時間だが、さて、この中に蓬の言っていた人たちはいるのか。
じっと改札を観察していると、不意にばちっと外国人らしい眼鏡の青年と目があった。
その眼鏡の奥の冷や汗が出るほど鋭い目つきに、慌てて小夜は目をそらす。
しかし、ちら、と盗み見ると、彼は何やら隣の女性に小夜を示すような動作をして、その女性も一つ頷いた。
そして、そのまま黒髪をショートウルフにしたその女性がこちらに向かってくる。
小夜よりは少し年上だろうか、シンプルなデニム地のスキニーパンツに、上はややオーバーサイズ気味のパーカーを羽織っている。
「高里蓬と待ち合わせしてる、松波小夜さんですか?」
あー、字面しか見てないんだな、と小夜は一瞬にして悟った。
そして、その小夜の微妙な表情を察したらしく、女性が首を傾げる。
「あ、ええと、その、小夜って書いて、読みは、せれな、なんです……」
「え、ああー、はい、なるほど? セレナーデ……苦労されてますね」
すぐに答えに行き当たった上で浮かべられた同情的な苦笑に思わず、小夜はすみません、と返す。
女性の後ろに立っていた、先程目があった外国人がぼそりと小夜に聞き取れない音量で何か言うと、それを聞いた女性の肘鉄砲が吸い込まれるような勢いで、青年の上体に入った。
ものすごく痛そうだし、実際青年はけふけふと咳き込んでいる。
「失礼。わたしは唐国弘。こっちのもやしはロビン・イングラム。蓬さんからの連絡は受けてますよね?」
「あ、はい、遅れるって……」
「ひとまず近場のファミレスにでもいきましょうか。ロビン、蓬さんにも送っといてください」
「けほ……わかった」
そう言ってスマホを取り出す様子からして、このロビンという青年は、どうやら素の目つきが悪いだけのようだ。
弘のぞんざいな扱いに文句を言う事なく、従っている。
「とりあえず一報、送ったよ。後で位置情報も送らないと……」
またばちりと目が合って、小夜は慌てて目を逸らした。
流暢に喋るものだなーと思っていただけなのだが、その目を見ると、なんだか咎められてる気がするのだ。
「ロビンの目つきの悪さは筋金入りですからねえ」
「否定できないから困る」
その様子を見ていた弘の言葉に、ロビンがそう返す。
どうやら、意外と、軽い人たちなのかもしれない、と小夜は思った。
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