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5-2 夢の浮橋 side B
4 水闇き沢辺の蛍の影よりも
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「でも、それってあくまでロビンさんと先生が、そのリャナン・シーとしたって話なんですよね」
「うん。アイルランドの方とはいえ、善き隣人だから、彼らの祝福のあるボクと先生なら最悪その場でなんとかできるし、と踏んだ上での結論でね」
とした。つまり、見做した、ということである。
逆に言えば、何か要件が欠けていたから、わざわざ見做した、とも言える。それそのものなら、見做すも何もなく断言できるはずなのだから。
ただ、わざわざそのリャナン・シーと見做したというのに、織歌のところに持ち込まれた段で、それは単に女の人に憑かれた、となった。
まあ言われた時の状況と雰囲気とさっきの話から、紀美にもロビンにも要らぬ気を遣わせたみたいだが。
「でも、結局、私が対処した方がいいって事になったんですよね」
「そう。ここからは少し依頼人の沽券に関わる話もするけど、たぶんもう会わないだろうし、いいかな」
「別に言いふらしたりなんてしませんよ」
そう返した織歌を横目で見つつ、頬杖をついたロビンは今までより真面目な顔で続ける。
「あと、今後、少し似通った案件が出てくる事もあると思うから、こういう事に関わる以上、覚悟だけは常にしていてね」
「……はい」
ロビンの釘の刺し方が先程までと全然違うので、織歌は少し何が来てもいいように覚悟を決める。
「まず、ボクとセンセイは起きた事象から、リャナン・シーと見なすことに決めたのはさっきの通り。でもね、たぶんアレの正確なところは、生霊が彼のトラウマの影響を受けたんだと思う」
「生霊、ですか……六条御息所のような?」
うん、とロビンが頷く。
「ボクとセンセイがリャナン・シーにした、その影響がしっかり出れば善き隣人への対応策でどうにかなる、とも思ったけど、彼の身が保たないから時間はかけられない。だからオリカで収拾をつけた」
「なる、ほど?」
言いつつ織歌はまたチーズケーキを口に運ぶ。
レアではなくベイクドなのでほんのり香ばしい。
「で、六条御息所が出てきたなら話は早い。生霊を扱った場合、大小は事の次第によるけど、本体に何らかのフィードバックが発生する」
「ああ、はい、理解はできます。六条御息所も、それで自身が葵の上に取り憑いた生霊だと察するのですから」
その後を告げるのを躊躇う、というよりは言葉を選んでいるのだろう沈黙を挟んで、少し険しさの乗った表情でロビンは口を開いた。
「で、今回はおそらく最悪のパターンだった、と考えられる」
「最悪のパターン、ですか?」
「うん、ただ順を追って話そうか。積み上げなきゃいけないものを積み上げなきゃ、これは話が見えにくいからね」
軽く眼鏡を押し上げて、ロビンはそう言った。
「うん。アイルランドの方とはいえ、善き隣人だから、彼らの祝福のあるボクと先生なら最悪その場でなんとかできるし、と踏んだ上での結論でね」
とした。つまり、見做した、ということである。
逆に言えば、何か要件が欠けていたから、わざわざ見做した、とも言える。それそのものなら、見做すも何もなく断言できるはずなのだから。
ただ、わざわざそのリャナン・シーと見做したというのに、織歌のところに持ち込まれた段で、それは単に女の人に憑かれた、となった。
まあ言われた時の状況と雰囲気とさっきの話から、紀美にもロビンにも要らぬ気を遣わせたみたいだが。
「でも、結局、私が対処した方がいいって事になったんですよね」
「そう。ここからは少し依頼人の沽券に関わる話もするけど、たぶんもう会わないだろうし、いいかな」
「別に言いふらしたりなんてしませんよ」
そう返した織歌を横目で見つつ、頬杖をついたロビンは今までより真面目な顔で続ける。
「あと、今後、少し似通った案件が出てくる事もあると思うから、こういう事に関わる以上、覚悟だけは常にしていてね」
「……はい」
ロビンの釘の刺し方が先程までと全然違うので、織歌は少し何が来てもいいように覚悟を決める。
「まず、ボクとセンセイは起きた事象から、リャナン・シーと見なすことに決めたのはさっきの通り。でもね、たぶんアレの正確なところは、生霊が彼のトラウマの影響を受けたんだと思う」
「生霊、ですか……六条御息所のような?」
うん、とロビンが頷く。
「ボクとセンセイがリャナン・シーにした、その影響がしっかり出れば善き隣人への対応策でどうにかなる、とも思ったけど、彼の身が保たないから時間はかけられない。だからオリカで収拾をつけた」
「なる、ほど?」
言いつつ織歌はまたチーズケーキを口に運ぶ。
レアではなくベイクドなのでほんのり香ばしい。
「で、六条御息所が出てきたなら話は早い。生霊を扱った場合、大小は事の次第によるけど、本体に何らかのフィードバックが発生する」
「ああ、はい、理解はできます。六条御息所も、それで自身が葵の上に取り憑いた生霊だと察するのですから」
その後を告げるのを躊躇う、というよりは言葉を選んでいるのだろう沈黙を挟んで、少し険しさの乗った表情でロビンは口を開いた。
「で、今回はおそらく最悪のパターンだった、と考えられる」
「最悪のパターン、ですか?」
「うん、ただ順を追って話そうか。積み上げなきゃいけないものを積み上げなきゃ、これは話が見えにくいからね」
軽く眼鏡を押し上げて、ロビンはそう言った。
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