怪異から論理の糸を縒る

板久咲絢芽

文字の大きさ
上 下
70 / 266
3-2 肝試しと大掃除 side B

7 正常とは直ぐである

しおりを挟む
「まあ、禍々まがまがしい、つまり曲がったものはけがれであり、異常であるからってことになりますもんねえ……」

かり、とひろあめに歯を立てる音がする。

「と考えると、なおさんは自己修復能力が高……高いのかなあ?」
ひろちゃん、自分が行き着いた結論なんだから、そんなに怪しいなあって目でオジサンを見ないで。自信持って」
「面白いですよね、けがれは直すものであると同時に、はらうものでもあるとするなら」

――何が違うんでしょうか。
そう、織歌おりかが言うと、ルームミラーしにあきれたようなひろと目が合った。

「いや、ほんと、織歌おりかの吸収率なんなんでしょうね……」
「うん、オジサンも今ちょっと、昔の紀美きみくんと話してるのかなってちょっとゾッとしたわ……」

織歌おりかとしてはそんなつもりは一切なかったのだが。

「でも、でも、ひろちゃんも不思議に思いません?」
「んん、まあ、それはそうですけど」
「やっぱり、紀美きみくんに似てるわ~……」

直人なおとはそう言いながら、黄色の信号を前に減速させて止める。

なおさん、織歌おりかのこれは天然です」
「あー……なるほど、織歌おりかちゃん、そもそも紀美きみくんと波長が似てるってことかあ」

そっかあ、と直人なおとは何とも言いがたい表情でつぶやいた。

織歌おりかは予想とかあるんです?」
「うーん、さっきのひろちゃんの、伊邪那岐いざなぎみそぎのお話からすると、けがれってはらったと同時に補填ほてんすべきものであるのかなあ、とは思います」

織歌おりかとしては考えを正直にべてるだけで、なんの他意もない。
それに自分の持ってる能力が能力なので、この分野においては正しいと思われるべき推論を立てておかねば、織歌おりか自身が十全に機能するとも思えないのだ。

「……あー、この二件の生まれのタイミングを考慮して、まがに対するなおを自己修復ととらえるなら、確かにそうなるのかあ」
がれたあかけがれの化身みたいな神様になった一方で、その後生まれた神様は自己修復するための神様だったって事? そんなくほど、ごりごり垢擦あかすりしたんかねえ」
「んんんん、さっきああ言っちゃったけど、はあるべき形への復元っていう意味合いの強い語だから、自己修復とは限らない、のかなあ……」

ひろうなりながら言うと同時に、とうとう、がりん、とあめくだいた音がした。
それを聞きながら、織歌おりか織歌おりかで、なるほど、西の方の方言でに片付けるという意味合いがあるのはそういうことか、と納得する。

織歌おりか補填ほてんである説を取るなら、なおさん、自己修復というだけじゃなくて、いるだけで範囲回復魔法みたいなことになるのかなあ……そうなると、自覚した上でいてほしい感はありますね」
「用心棒のノリが、まさかそんなゲームのヒロインみたいな事になるとは思わなかったんだけど、オジサン」
「……今時ヒロインに限りませんよ、回復役ヒーラーって。某有名ゲームでも最初の方の作品ですでに回復技を覚える職業、男性もアリでしたし」

二つ目のあめを取り出しながら、ひろ容赦ようしゃなく突っ込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

怪異語り 〜世にも奇妙で怖い話〜

ズマ@怪異語り
ホラー
五分で読める、1話完結のホラー短編・怪談集! 信じようと信じまいと、誰かがどこかで体験した怪異。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

ツルバミ奇譚

織部浩子
ホラー
現代より少し昔。 ある屋敷に泊まり込んでいる主人公は、屋敷とその周辺で起きる様々な怪異に遭遇する。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

不動の焔

桜坂詠恋
ホラー
山中で発見された、内臓を食い破られた三体の遺体。 それが全ての始まりだった。 「警視庁刑事局捜査課特殊事件対策室」主任、高瀬が捜査に乗り出す中、東京の街にも伝説の鬼が現れ、その爪が、高瀬を執拗に追っていた女新聞記者・水野遠子へも向けられる。 しかし、それらは世界の破滅への序章に過ぎなかった。 今ある世界を打ち壊し、正義の名の下、新世界を作り上げようとする謎の男。 過去に過ちを犯し、死をもってそれを償う事も叶わず、赦しを請いながら生き続ける、闇の魂を持つ刑事・高瀬。 高瀬に命を救われ、彼を救いたいと願う光の魂を持つ高校生、大神千里。 千里は、男の企みを阻止する事が出来るのか。高瀬を、現世を救うことが出来るのか。   本当の敵は誰の心にもあり、そして、誰にも見えない ──手を伸ばせ。今度はオレが、その手を掴むから。

【語るな会の記録】鎖女の話をするな

鳥谷綾斗(とやあやと)
ホラー
語ってはいけない怪談を語る会 通称、語るな会 「怪談は金儲けの道具」だと思っている男子大学生・Kが参加したのは、禁忌の怪談会だった。 美貌の怪談師が語るのは、世にも恐ろしい〈鎖女(くさりおんな)〉の話―― 語ってはいけない怪談は、何故語ってはいけないのか? 語ってはいけない怪談が語られた時、何が起こるのか? そして語るな会が開催された目的とは……? 表紙イラスト……シルエットメーカーさま

二人称・短編ホラー小説集 『あなた』

シルヴァ・レイシオン
ホラー
普通の小説に読み飽きたそこの『あなた』 そんな『あなた』にオススメします、二人称と言う「没入感」+ホラーの旋律にて、是非、戦慄してみて下さい・・・・・・ ※このシリーズ、短編ホラー・二人称小説『あなた』は、色んな"視点"のホラーを書きます。  様々な「死」「痛み」「苦しみ」「悲しみ」「因果」などを描きますので本当に苦手な方、なんらかのトラウマ、偏見などがある人はご遠慮下さい。  小説としては珍しい「二人称」視点をベースにしていきますので、例えば洗脳されやすいような方もご観覧注意、願います。

処理中です...