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3-1 肝試しと大掃除 side A
12 media ‹名› 中性・複数・主格または対格 あるいは
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「ふむ、藤代さん」
「は、はい?」
恭弥ぐらいしか例をわかっていないことに気づいた弘に声をかけられて、悠輔はなんか文句でも言われるのかとちょっと思う。
「先程、津曲さんから聞きましたが、法学部だそうで」
「あ、はい……といってもそんな、弁護士とかそういうしっかりした職に就く気は……」
「いえ、そういうツッコミどころを探してるわけではなく」
そんなん目指してるのに何してんだ、という糾弾をするつもりではない、と弘は端的に言って続ける。
「法を学んだからこそ得られた視座、ありますよね。手っ取り早く言えば、現実での行為において、法を犯すか否かのラインがより細かく見えるようになったのでは?」
「それは……うん、そう、ですね」
「そういうことです。そうした認識が力場に志向性を与えてしまう。それが一時的なこともあれば、恒久的なこともある……と、わたし達の先生は言っておりまして」
「あ、一般論じゃないんだ……」
思わず、といった様子で呟いたのは、都子だった。
弘も少し困ったような表情で笑う。
「そうなんですよ。先生が唱えている説でして……師事している以上、わたし達はそれに従う側なわけで……まあ、どの説であっても、常に一貫した再現性があるわけではないせいで定説が確立できないんで、だからこそのオカルトではあるんですけど」
はは、と乾いた笑い声がその口から漏れる。
言い方からして、この考え方自体も少数派な考えのようだ。
弘は気を取り直すように小さく咳払いをする。
「まあ、それはそれです。その認識がその場でどれほど意識されて、かつ重みをつけられているか、そもそも、その認識がどれだけの人間の意識上で一般化しているか、というあたりが志向性の決定を担う……とは先生の言です。その上で言わせていただきますと、今回独断専行に走ったお二人には命惜しくば、今後は自分から首を突っ込まないことが身のためです」
絶対零度から春一番程度に緩められた視線がへたりこんでいる恭弥と、蹲った態勢のままの深雪に向けられる。
「り、理由は?」
深雪の言葉に、弘は首を横に振って口を開いた。
「……先程の話の通り、今回、逆にわたし達がこの場にいた事でかかった補正があることは否めません。そして、だからこそ、お二人に変に自覚を持ってもらっても困るんです。下手すれば日常生活に支障をきたしますよ」
「……逆に言えばさ」
そう口を開いたのは恭弥である。
「さっきの俺と唐国ちゃんとの会話で、唐国ちゃんが反応したことがそれにつながるってことだよな?」
一気に弘が苦虫を噛み潰した表情を見せる。
というかさっきまで説教の余韻で情けない姿を見せていたというのに、なんという呼びかけ方を、そういえばこいつは怖いもの知らずだったんだった、と悠輔はちょっと頭を抱えたくなる。
都子も呆れた視線を送っている。
「確か、俺たちの学部・学科の話をした時だよな、唐国ちゃんが反応したの」
それを聞いて悠輔はちょっと意外に思いつつ、考えてみる。
悠輔は法学部で、都子は英文科、恭弥と深雪はメディア学部の学科違いである。
「……どっかに頭打って都合よく記憶喪失にでもなってくれませんかね」
その拳を握りしめて弘がそう呟いたので、悠輔はそれ以上深入りするのを諦めることを決めた。
「は、はい?」
恭弥ぐらいしか例をわかっていないことに気づいた弘に声をかけられて、悠輔はなんか文句でも言われるのかとちょっと思う。
「先程、津曲さんから聞きましたが、法学部だそうで」
「あ、はい……といってもそんな、弁護士とかそういうしっかりした職に就く気は……」
「いえ、そういうツッコミどころを探してるわけではなく」
そんなん目指してるのに何してんだ、という糾弾をするつもりではない、と弘は端的に言って続ける。
「法を学んだからこそ得られた視座、ありますよね。手っ取り早く言えば、現実での行為において、法を犯すか否かのラインがより細かく見えるようになったのでは?」
「それは……うん、そう、ですね」
「そういうことです。そうした認識が力場に志向性を与えてしまう。それが一時的なこともあれば、恒久的なこともある……と、わたし達の先生は言っておりまして」
「あ、一般論じゃないんだ……」
思わず、といった様子で呟いたのは、都子だった。
弘も少し困ったような表情で笑う。
「そうなんですよ。先生が唱えている説でして……師事している以上、わたし達はそれに従う側なわけで……まあ、どの説であっても、常に一貫した再現性があるわけではないせいで定説が確立できないんで、だからこそのオカルトではあるんですけど」
はは、と乾いた笑い声がその口から漏れる。
言い方からして、この考え方自体も少数派な考えのようだ。
弘は気を取り直すように小さく咳払いをする。
「まあ、それはそれです。その認識がその場でどれほど意識されて、かつ重みをつけられているか、そもそも、その認識がどれだけの人間の意識上で一般化しているか、というあたりが志向性の決定を担う……とは先生の言です。その上で言わせていただきますと、今回独断専行に走ったお二人には命惜しくば、今後は自分から首を突っ込まないことが身のためです」
絶対零度から春一番程度に緩められた視線がへたりこんでいる恭弥と、蹲った態勢のままの深雪に向けられる。
「り、理由は?」
深雪の言葉に、弘は首を横に振って口を開いた。
「……先程の話の通り、今回、逆にわたし達がこの場にいた事でかかった補正があることは否めません。そして、だからこそ、お二人に変に自覚を持ってもらっても困るんです。下手すれば日常生活に支障をきたしますよ」
「……逆に言えばさ」
そう口を開いたのは恭弥である。
「さっきの俺と唐国ちゃんとの会話で、唐国ちゃんが反応したことがそれにつながるってことだよな?」
一気に弘が苦虫を噛み潰した表情を見せる。
というかさっきまで説教の余韻で情けない姿を見せていたというのに、なんという呼びかけ方を、そういえばこいつは怖いもの知らずだったんだった、と悠輔はちょっと頭を抱えたくなる。
都子も呆れた視線を送っている。
「確か、俺たちの学部・学科の話をした時だよな、唐国ちゃんが反応したの」
それを聞いて悠輔はちょっと意外に思いつつ、考えてみる。
悠輔は法学部で、都子は英文科、恭弥と深雪はメディア学部の学科違いである。
「……どっかに頭打って都合よく記憶喪失にでもなってくれませんかね」
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