怪異から論理の糸を縒る

板久咲絢芽

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3-1 肝試しと大掃除 side A

7 vacuum

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風が吹き止むと同時に、脇の部屋に飛び込んだひろがひょっこりと姿を現す。

「はー、気持ち悪かった……お二人は大丈夫です?」
「あ、はい」
「う、うん、大丈夫、です」

――気持ち悪かったって、それだけで済むんだ。
最初、ひろ織歌おりかにマイペースすぎると言っていたが、ひろも比較的マイペースなんだな、と悠輔ゆうすけは感じ始めていた。

同時に、あの不安感に納得する。
ド天然マイペースの織歌おりかと、高性能マイペースだろうひろに大丈夫と言われたところで、説得力が感じられなかっただけの話だ。

織歌おりか、このまま四階に行ってもらっていいですか? こっちで保護できたのは一人なので、おそらくもう一人は四階に」
「わかりました。お二方もお願いします」

とはいえ、こうしてテキパキと指示をされると、この二人が専門家であることに説得感が生まれる。

「あの……」
「ああ、四階にいるのは勾田まがた深雪みゆきさんの方です。津曲つまがり恭弥きょうやさんは保護してるので、これからお説教けん抜かした腰を直してきますんで」

そう言って、身をひるがえしたひろはとっとと向こうの端の方に行ってしまった。
一方、織歌おりかすでに、さっき来た階段の上りの方に向かっている。

賢木さかきさん、唐国からくにさんは」
ひろちゃんなら、大丈夫ですよ。三階はもうひろちゃんだけで大丈夫なぐらいに安全ですし」

軽く振り返ってそう言いながら、織歌おりかは階段を上る足は止めない。
このまま置いて行かれるというのは、あまりにも怖いので、悠輔ゆうすけ都子みやこは一度顔を見合わせてからその後ろに続く。

「……あの、賢木さかきさん」
「はい、なんでしょう」

沈黙をやぶったのは都子みやこだった。

「さっき何か言ってたのって」
「ああ、あれですか。先生が作ってくださった用の呪文みたいなものです」

私達、という言葉が悠輔ゆうすけには少しばかり引っかかった。
さっき一瞬だけ見えた黒い髪の人影を指すのか、ひろを指すのか。
ただ、都子みやこもあの人影を見たのかはわからないし、下手に言って怖がらせるのも気が引ける。

そう、所詮しょせん悠輔ゆうすけはヘタレの意気地なしなのである。自分で思ってて悲しいけど。

ひろちゃんは最終兵器リーサルウェポンなんて言いましたけど、どちらかというと私、掃除機なので」
「掃除機」

思わずといった様子で都子みやこが繰り返す。
悠輔ゆうすけとしては、掃除機に霊的現象といえば、ゴーストをバスターする古い映画とか緑の弟のマンションのゲームが脳裏をチラつく。
新しい映画の方だと掃除機要素がなくなったみたいな事を聞いた気もする。

そうしている内に、三人の足は四階の廊下を踏んだ。
気のせいか、少し空気が冷たく、どろりと重くなったように感じる。
イメージはそう、小学生の時に作ったりもしたスライムである。

「ああ、そうでした」

織歌おりかがそう声をあげた。
完全に言い忘れていたというていである。

、なんにも心配しないでくださいね?」

振り返ってにっこりと笑いながらそう言う織歌おりかに、ああ、特に何もなしで終わるわけじゃないんだな、と悠輔ゆうすけは思った。
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