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閑話1 コックリさん(事後処理)

序 不審者との邂逅

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ひぐらしの声がどこからか聞こえて来る住宅街の片隅。
その月極つきぎめの駐車場のさらに片隅の自販機で、晴人はるとは困惑したまま十円玉をコイン投入口に入れた。

――ちゃりん

、その音がした。
自販機の釣り銭口を困惑のままのぞき込めば、やはりまた入れたはずの十円玉が落ちている。
晴人はるとはため息をついて十円玉を取り出そうと指を伸ばした。
しかし、指が触れた瞬間、

「あつっ」

夏場だから、静電気というわけでもないだろうが、ぴりっとしびれるような、熱いような痛みが指先に走り、反射的に指を引く。
その勢いでつり銭口からねた十円玉は、そのくすんだ色とは正反対の、澄んだきんっという音を立ててアスファルトに落ちて、そのまま転がっていく。

一瞬、このままマンホールに落ちてしまえば、使、という邪道な考えが晴人はるとの脳裏をよぎる。
しかし、その邪道な希望は、そこに立っていた人の靴の爪先つまさきに当たってついえた。

「これ、キミの?」

その人はかがんで十円玉を拾い上げると、それを晴人はるとに差し出して近付いてくる。
黒いロングカーディガンを羽織はおり、だぼついてゆったりとしたサルエルズボンをいた姿はどこかのチャラい売れないバンドマンのようにも見える。
が、それにしてはいつの間にいたのか晴人はるとがわからないほど存在感というものが希薄で、何より雰囲気がロックをやっているにしてはやわらかすぎたし、アクセサリーのたぐいは一切つけていない。
ゆるりと余裕を持たせてたばねた色素の薄い髪を肩から胸元にらした姿は女性的な印象も持たせるが、その胸元辺りを見れば男性のように思える。
声色も男性にしては高く、女性にしては低い、といったところで、よくわからない。
なんだか、ちぐはぐで、なのに不思議と調和していて、そして何より、晴人はるとの頭の片隅では警告灯が光っていた。
他の何より突出した印象として、胡散臭うさんくさいのだ。
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