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昔話1 ロビンの話

Good fellows' Robin 6

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ロビンが見たものについて、僕には心当たりしかない。今じゃ、さっきみたいに、ほんの一瞬だけ、匂いを感じるぐらいなのに。

「そんなに、僕のまわりには何もない?」
「……よくわかんないののほかは、見えないよ? なんか、あらしとおんなじにおいだって言って、よけてる」

「あらしのにおい」というのはよく分からないが、ロビンの言うを、明確にしておいた方がいいか。

「ふむ、ねえ、ロビン、って、善き隣人達good fellows?」
「うん」

ですよね、知ってた。
そうみしめていると、シンシアがお盆に乗せたサンドイッチを持って来て、テーブルに置いた。

「ちょっと待ってなね、スープもあるから」
「手伝う?」

立とうとすると、無言で目だけで制された。
そのまま、すとんと座り直すと、くすくすとロビンが笑った。
どうにか心は開いてもらえたらしい。
その様子を見てシンシアが笑う。

「おや、もうそこまで仲良くなったのかい?」
「僕のそばは居心地いごこち良いみたいだよ」
「この上なく不審者なのに?」
「うーん、正論……」

否定はしない。否定できるほどの材料がない。
結局のところ、英国ここは僕にとって外部awayなのであって、英国ここにとっても僕は部外者なのである。つまり余所者よそものだ、余所者よそもの
警戒してしかるべきだし、日本homeでのあつかいを考えても、僕は軽薄な胡散臭うさんくさいやつという印象しかないようなので、尚更なおさら警戒してしかるべきである。
君子あやうきに近寄ちかよらずで言えば、マジで距離をたもって棒でつついて、安全か確かめるべきである。いや、棒でつつくのは対象が地雷だとヤバいな、うん、遠くから本当に小さな小石を投擲とうてきするぐらいで丁度いいのでは。
考えてて、「果たして僕はそこまで胡散臭うさんくさいのだろうか、胡散臭うさんくさくなくない? いや、今まで見た反応、全部胡散臭うさんくさがられてたな……」などと、一人思考のドツボにハマり出した頃合いに、シンシアがスープをお盆に乗っけて持ってきた。

「……あんたたち、何してんのさ」

シンシアの言葉に、ちらりと横を見れば、どうやらロビンは考え込んでいた僕を、そのままじっと見ていたらしかった。

「いや、ちょっとばかり自分の不審者度がどんなもんかと……」
「安心しな、そう言ってる時点で、無限大だよ」

容赦ないシンシアの一言が突き刺さる。
いや、不審者と自覚してる時点で、と言われればそれまでなんだけど。

「ほら、ロビン、冷める前におあがり」

シンシアにそう言われて、ロビンは初めてスープに口をつけた。

「で、、あんたはロビンをどう見てるのさ」
「ん? 逸材」

端的にそう返して、サンドイッチを一口かじる。
チーズオムレツのサンドイッチは冷める前に食べるのがやっぱり一番だ。

「逸材って」
「だって、僕だって見えないものを見てるし?」

ロビンが僕のまわりにいると言ったに僕は心当たりがあるし、気配は感じる。場合によっては匂いも。それでも、
どれだけ僕自身がそれを見たがったとしても、見えない、あるいは見えるべきでない、のだ。

「こっちでは、天才genius神から与えられたものgiftedって言うんだっけ? それなら、これは善き隣人達からの贈り物good fellows' giftってとこ?」
「どう聞いても不吉な意味合いにしか聞こえないヤなやつだね」
「でも事実ってもんは変わらないぜ、シンシア」

それに、他にも気になる事はいくつかある。
一生懸命、スープをすくって食べているロビンに視線を向けつつ、口を開く。



びくっとロビンが身を震わせた。
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