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1-1 逆さまの幽霊 side A
9 織歌の仮説3
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「ロビンさんは私よりも耐性がありますから、たぶんほとんど無かったはずです」
織歌はロビンの方に視線を向けた。
「そうだね、それはボクにはなかった。でも、オリカ、その耐性の意味、単純にこういう怪異を見る事を指した耐性、ではないね?」
補足するようなロビンの指摘に、織歌が一つ頷いた。
「はい。これは、私の特性が特性だからわかる、というのもあります。コレに害らしい害はそこまでありません。けれど、この湧き上がる恐怖に近い感情、そもそも私自身のものではありませんし、真由さんの感じたそれも真由さん自身のものではありません」
「……はい?」
隣でわずかにああ、とロビンが声を上げていたが、真由には理解できなかった。
「Synchronize……一般的には憑依とか言った方がいい……のかな。共感とは違うね……うん、共鳴と言うのが相応しいかも」
ロビンがそう悩み悩み口にする。
それを聞いて、真由にもようやくなんとなくの理解ができた。
「この感情は私のものでもありませんし、真由さんのものでもありません。コレに引っ張られたものです。でも、それなら、この感情は誰のものでしょう」
「……えっと、飛び降り自殺した、生徒?」
唐突な話の流れの変化に頭が追いつかない真由には、これまでの話の登場人物から、それしか思いつかない。けれど、織歌は首を横に振った。
「いいえ、その人のものでもありません。そうであれば、外側から見たロビンさんが『こっちからはあんまり』なんて言わないのです」
そういえば、校舎をぐるりと周ってきたらしいロビンは戻ってすぐにそう言っていた。
真由がロビンの方を見ると、それに気付いたロビンが頷いて口を開く。
「オリカが避雷針なら、ボクは斥候。というのも、ボクは見る事に長けてるから。正確には目の機能が、だけどね」
「ええ、そのロビンさんが外側で『こっちからはあんまり』なんて言ったということは、外側からコレをはっきりとは見る事ができなかったということです。飛び降りた本人の想念が志向性を与えたものであれば、その飛び降りの経路上に、他にも影響を与えて然るべき、です」
織歌の言葉で、真由はロビンが一階でじっと踊り場の窓を見上げていたことと、二階を過ぎた辺りで口にした問いを思い出す。
「……どうして、四階だけって、そういう事、ですか?」
「そう。外の着地点になるはずの場所、一階と二階、二階と三階のそれぞれの踊り場の窓、全てにおいて、ボクはコレに類するものを何も見なかった」
ロビンが真由が思い至った点を肯定する。
「本人の思念であるなら、それは不可解だ。文化的に四と死を同音とする日本人の怪談において、数字が四に寄るものだとしても、踊り場であって、明確な四階ですらない。だから、これはウワサが語られている内に、無意識に話が改造された結果でもない」
整然とロビンが言う。織歌は正しくその通りと言いたいように、こくこくと頷いている。
「だから、本人であるとしたら、辻褄が合わないのです。そして、その説明されないチグハグさが恐怖と異質性を、より煽っていると考えられます」
「えっと、じゃあ、結局、誰……?」
真由の中で、やはりアレは単に幽霊だった方が良かったのではないか、という後悔に近い考えが渦を巻いていた。
織歌はロビンの方に視線を向けた。
「そうだね、それはボクにはなかった。でも、オリカ、その耐性の意味、単純にこういう怪異を見る事を指した耐性、ではないね?」
補足するようなロビンの指摘に、織歌が一つ頷いた。
「はい。これは、私の特性が特性だからわかる、というのもあります。コレに害らしい害はそこまでありません。けれど、この湧き上がる恐怖に近い感情、そもそも私自身のものではありませんし、真由さんの感じたそれも真由さん自身のものではありません」
「……はい?」
隣でわずかにああ、とロビンが声を上げていたが、真由には理解できなかった。
「Synchronize……一般的には憑依とか言った方がいい……のかな。共感とは違うね……うん、共鳴と言うのが相応しいかも」
ロビンがそう悩み悩み口にする。
それを聞いて、真由にもようやくなんとなくの理解ができた。
「この感情は私のものでもありませんし、真由さんのものでもありません。コレに引っ張られたものです。でも、それなら、この感情は誰のものでしょう」
「……えっと、飛び降り自殺した、生徒?」
唐突な話の流れの変化に頭が追いつかない真由には、これまでの話の登場人物から、それしか思いつかない。けれど、織歌は首を横に振った。
「いいえ、その人のものでもありません。そうであれば、外側から見たロビンさんが『こっちからはあんまり』なんて言わないのです」
そういえば、校舎をぐるりと周ってきたらしいロビンは戻ってすぐにそう言っていた。
真由がロビンの方を見ると、それに気付いたロビンが頷いて口を開く。
「オリカが避雷針なら、ボクは斥候。というのも、ボクは見る事に長けてるから。正確には目の機能が、だけどね」
「ええ、そのロビンさんが外側で『こっちからはあんまり』なんて言ったということは、外側からコレをはっきりとは見る事ができなかったということです。飛び降りた本人の想念が志向性を与えたものであれば、その飛び降りの経路上に、他にも影響を与えて然るべき、です」
織歌の言葉で、真由はロビンが一階でじっと踊り場の窓を見上げていたことと、二階を過ぎた辺りで口にした問いを思い出す。
「……どうして、四階だけって、そういう事、ですか?」
「そう。外の着地点になるはずの場所、一階と二階、二階と三階のそれぞれの踊り場の窓、全てにおいて、ボクはコレに類するものを何も見なかった」
ロビンが真由が思い至った点を肯定する。
「本人の思念であるなら、それは不可解だ。文化的に四と死を同音とする日本人の怪談において、数字が四に寄るものだとしても、踊り場であって、明確な四階ですらない。だから、これはウワサが語られている内に、無意識に話が改造された結果でもない」
整然とロビンが言う。織歌は正しくその通りと言いたいように、こくこくと頷いている。
「だから、本人であるとしたら、辻褄が合わないのです。そして、その説明されないチグハグさが恐怖と異質性を、より煽っていると考えられます」
「えっと、じゃあ、結局、誰……?」
真由の中で、やはりアレは単に幽霊だった方が良かったのではないか、という後悔に近い考えが渦を巻いていた。
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