彼女たちに消費されている僕。彼女たちは浮気だ寝取られだと僕を挟みながら最後には激情して去っていく。消費することされること。その循環に閉じこ

ねんごろ

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消費する ⇔ 消費される(彼女 ⇔ 僕)思い込み↺

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 僕はルックスがいい。これは主観的・客観的な事実として明らかであることは、時間の経過とともに証明されてきたことだ。小学生のころにはすでに複数人の女子と同時並行的に恋愛をしていたし、中学生に上がるころにはすでに、年上年下関係なしに、ありとあらゆる場所で、方法で、タイミングで性行為を繰り返していた。

 

 なかには男性もが僕のことを好きになってくれることがあって、そういうときに僕は、まるで百合漫画の世界かのように甘美な男同士の恋愛をできていたと思う。BLの雰囲気に傾倒している感じではなくて、あくまで上質な百合漫画のような雰囲気。そこには自らで言うのもなんだが、神秘的な感情が相互的に沸き起こり、それに満たされていたように思う。

 

 常に激しい情熱的な恋をしていた、というわけでは決してない。もちろん最初の恋愛では、かなり感覚がシャープに敏感になっていたから、これが真実の愛だなんて、物語に出てくるような理想的な心境において、その甘美な状況に陶酔していた時分もあった。



 しかしそれは、ごくごく初期のほうで、梅雨に猛暑日が続いたせいで早く枯れてしまった紫陽花のように儚く消え去ってしまった。あっさりと、なんの未練も少しも恋愛側は残していかないで……。僕だけがその名残のようなものに囚われる期間というのが、現在に至るまでずっと続いている。(ここでいう僕だけ、という意味は、恋愛と僕を対比させた場合の表現であることに留意してほしい。)



 いってしまえば、僕は恋愛的な感情や性的な感情に鈍感になってしまったのかもしれない。物理的な現象として摩擦が徐々に何かしらの形態を変化させていくように。



 しかし、そこには失われていくものに合わせて単調に増加していく熱(何か)が生まれていく。失われる側面があれば、生み出されていく側面もある。それは人が自覚している、していないにかかわらず、自然の絶対的な法則として存在している。



 ただ、僕のその心に対する摩擦を考えてみる。どんどんと鈍感になっていく恋愛的・性的感情。それは時間と経験の密度に関係して単調に減少しているように思われる。失われていくもの。自覚的に失われていくもの。そして……。そこには何が逆に生み出されていく? 



 そのようなことを考えたときに、僕は往々にして何も思いつかないのだ。主観的には何も。何も僕に実際的な影響を与えそうなものが生み出されていないように思えてしまうのだ。それは客観的に見つめれば、間違っている現象なのかもしれない。



 ただ、僕は僕を客観的に見ようとすることはできても、客観的に見ることはできない。思考において、主観性が重石のように覆いかぶさっていて、そのなかに辛うじて客観性が見いだせる、というふうな具合でしか考えることができないのだ……。



 もちろん、ここには概念としての言葉の解釈による相違は発生することだろう。ただ私が言いたいことの軸はぶれることはない。




『何かが擦り減ってしまう実感があれば、僕はそこに擦り減っていくものしか把握できないということだ。一度に複数の現象を同時に捉えることができないのだ。それがネガティブな現象であれば、あるほど。それは一つのことのみに焦点を当てていってしまう。そしてそれが、それだけが、僕の存在を決定し始めているのだ、と。それが僕という存在なのだ、と……』



 ……



 ……



 ……



 そのようになってしまえば、僕はもう『消費されている』という認識をしてしまうのだろう。ひたすらに、消費をされることを繰り返して、その循環のなかで、川のなかを転がり続ける石のように、角を丸くしていくのだろう。



 感じやすい心から感じにくい心へ……



 精神の角を丸くしていくのだろう……



 

 そして、そのような気持ちでいる僕であるからこそ、そのような女性しか最近は寄ってこなくなった。僕と対等な関係を構築しようと思ってやってくる人は少しもいなくなってしまった。(もしかすると、それは僕の思い違いかもしれないが。)



 僕はすでに大学3年生になってしまって、その頃にはかなりの心をすり減らしてしまっていた。すでにその具体的な心のイメージを思い浮かべることができないほどに、思考にぼんやりとした靄のようなものが纏わりついていた。




『僕は僕による選択的行動がもうすでに行えない領域まで達しているのかもしれない。他人と他人の間で転がされ続けている存在。それが自己という認識。すでにそれは完全な球形に達していて、もう何も角をとることができないような状況。そしてそれは、その状態を維持しながら、だんだんと半径を小さくしていって、最後に僕は何も考える力なく消えてしまうんだ。自分が死ぬんだということすら理解しえないまま、生きているかもわからないような状態で……』




 ……



 ……



 ……




「F君は最近楽しかったことはある?」

「なにも」

「そうなんだ……。えっと、何かしてほしいことはある?」

「なにも」

「えっと……。セックスしていい?」

「いいよ」




 

 時々、僕は何のために女性を受け入れているのだろうと考えることがある。その消費されることの循環のなかで。



 そのなかで、僕はもしかすると、相手の女性の何かをまた、僕と同じように、すり減らしているのではないかと考えることがある。しかし、そのすり減らしているものの具体的な像をイメージする心は、この循環のなかで等しく擦り減ってしまっているようだった。



 思い返せば、僕にはこれといったトラウマも何もない。気持ち悪い思いをしたことも、恐ろしく怖い思いをしたことも少しもなかった。それなのに、僕はいまどうしてこんなにも、不必要に思えるほど、リアルタイムの無気力感に覆いつくされているのだろう。



 女性とのエッチにおいても、それ自体にしか興味は向かない。女性の振ってくれる話にも、その起伏に富んだ表情にも、体は反応しない。女性からの感情的要素が少しも僕に入力されていない。



 そこにあるのは、女性の肉体と僕の肉体。そして女性器と男性器の表出。重なり合い。それだけがあり、それだけに集中している。無気力のなかの唯一の実感……。



 僕はもしかすると、詰め込みすぎたのかもしれない。ありとあらゆることを。短期間で。その代償として、僕は僕でも非常識に思えるような行動や、思考を、何の抵抗もなく行えてしまう。それに少しも抗うことができずに……。



 僕は……




『彼女たちに消費させることを強要して消費されていると思い込んでいる?』




 消費とはなんだろう。それは消費されていると思う存在があるだけで成り立つ概念なのだろうか。



 それとも、消費している自覚者と消費されている自覚者が同時に、それぞれの意思疎通なく存在しているときに、成り立つ概念なのだろうか。



 それとも、消費という概念が適応される対象とは別の、独立した中立的な立場の存在が、分析的に状況を把握して、初めて成り立つ概念なのだろうか……?



 消費されていると思って、どうしてそれがこんなにも僕の不幸感に結びついてしまっているのだろうか?



 ……



 ……



 ……



 ああ、そうか。僕は不幸なのか。自らの問題で勝手に自ら進んで不幸になっているのか。しかし、やめられない。



 消費されるという思い込みの循環のそのドラッグ的性質から……



 循環のなかに閉じ込められた存在。




「入れるね……」

「……」




 僕は彼女のなかに入っていく。



 いや、彼女たちのなかに、また入っていく。



 僕の観測のもとにおいて……



 彼女たちの消費の、循環のなかへ。



 消費される循環のなかへ。




 ピストンのように周期的な音がベッドの上で鳴り響いている。その感触はすでに蜃気楼のようにぼやけて鮮明さを失っている。



 彼女の表情に負の微小量を乗算した、僕の感情。



 全ての目にする概念に、負の微小量が乗算されていってしまう僕のこころ。



 こころ……



 心……




「はぁあああああああああああああんっ!!!!!!!!!」




 彼女たちの総体のように総合化された喘ぎ声が、僕に向けられた。



 叫びながら噛みつく彼女たち。



 無気力な僕。されるがままの僕。



 僕という、擦り切れてしまった、あとは小さくなり続けるしかない、存在。



 目の前に映る猛獣のような、感情の総体。独立的存在を通り越した、総体的存在。



 その感情の集合体が僕を飲み込んでいく。果てしなく深い、消費される循環のなかへ。それはとてつもない強制力を持っていて、僕を閉じ込めて離さない。



 僕だけの循環が、そこにはあって、僕は僕だけにしか理解しえない循環の閉塞感に心を漆黒に塗りつぶされてしまう。いや、僕でさえも理解できない僕が、僕を閉じ込めてしまう。




 僕



 ぼく



 ……



 ……



 ぼく?




「はぁあああああああああああああんっ!!!!!!!!!」




 彼女たちが僕を覆いつくす。



 そしてそれを繰り返す。



 彼女たちは繰り返す。



 僕は繰り返す。



 その循環のなかで。



 果てしなく、どこまでも……



 どこまでも……



 ……



 ……



 ……



 同じところをぐるぐると回り続ける。





「ねぇ……。毎回同じことしてるのに、私たちってどうしてこんなにも気持ちくて幸せな心地になれるのでしょうね」



 

 彼女たちは、みんな揃ってそのようなことを言う。



 私たち。



 もちろん、そこに僕は含まれていない。僕の観測のもとでは、含まれていない。



 僕。



 僕は同じところをぐるぐると回り続けている。



 ぐるぐると……



 消費される観念のもとで。



 ぐるぐるとぐるぐると……



 いついかなるときも。



 ……



 ……



 ……




「僕だけはとんでもない思い込みのなかに生きてしまっているみたいなんだ」

「えっ?なに?思い込み……?あああんっ!!!!!!」




 彼女たちの幸せそうな声が、僕のもとで観測された。



 僕はそこに消費の構造を、極めて個人的な意味で見出していた。



 僕は二度と幸せになれないのかもしれない。




「はぁああああんんっ……」




 僕という存在に。



 幸せになるための思考に、負の微小量が無条件で乗算され続けている。




【完】
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