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ケダモノ!!!
しおりを挟む俺は今、非常にまずい状態に置かれているのかもしれない。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさ―――」
俺の目の前では同クラの佐伯知佳さんがひたすらに謝り続けている。
一体何に対して謝っているのだろうと俺は不思議でならない。
というのも、今まで俺は佐伯さんと全くと言っていいほど関わることがなかった。皆無といってもいい。
クラス内では、ああ……佐伯さんの声、久しぶりに聞いたなって。授業中に佐伯さんの存在を再認識する程度の関係だった。これを関係と言ってもいいのかは定かではないが……。
とにかく俺は平静を装いながら、目の前にいる佐伯さんに対処する必要があった。
「佐伯さん……。そろそろ落ち着いて頂けませんか? これだとお話をすることもできませんし」
「ごめんなさいごめんなさいごめ………。そ、そうですよね。ごめんなさいごめんなさいごめ―――」
だめだ。佐伯さんはまた新しい謝罪を始めてしまった。今回の謝罪の意味はなんとなくではあるが理解できるけど……。
このままでは埒が明かないな。
俺は思い切って佐伯さんの肩を抑えることにした。
言葉で静止できないのなら、物理的に干渉して静止させるまでだ。
女の子に対してはいささか乱暴な行動ではあるが……。
やむを得ず……だ。
「佐伯さん!! 少しだけ俺の話を聞いてもらえませんか!」
あ……。佐伯さんの肩、小さい、小さすぎる……。少しでも力を強くしたら折れてしまいそうなほどにか弱い肩だ。
大丈夫だろうか、強く掴みすぎたりしてないかな……
俺は少しだけ後ろめたい気持ちを抱きながらも、佐伯さんの謝罪を止めるべく肩を優しく(主観)抑えつけた。
「はっはぅぅぅ………」
俺の手が佐伯さんの肩に触れるや否や、彼女から可愛らしいうめき声が漏れる。しかし、なぜかその声がちょっとだけエロく思えるような気がしてならない。
どうしてだ??
「すみません。ちょっと強引にいかせてもらいました。肩、痛くないですか?」
「は、はい……。はわ、はわわわわわっ」
「そうですか、良かったです」
佐伯さんは謝罪を止めて落ち着いてくれたようだが、今度は別の意味で落ち着きをなくしている。
もしかして佐伯さん、対人スキルゼロだったりする?
俺の頭にふとそんな考えがよぎる。この様子からすると、十分に考えられる帰結だ。
しかし、ここで俺が躊躇っていては話が一向に進まない。ここは強引にでも進めさせてもらおう。
「佐伯さん。一つ聞きたいのですが、どうして今日はわざわざ俺の家に来てくれたんですか?」
「そ、それは。その……。今日は直樹君が珍しくお、お休みだったから、学校の先生も心配していて。直樹君、学校に何の連絡もしてなかったでしょ?」
「あっ……忘れてたわ。はははっ」
な、なんということだ。今日の俺、不良ちゃんだ!!
しかもその間にズッコンバッコンしていたというのだから、不良のなかの不良だな!!
なんかいけないことだけど、自分が誇らしいよ!!
「そ、それでね。明日から土曜日でしょ。今日の宿題、結構多かったから……。直樹君が週明けに学校に来てから宿題を慌ててやるのも大変だと思って。わ、私が……その代表して届けにきたの……」
佐伯さんは火照った顔を見られないようにうつむきながら、一言一句をとても丁寧にしゃべってくれた。
ああ、佐伯さんマジでかわいい……
目の前にいるのは女神様ですか??
清楚で純粋な目の前の女の子と向かい合っていると、自然と心が浄化されていくような気がしてしまう。いや、実際にこれは浄化されていると思う。
「ああ……そういうことだったんだ。ありがとう、佐伯さん。本当に助かったよ」
「い、いえ……。私は当然のことをしただけだよ。えへへへ……」
佐伯さんが恥ずかしそうに照れながらも、天使のような笑みを控えめにこぼしている。
S!M!T! SMT!!!
佐伯さん! まじ! 天使!
俺は自動的にとある有名な異世界転移〇に戻り系ラノベの主人公のセリフを少しだけ弄ってから引用した。
「なんか……こうやって佐伯さんと二人で話すの初めてだね。同じクラスメイトだったのに」
「そ、そうだね……」
「だからさ、これからはもっとたくさんお話しようよ。俺、もっと佐伯さんと仲良くなりたいな」
「あうぅぅ………。そんな面と向かって言われるなんて。は、恥ずかしいです」
「はははっ。俺もちょっと恥ずかしかった」
俺は目の前にいる天使のような存在と会話を楽しんでいる。
改めてみると佐伯さんはとても整った顔立ちをしている。
雰囲気もとても和やかだ。
髪は黒髪ロングで、艶やかな光沢がとても魅力的だ。
肌はとても白くていかにも太陽に弱そうな肌ではあるが、張りのある健康的なものでもある。
これらを総合すると、佐伯さんはいわゆる、清楚系黒髪ロング美少女と呼ばれる存在なのだろう。
俺はどうして今まで佐伯さんとお近づきになれなかったのだろうと、昨日までの、いや今この瞬間までの自分のことをひどく恨んだ。
絵里奈という幼馴染のセフレがありながらも、俺はそんなことを考えてしまっていた。
そして……
不幸にもそのときは唐突にやってきてしまうのだった。
「ちょっと直樹~。いつまでかかってるのよ」
玄関から絵里奈がのそっとした動きで出てきたのだ。
しかもパンツとブラジャーの下着姿で……だ!!!!
「あ…………」
絵里奈のしまったといった心の声が漏れている。
それとほぼ同時に……
「け、け、け……ケダモノ!!!! ヤリチン!!! わ、わたし信じてたのに!!!」
佐伯さんが涙声になりながら卑猥な言葉を叫んで、そしてなりふり構わずに全力で走り去っていった……。
「なんか……ごめんね直樹。あはは、あはははは」
絵里奈がチロっと舌を出して謝ってくる。
絵里奈……お前分かってる?
それ、今一番見たくないやつ。
「うおおおおおおおおおおお。どうしてくれるんだよおおおおおおおっ」
俺は近所迷惑という言葉など知りませんといったように、なりふり構わずしばらくの間は恥ずかしさや怒り、後悔など色んな感情のせいで叫び続けることになった。
どうなる? 俺のスクールライフ!?
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