君と僕の一周年記念日に君がラブホテルで寝取らていた件について~ドロドロの日々~

ねんごろ

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第9話 よく晴れた気持ちのいい日

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 今日はよく晴れた気持ちのいい日だった。



 といっても、7月も終わりかけている終業式もそろそろという頃合い。真夏の太陽が照りつけるアスファルトは50度など遥かに通り越して目玉焼きができるほどの高温になっていた。



 信二は茜と香住の、二人同時に付き合う関係をしばらくの間、順調に続けてきていた。まだ二人にはこのことを一切話していない。



 それもそうだろう。ここ日本などでは、同時に複数人の女性と付き合うことなど倫理的にタブーとされている。



 いや、これは日本に限った話ではない。多くの国はその高度に複雑化された社会のなかで経済成長を第一の目標に掲げながら健全にそれを運営していくために法律を定め、一夫一妻制を採用してきている。



 その倫理的概念は要するに、人間により意図的に作られたものと言えるのではないか。



 恋愛的な常識も社会をうまく回していくための潤滑油的な存在なのではないだろうか。。。



 しかし、近年の離婚率は凄まじいものであるとニュースでは聞く。さらに信二たちのような若者の恋愛経験の少なさや少子高齢化なども合わせて問題視されている。



 これが一概に婚姻制度が原因とは言えないほどに社会は複雑で検証困難性を持ち合わせていることなど、信二も理解している。



 しかし、信二は思うのだ。



 明らかに現在の社会は機能不全に陥っている……



 何か大きなパラダイム・シフトが必要な時代に突入してきているのだ……



 そしてそのような時はしばしば、世の中は乱れていくことになる……



 …………



 …………



 信二はそのようなことを考えつつも、自身の二股交際を有意義なものにするべく、全力で今日というこの日を楽しもうと一生懸命に生きていたのだった。。。




「もうすぐ夏休みか……。高校2年生。羽を伸ばして楽しめるのは、受験のせいで最後になるかもしれないけど。せめて目一杯心のままに二人と楽しむことだけは、忘れないでおこう」



 信二は朝の登校中に、青空と白い雲が綺麗な真夏の空を見上げながら、そう呟いた。



 後ろからはぞろぞろと、同じ高校に向かう高校生たちの人影が出来始めており、ちらほらと会話の内容も聞き取れるようになってきた。



 今日も今日とて、高校生は青いなかで、心ゆくまで青春を謳歌しているようだ。



 そんななか……




「信二~おはっよう!!!」




 後ろから茜の声が聞こえたかと思うと、背中に大きな鈍い衝撃が走った。



 どうやら、茜に頭突きタックルをお見舞いされたようだった。



 朝からなんとも、刺激的な一発を食らった信二は後ろを振り返り……




「茜~仕返しだぁ。倍返しだ!!!」 




 信二はそう言って、頭突きをするのではなく、茜の膨らむ朝のおっぱ●を手のひらいっぱいで揉みしだいたのだった。




「やぁあああああああああああああ」




 公共の場で平気でそういうことをするバカップル。



 いや、バカップルを通り越して、変態カップルのほうがふさわしい。



 しかしながら、倫理観を度外視した付き合いを健全に行おうと心に決めた信二にかかれば、そんな世間体なんて何も気にならない。



 二人は今日も平常運転。



 いつのまにか、信二の茜へのNTRからくる嫉妬心や不信感はほとんど消え失せ、そこにあるのは、茜という存在への理解だった。



 理解しようと努める姿勢が存在していた。。。



 しかし、もちろん、肉体的な関係を持つことへの嫉妬心は残っており、そこは永遠の課題であると信二も感じていたが……



 今となっては些細なことだ。



 今はうまくこの信二だけの恋愛感を育んでいくだけだ。



 ただ、それだけだ。。。



「あれ、もしかして……。これは立ってる……?」

「バカ!!!!!!!!!!!!」




 茜の恥じらう声が辺りに響き渡った。。。




★★★★★★★★★★★★★★★

 



 昼休み。



 信二はとある女子高生に体育館の裏に呼び出されていた。



 学年は一つ下の、高校一年生。



 校舎は別館にあり、普段は全くもって交流がない学年ではあったが、どうやら信二のことをよく知っているといった様子だった。




「どうしたのかな。下駄箱にあった手紙、これ君のだよね」




 彼女の容姿はとても幼気でありながら、どこか悟った雰囲気の漂う不思議な美少女といった感じだった。



 サラサラと流れるように艷やかな色素の薄い長く垂れた茶髪を、風になびかせている。



 とても幻想的な姿だと、信二は思ってしまった。




「……ごめんだけど。僕には今付き合っている人がいるんだ。知っているひとは多いと思っていたんだけど。。。」




 信二はごく普通の断り方をした。



 しかしながら、告白されるのは久しぶりだと信二は思っていた。



 過去のものを振り返ると、今回で3回目。本当に懐かしいその緊張した雰囲気に信二は少しだけカッコいいキャラを作って、その場をしのごうとしていた。



 そんななか……



 眼の前にいる美少女は、思いもよらないことを口にしたのだ。




「それは関係のないことですよね、信二さん」

「はい?」

「私があなたのことを愛しているという気持ちに対して、そのような断り方は何も説明になっていません。私はあなたの気持ちを知りたくて告白をしたのです」

「…………」

「信二さんも本当は分かっているのでしょう?本当に大切なことは自分の好きという気持ち、それだけだって。自分の気持ちに正直になることだって」

「…………」




 するすると、その可憐で儚げな美少女から言葉が紡がれていく。



 まるで夢でも見ているかのような、非現実的な世界に迷い込んでしまったかのような錯覚を信二は覚える。




「私、なにもかも。あなたのことなら、全て知っているですから。。。」

「君は一体……」

「西園寺佐奈さいおんじさな。あなたのことを愛している一人の人間よ」

「………………」



 信二はこうして、一人の美少女に出会った。



 この世に溶けてしまいそうなほどに、か弱く見えながらも、その思想はかなり強く、我がしっかりとしている印象を受けた。



 この出会いが今後の信二にどのような影響を及ぼしていくのか、まだ誰にも分からない。



 それでも……




「ふふふっ。お返事はまた後日でよろしいですから。私のこと、考えておいてくださいね」




 信二は明らかに彼女に魅了されてしまったようだ。

 

 その魔性の美少女に……



 毒されてしまったことは確かなようだ。。。





 落ちて落ちて落ちて。。。




 どこまでも落ちて、落ち尽くして。




 そこから見える景色の先には何があるのか。




 それを知るものは、落ち尽くした者のみである。





「なんだ、あの子は。めちゃくちゃ可愛かったな……」




 

 体育館の裏。



 昼休みの終わりを告げるチャイムが遠くから聞こえてくる。



 西園寺佐奈……



 信二はこの日、彼女に出会ったのだった。



【続く】
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