君と僕の一周年記念日に君がラブホテルで寝取らていた件について~ドロドロの日々~

ねんごろ

文字の大きさ
上 下
8 / 18

第7.5話 とろけるキス【香住視点】

しおりを挟む
カラオケに連れ込まれるまえに、私は気付いていた。



 私の信二くんに対する気持ちがどういうものなのかについて。



 単なる親しい気持ちではない……



 どこか罪悪感のようなものを抱いてしまう……



 そんな感情。



 バイト先の喫茶店では無意識のうちに信二くんのことを目で追っていた。



 そのことで、私はときどき自己嫌悪に襲われていた。

 

 どうして大学生の私が、高校生の男の子のことを、こんなにも気になってしまうのかって……



 私は自分の男性経験の少なさからくる、自尊心の低さを実感した。年相応の恋愛経験のない自分自身に、ひどく劣等感を感じてしまっていた。



 だから、こうして私のなかで芽生えつつある感情に罪悪感が付きまとうのだと思う。



 自分にとって都合のいい子を好きになるなんて、最低なやつだねって……




★★★★★★★★★★★★★★



 

「今日はありがとね。とっても楽しくて……。初めての夜遊びだったけど、それが信二くんで本当によかった」



 気がつけば私は、信二くんにそう言っていた。



 だって、本当に楽しかったから。



 でも正直、最初のほうは怖かった。



 こんな真っ暗でキラキラ色んな光が点滅してる空間に、男の子と二人きりっていう状況は人生で初めてだったから。



 たぶん、お母さんとお父さんが、こんな状況に立ち会っていたら、わたし、速攻で引きずり出されてたと思う。



 でも、いまはそんな束縛要因なんてない。



 眼の前には私の……



 好きになったひとがいる。



 信二くんがいる。



 そうやって再認識したら、どういうわけか私の心はスッと軽くなった。



 たぶん、こうして夜遊びをして、真っ暗ななかで、男の子と二人っきりになって……



 いろいろな非日常と触れ合うことができたから、私は身軽になったんだと思う。



 一気に肩の荷が降りたというか……



 こうやって、生きていってもいいんだって思えたというか……



 とにもかくにも、何もかもが新鮮だった。



 カラオケに行く途中の、ネオンで煌めく駅裏の歓楽街。



 すれ違う人たちの楽しそうな表情。



 路上に座りこんで、船を漕いでいる、酔っぱらいたち……



 私がテレビのなかでしかみたことのない、夜の街が、目の前にはあった。



 ………………



 いま考えると、私は人を恋愛的に好きなることに億劫になっていたのだと思う。



 お父さんやお母さんに、そのことがバレたらどうしようとか。



 今すぐ連れてきなさい、とか。好きな人のご両親のお仕事は、とか。



 いろいろと聞きたくないこと、されたくないこと……



 想像しちゃうから……



 …………



 私は本当に本当に今まで束縛され続けてきたんだって……



 今この瞬間、信二くんと見つめ合って、好きの感情が溢れてくるのを感じて……



 本当の意味で、もう二度と束縛されたくないって、思えたんだ。




「香住さんが、ツンデレじゃなくなってる……」

「……こんな私、嫌いかな」




 そこからはもう、本当に理性が吹っ飛んでしまった。



 今までの私じゃない、私がいた。



 信二くんのこと、もっともっと知りたいって感情が溢れてきて……



 どんどん、私は信二くんに近づいていった。 



 信二くんに、どう思われてるかなんて、そんなことどうでもよかった。



 ただただ、好きって気持ちを伝えたかった。



 信二くんと、触れ合いたいって心から思った。





「私って、チョロいのかな」





 そう言って、私は人生で初めてのキスをした。



 唇が触れ合った瞬間、心臓の音しか、聞こえなかった。





★★★★★★★★★★★★★★★★★★




 気がついたときには、私は信二くんと触れ合うだけではなく、舌と舌を絡ませあっていた。



 ファーストキスから、数分の間に私はディープキスを体験してしまうという、なんとも性欲に遠慮のない女になっていた。



 でも、なにも後悔はなかった。



 だって、信二くんも私のことを求めてくれているってことがわかったから。



 いや……



 そんなこと、もうとっくの前に分かってた。



 バイト先の喫茶店で、私のほうにずっと視線を向けていることなんて、知ってた。



 私のこと、好きなんだろうなって、わかってた。



 でもね……



 その気持ちが、私に対する気持ちが、はっきりと私の体にぶつかって、快楽に変わる瞬間ってね……



 たぶん、人生で一番幸せなことなんだと思うの。。。




「はぁはぁ……んん」




 お互いを求めあって、時間なんて忘れて、馬鹿になって……



 こんなことで……



 こんなことだけで……



 人間って、とっても……



 幸せになれるんだね。。。




『ぷるるるるるるるるるるっ』




 室内に取り付けられた電話が鳴っている。



 

『ぷるるるるるるるるるるっ』




 でも、お互いに聞こえているはずなのに、動こうとしない。



 舌だけは、熱く情熱的に動いている。




『ぷるるるるるるるるるるっ』





 信二くんが私の腰や、背中に手を回し……



 私は、自分でも驚いているんだけど、信二くんの首の後ろに手を回し、後頭部をがっつりと掴みながら……




『ぷるるるるるるるるるるっ』




 二人で、二人の好きを……



 心ゆくまで確かめあった。。。




『ぷるるるるるるるるるるっ………』




 受話器はしばらくして鳴り止み……



 我に返った私たちは、急いで帰る準備をした。



 でも少しだけ規定時間をオーバーしていて、超過料金を支払うはめになったけど……




 私はとても満ち足りていた。



 

 夜の歓楽街のなか。




 外の空気は少し蒸し暑くて、喧騒がどこか心地よく聞こえて……




「これから、よろしくね。信二くん……」




 私はそう、はっきりとした声で、隣の彼に伝えたのだった。


【続く】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある
恋愛
男女の貞操観念などが逆転している世界の話。 高校生の『あおい』は友達の『りん』に片思いしているが、あおいにはある秘密があった…… 基本男女による恋愛ですが、ガールズラブも含まれます。 女性向けラブコメだと思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

処理中です...